脱出するまでがダンジョンなんだけど……
主人公の運命。それは、気軽に終わらないというところである‥‥‥
SIDEフレイ
‥‥‥ダンジョンへ挑戦し、おおよそ腹時計で三時間ほど経過したころ、フレイたちはダンジョン『ジャコーウヤ』の最下層と思われる場所に到達していた。
周囲を見渡しても次に続く階段もなく、壁に何か小さな宝石のようなものが埋め込まれているのみ。
その宝石と言うのは‥‥‥
【「鑑定機能」‥‥‥どうやら『ダンジョンコア』のようです】
(ダンジョンコア?)
ナビリンが自ら動いたことで、その宝石のようなものの正体が分かった。
―――――――――
『ダンジョンコア』
ダンジョンの命の源。月日が経つにつれて徐々に成長していき、成長するにつれてコアを守るボスモンスターと言う物が出現するようになる。
このダンジョン「ジャコーウヤ」はまだ若すぎるためにボスモンスターはおらず、守るべきか所なのに守ることができない無防備なことになっている。
――――――――――
このコアがあるからこそ、ダンジョンは成長し、どんどん大きくなるらしい。
そして、破壊されたり取り外されたりするとダンジョン全体に大きな雄叫びが響き渡り、数日のうちに崩壊し、消滅するそうである。
冒険者育成学園と言う場所で学んでいたサブローたちはこのダンジョンコアの情報についても学んでいたらしく、見ただけでここが最下層と判断できたらしい。
「ここが最下層のようだから……いったん地上へ戻るか」
辺りを見渡して、リーダーのサブローがそう声をかけた。
「もう戻るのですか?」
「ああ、元々個々のダンジョン調査がわたしたちの卒業試験であり、ここまでの記録を一旦まとめる必要がある。ただ、わざわざダンジョンの中で報告書を書きたいかい?」
「‥‥‥ないですね」
「だろ?」
モンスターが湧き、倒せると言ってもそんないちいち相手にするのは面倒である。
だからいったんダンジョンから出て、そこで改めて報告書を書いていくつもりなのだとか。
「簡単なメモは取っているやねん。細かい部分、出現モンスターの傾向などは把握済みやねん」
ジョンさんがそう言うけど……いつの間にメモを取っていたんだろうか。
そのいつの間にか、というような行動が出来るのがアサシンでもあるジョンさんの特技らしいけれども……すごいな。
とにもかくにも、ここまで来たら後は用済み。
また時間がかかるけど、道はわかっているのでさっさとダンジョンを出ようとした……その時であった。
ズゥン!!
「「「「「!?」」」」
突然、ダンジョン全体が振動した。
何か重いものが乗ったようであり、その揺れは一瞬バランスを崩しそうなものであった。
「おっとと‥‥なんだ?」
「今のは一体?」
「揺れたなぁ」
今の揺れを疑問に思ったフレイたち。
この年若いダンジョンに何か異変でも起きたのだろうか?
そう疑問に思い、フレイたちが階層を登ってみたところで‥‥‥‥ソレがその階層にいた。
大きな体に、真っ黒な鱗。
圧倒的に人間よりも大きく、寝ているのか目をつむっている。
「ど、ドラゴンだと…‥‥!?」
その姿を見て、サブローたちが驚愕の声を上げた。
その横で、フレイだけは声を上げなかったが‥‥何か違和感を感じた。
(……あれ?なんかどこかで見たことがあるような?)
なんとなく、こうデジャブというかデジャビュと言うか、いろいろな発音の仕方があるが、既視感と言った方が正しいような物を感じた。
いやまぁ、本当にどこかで見たことがあるドラゴンなんだよね……でもどこで‥‥
【あ】
そこでふと、ナビリンの声が響く。
(どうしたんだよナビリン)
【あれ、名づけの儀式にいたドラゴンですよ。ほら、ジャキガンとか言う名にされた‥‥‥】
(…‥あ!?)
その言葉に、俺はあることを思い出した、
名づけの儀式、その時にいたドラゴンの中で、ジャキガンという名を名付けられたドラゴンがいたことを。
その儀式に参加していたので、確かに今目の前にいるジャキガンというドラゴンを見たことがあったのだ。
あの儀式からまだそう時間は経っていないとはいえ‥‥‥こうも早く出くわすとは思わなかった。
「な、何故ドラゴンがここに‥‥」
「嘘やろ、あいつらって普段見かけないような奥地とかにいるはずやねん」
「何でこんな若いダンジョン内にいるのよ」
サブローたちが驚愕しながらそうつぶやいているが‥‥‥確かに、なぜこのダンジョンの中にこのドラゴンがいるのかは疑問である。
もしかすると、巣立ちして自身の巣を決めようとした時に、疲れたのでここに決めたのではないだろうか?
と言うか、なんでこうもダンジョンを早々に出ようとしたところで、いきなりこんなボスサイズの奴が出てくるのか。
初ダンジョン早々、いきなり最悪な目に遭っているような気がしたのであった…‥‥。
とにもかくにも、寝ているようなので通り過ぎるなら今がチャンス。
抜き足差し足忍び足、とそーっと横を通過していると、寝息が聞こえてくる。
しっかりとこのドラゴン……ジャキガンと言う名は俺とナビリンは知っているが、熟睡中のようなのでこのまま起こさなければそんなに大問題にはならないはずである。
炎龍帝に鍛えられ、将来的には倒しに行くという目標があるとはいえ‥‥‥まだこういうやつにかなうかと言われればわからない。
ただ、避けられる戦いは避けたいからなぁ…‥‥。
そうフレイが思いつつも、他の皆もそっと歩き、この場を何事もなかったかのように、ただ単に通過しようとした……その時であった。
がきっ
「「「「あ」」」」
「げっ!?」
何かにつまづき、サブローが倒れる。
ゴッキィィィィン……
その重装備の鎧が、大きな金属音を響かせた。
「‥‥‥グゴガァ?」
(((((げ―――――っ!?)))))
その音によって、ジャキガンの目が開かれて……フレイたちを見た。
「グゴゴ……ゴガヵァァァァァァァァァ!!」
「「「「「わぁぁぁぁあぁっ!?」」」」」」
カッと目を開き、雄たけびを上げるドラゴン、ジャキガンによってフレイたちは思わず悲鳴を上げる。
「に、逃げろぉぉぉぉぉ!!」
サブローの掛け声とともに、フレイたちは駆けだす。
「ゴガアァァァァァァァ!!」
寝ているところを邪魔されたのがいらついたのか、雄たけびを上げながらジャキガンは追ってきた。
今ここに、ダンジョンを命がけで脱出しなければならない最悪の状況が出来上がってしまったのであった‥‥‥
「と言うかあのドラゴン、どうやって入ってきたぁぁぁぁ!?」
【まだ幼い龍でもありますからね、体が柔らかいのでしょう】
「そんな理由なのかよ!?」
ある日♪ダンジョンの中♪熊さん‥‥じゃなくてドラゴンに出くわしてしまったフレイたち。
フレイ自身、まだまだ自身がどれだけのか測りかねているが、とりあえず今は逃げるしかない。
それを追いかけてくるジャキガンとの、命がけのダンジョン逃走劇が始まるのであった‥‥
次回に続く!!
‥‥‥リメイク前は戦闘していたけど、今回は逃亡。自身の実力が把握できないうちは、明らかに強そうな相手との戦闘は避けたほうが良いからね。
ウルフ?あれはまぁ、ドラゴンよりも弱そうだったからね。基準がドラゴンになっているけど‥‥‥後で修正できるかな?




