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月の涙  作者: 燐麗
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プロローグ

 夜が更けた街をディアンは歩いていた。

 街はひっそりと静まりかえり誰一人歩いていない。

 ディアンはあるひとつの明かりのついていない家の前で立ち止まった。

(ここの家か。)

 そしてドアの鍵を壊し、息を殺して中に入った。

 部屋の中は、薄暗くしんと静まりかえっているが確かに人がいる。

 かすかに呼吸をしている音が静かな部屋では聞こえる。

 奥のほうにベッドがあり、人はそこで寝ているらしい。

 一通り部屋を見回した後、ディアンはベッドのあるほうに向かった。

 みると寝ているのは中年の男だった。

 ディアンは男が寝ていることを確認するとポケットから銃を取り出し、ゆっくりと男の心臓のほうに銃口をあてる。

 そしてディアンは一気に引き金を引いた。

 と、同時に男の体もわずかに動く。

 銃声が静かな部屋に大きく響きわたった。

 男は血を流していた。

 ディアンも返り血を浴びて服が赤黒く染まっている。

 脈を確認して死んでいることを確かめてから自分についた血を何事もないかのようにふき取った。

 まだ服にはたくさん血がついていたが・・・。

「任務終了」

 そう呟いて部屋を後にした。

 そして暗い夜の街を『自分の帰る場所』にむかって歩いていた。

 空をみると綺麗な満月がはっきりと見える。

 冷たい風が心地いい。風がディアンの髪を優しくなでていく。

 何も考えずただ歩いているだけ。

 胸元のネックレスの宝石がやけに輝いていた。

 ようやく『自分の帰る場所』が見えてきた。

 そして扉の前に立ち、静かに開けた。

 もう仲間たちは寝静まっているようだ。

 薄暗い部屋に月の光が差し込んでいて少しは中が明るい。

 ディアンは真っ直ぐ自分の部屋に戻った。

 そのままベッドに入り、深い眠りに落ちた。

 明日には今日のことが殺人事件として騒がれるだろう。

 でも絶対に犯人は見つかることはない。

 ディアン・ムーンという青年は最強の殺し屋なのだから。




 そのころ、城では盛大なパーティが行われていた。

 もう深夜も過ぎているのにそのパーティは続いていた。

 城の中ではたくさんの富豪達が集まっている。

 ダンスを踊ったり、酒を飲んだりと楽しそう。

 しかし、パーティーの主役はつまらなさそうな表情で玉座に座っていた。

 幼さが残っているが美しい顔立ち。

(今日は私の誕生日なんだから、もう終わらせたいのに)

 ノエルは飽き飽きしていた。

 パーティーを開いてもなんの利益もない。

 ただのつまらない行事。そんな風に思っていた。

 早く終わらないかな・・・

 ただ時が過ぎるのを待っていた。もう何時間も終わるのを待っている。

 もしかしたらパーティーなんて永遠に終わらないかもという考えがよぎるほどだった。

 一日がこんなにも長く感じたのは初めてだった。

 その王女がパーティーが終わるまで何もしなかったのはいうまでもない。

  



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