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夢落ち

部屋に戻る姉妹。

キングサイズはあるでろう、豪華なクイーンベッドにダイブし布団の中へと潜り込む。

少しの沈黙が流れ、妹がそっと姉に問いかけた。


「明日もまた、退屈な日が来るんだね」


「・・・だね。でも、この世界はその繰り返しだからさ」


「・・・・・・ほんとつまらない毎日だわ」


「同意!でも、ユメコが居るから少しはマシかな・・・あたしは!」


「ちょ!それって何かあんま素直に喜べないんですけど・・・?」


「ん?じゃあユメコはあたしと居ても不満だらけって事?お姉ちゃん超傷ついたわ・・・・・・」


「もー!違うってば!あたしだって、ユメカが居るから少しはマシなのよ!全く・・・・・・」


ふてくされた様に背を向けたユメコに、ユメカはクスクスっと少しばかりの笑みを浮かべた。






20畳近くある広い部屋が静まり返る。

時間の経過を告げる、時計の秒針の音が聞こえるだけだ。

外からカーテン越しに月光がうっすらと部屋を照らしている。

大きなベッドで眠る姉妹は、いつの間にかお互いを向き合う格好で手を握り合いながら静かに眠っていた。


姉のユメカは夢を見ていた。

ぼんやりと立つ自分の目の前には、大きな黒い門が1つ。

けっして豪華な作りではなく、むしろ少し古びたような門が自分を呼んでいるかの様に立っている。

家も壁も何も無い空間に門だけが1つ。


無意識だろうか。自分でもはっきりとしない、ぼんやりとした状態で、ゆっくりとユメカは門を開けていた。


時同じく、妹のユメコも夢を見ていた。

ぼんやりと立つ自分の目の前には、大きな白い門が1つ。

非常に豪華な作りで、まるで彫刻のような門が自分を呼んでいるかの様に立っている。

家も壁も何も無い空間に門だけが1つ。


無意識だろうか。自分でもはっきりとしない、ぼんやりとした状態で、ゆっくりとユメコは門を開けていた。



そして、2人が同時に扉を開けた――。


『落下』


姉妹は同時に気付く。

落ちている。しかも深いと言う言葉では済まされない様な穴。底なしが更に無限に続くかの様に。

そして、更に驚く。

今まで自分達が生きて1度も無かった体験。

『2人が同じ夢を見ている』

猛烈なスピードで落下する中で、2人はお互いの目を直視していた。


『何で!?』


2人はそれ以上思考を回す事が出来ない。


疑問しか浮かばない。


今まで1度として同じ夢を見る事がなかった姉妹。

双子なら同じ夢を見たって全く不思議ではない。いや、双子じゃなくても1度もお互いが夢に出て来なかった事が不思議だった。

そして何故、今になって同じ夢を見ているのか?

しかも、穴に落下している夢を。


姉妹の疑問を置き去りに、落下スピードは更に早くなって行く。

姉妹の自慢の長髪が全開に上の方向に流れる。まさにスーパーサ●ヤ人の如く。

そして何故か着ているドレス。

姉が黒いドレス。

妹が白いドレス。

お互いに正反対の色のドレスを着ていたが、パンチラどころでは無い状態にドレスのスカートはめくり上がっている。


夢とは思えない風圧。

底も分からない穴への落下の不安と恐怖。


全ての感覚が『現実』の様に伝わって来る。


そして、落下スピードが速まるにつれて周りの景色も変わっていた。

一言で言うなら、不思議の国のアリスだろうか。


360度の周りが、一面に本棚へと変わる。

洋書の本がぎっしりと詰まった本棚は、まさにファンタジーの世界へ出て来る様な光景だ。

そして、奇妙な道具も下から上って来る。


羽の生えた万年質。

金と銀の砂を載せた両天秤。

ゲラゲラと笑う口の生えた黒帽子。

超高速回転をしながら、魔法文字の様なものを排出する地球儀。

本来の向きとは違う方向に時を進める懐中時計。


そんな奇妙な道具達を見ながら、いつの間にか姉妹の表情は笑顔に変わっていた。


『もっといろんな物を見てみたい!』


おそらくそんな気持ちの表情なのだろう。


だが、皮肉にも姉妹の好奇心は一瞬にして打ち消される。

終わりの無い底なしの穴。

そんな底から、眩しく輝く光。


あー・・・・・・。

2人は感じる。


夢の終わりか?


地面に衝突か?


どちらにしても終わるんだなと。


光の輝きがどんどん大きくなる。


2人は手を伸ばし握った。


人生で初めて見た2人の『夢』が終わる。


そして、地面がついに見えた。


2人の握る手は強くなり、目を閉じた。






あれ?


2人は妙な感覚に襲われていた。


目の前に地面が現れて、衝突と終わりを覚悟していたのに何だ?

2人はゆっくりと目を開いた。


『なんじゃこりゃあ!?』


血を見て叫ぶ懐かしい刑事の命台詞を大声を上げて叫び声。

しかしそれも納得。

2人の格好は何とも言えぬ状態で、空中で静止していたのだ。


「ちょ、な、何なのよ!?この体勢は!?」


叫んだのはユメコだ。

ドレスを大胆にめくり、自らお尻を突き出すような格好で止まっている。

他人から見たら間違いなく誘いポーズのビッチだ。


「あはははは!ユメコ!ナイスポーズ!」


大笑いする姉のユメカ。

しかし彼女もまた、自らの豊満な巨乳を晒し両腕で挟み上げている。

だっ●ーのポーズだろうか。

ファンにサービスするアイドルの様なポーズをしながら大笑いしている。


頬を赤くしながら、屈辱と辱めを受けるユメコ。

涙を流しながら大笑いをするユメカ。


「もー!何なのよ!この夢は!?」


ユメコが身動きの取れない状態で大声で叫び上げる。すると、姉妹の背後からコツンと靴の音の様な響きが聞こえてきた――。


「――ようこそ。お待ちしておりました・・・我が主様」


若くて色気のある男の声。姉妹は、ギョロりと声の発する人物へ瞳を動かした。

そこには、頭を深く下げる銀髪の持ち主。黒と白で分かれたスーツ姿の男が立っていた。

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