双子の姉妹
「・・・・・・ユメカ起きてる・・・?」
「・・・・・・寝てる・・・ゴソゴソ」
「いや~返事してるなら起きてるよね?っで、そんなお姉ちゃんに可愛い妹からのお願いがあるのだけども・・・聞いてくれるよね?」
「却下!おやすみなさーい・・・・・・ゴソゴソ」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!こう言う時は、どうしたの?とか何?とか聞くのが王道の法則でしょ!?少年ジャ●プの主人公がいきなり敵に不意打ちされて殺されて、ダークヒーロみたいな話になる邪道な返事してどうするのよ!?」
「・・・あたしはマ●ジン派だからいいわ・・・・・・ゴソゴソ」
「ちょ、なんなのそれ!?って言うか、少年漫画の話に流れてるけど、本題は全然違うからね!?」
「・・・もう何よ?こっちは眠いんだからさ!?」
「えと・・・じゃあ・・・・・・トイレ付いて来てくれない?」
「却下!おやすみなさーい・・・・・・ゴソゴソ」
バサーっと布団が大きく空中へ舞い上がった。
「誰のせいで1人でトイレ行けん思ってんじゃ!?えぇから早く付いて来んかい!それともベッドをあたしの聖水でビショビショの洪水だらけにしたろうか!?」
「もーっ!分かったってば・・・・・・!」
・・・・・・さて、深夜の就寝前に騒がしく少々下品な単語を交えて会話する2人の姉妹。
部屋の広さは20畳弱。外見はまさに『お姫様部屋』と言う言葉が相応しいだろうか。
ベルサイユ宮殿に出てきそうな、見事な装飾を飾ったクイーンベッド。
壁紙は真っ白な輝きを放ちつつ、丁寧に描かれた薔薇の模様がその豪華さを物語っている。
床一面に広がる赤いペルシャ絨毯は、よくTVで豪邸を取材し出てくるそれを遥かに凌駕する作りだ。
白鳥とバレリーナをイメージして作られたベッド脇の間接照明がぼんやりと黄色とオレンジ色を合わせた様な光を照らす。
「ってかさ~もぉ18禁解禁した女子が、夜中に1人でトイレ行けないって言うのはどうかと思うけど!?」
「う、うるさいわね!って、一体誰のせいだと思ってるのよ!?面白いDVDがあるって言うから見てみたら、超グロテスクなホラー映画を見せつけられたのよ!?あたしが怖い&グロイの苦手なの知っておきながら見せつけた意地悪な姉のせいよ!」
「はいはいはい・・・それは悪うございました・・・・・・」
「まったく・・・・・・」
長い廊下を歩きながらトイレから部屋に戻る姉妹。お互いの片方の手はしっかりと握られたまま・・・。
姉のユメカ。
18歳。女子学院に通う大学生。
めんどくさがり屋・気まぐれ・マイペース・好きなものにはとことん集中し極めるタイプ・ホラーやグロイ系好き。
背中まで伸びた長髪に、グラビア級の巨乳の持ち主。色素が生まれつき薄い為、茶髪にブラウンの瞳をしている。
妹のユメコ。
18歳。姉と同じ女子学院に通う大学生。
几帳面・強気な性格・エロ・寂しがり屋・たまに二重人格ぽい所があり言葉遣いも変わる・ホラーやグロイ物は苦手。
姉と同じく背中まで伸びた長髪をしているが胸は無い。その代わり立派な巨尻の持ち主である。姉と違って、髪と瞳は綺麗な黒色だ。
さて・・・・・。
双子の姉妹と言っても、顔や身長などは除いて全てがそっくりと言うわけではない2人。
そして、ここまででも分かるように2人は超お嬢様だ。
普段の生活もまさに『姫プレイ』。両親や家のお手伝いなども含めて、姉妹の願望はほぼ叶えられる。
しかし、姉妹は完全に『自分達の世界』は見せない。
学校やプライベートは常に2人で行動。他人を一切引き付けないので、姉妹に友達と言える存在はこれまでに1人もおらず、年頃の女子達がよくやる様な女子会や女子旅行などは皆無。
恋人などと言う存在はそれ以上に無い。
もちろん、姉妹の美貌に惚れて近寄る男性は大勢居たが、寄って来る蚊を叩き潰す様に姉妹は男達を一掃して来た。
告白やラブレターを渡して来ようものなら、目の前で破り捨てネット上で『キモい』と晒し上げた事もあるし、直接顔面パンチで撃退した事だってある。
姉妹の日常は単純に同じことの繰り返しで回っていた。
平日は、起床→学校→帰宅→ご飯や風呂→ゲームやTV→就寝
休日は、起床→買い物(両親に全ておねだり)→帰宅→ご飯や風呂→ゲームやTV→就寝
姉妹にとっての現実はこの繰り返しだった。
何の不自由も無く、何の苦労も知らずに育って来たボンボン姉妹のお嬢様。
当然、他人から見たら羨ましくも憎たらしい限りだ。
世の中は生まれながらにして不平等。その中でも姉妹は確実と言っていいほど『勝ち組』の存在だろう。
何の不自由もないクソワガママなお嬢様姉妹がよ・・・・・。
だが、実際はそうでもないのだ。
世の中は生まれながらにして不平等は現実であり確かな事実だ。
しかし、人間も含めた『生物』には誰しも『不平不満』は持っているのだ。外見は良くても中身は全っくダメと言うオチがある様に、この姉妹もまた不平不満は持っているのだ。
それも『ただの普通の不満』では収まらないもの。
彼女達はこの・・・『現実世界』を否定しているのだから。