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(元)兄の憂い

(元)兄視点


 呼び出された集合場所にて、自らを睨み付けている男へ芦原千明は苦笑する。手を挙げて「お待たせ」と、むっつり男へ笑いかけてみた。


「…待ってないから」


 無愛想という訳ではないが、少々顔に出にくいだけの可愛い弟だ。ぶっきらぼうな物言いは口下手なだけだし、…男として嫉妬しているからもあると知っている。今の言葉も、続きに「大丈夫」と隠れているのだ。


「そうか?じゃあ、行こうか」


 さらっと弟の言葉を流して、話を切り替えると戸惑ったような気配が伝わる。

 どうして皆、弟の事を無関心そうだとかクールとか言うんだろうと不思議に思う。こんなにも解りやすい奴いないだろうに。


「怒って…いないのか?」

「何に怒るんだよ」

「俺が…」


 話しにくいのか、やや俯いてポツリポツリと単語を拾って弟の言いたいことを纏める。


「つまりは志信と一緒に居る事に嫉妬して、用も無いのに呼び付けたって感じ?」

「…うん」

「何回も言うけど、本当に俺と志信はそういう関係ではないからな?」


 言い聞かせるように弟の頭をがしがし掻き混ぜる。何時もと同じ流れになっているな、と何処か客観的に見ている自分に千明は苦笑する。

 自分がいくら言い聞かせても弟は納得しない。まあ、会っているのは事実だから恋する男としては許しがたい事態であろう。案の定、律は真っ直ぐに兄を見つめてはっきり発言する。


「でも、俺にはそう見えない」

「…そか?」


 千明は真っ直ぐな弟の気持ちを垣間見て、同情を寄せた。弟は昔から一途に志信を想っている。ゲームではヒロインを想っていた筈の男が、「今」の志信に惚れている現実から妹は目を逸らしている。


「(報われない弟は可哀想だが、…俺は妹も可愛いんでね)」


 弟も可愛いし大事だが…前世で妹は自分より先に死んだ。だからこそ、再会出来た今は──妹が大事だった。

 今と過去の板挟みになっているのは千明も同様なのである。


「(…お互い大変だな、志信)」


 姫野湖太朗に呼び出された元妹を思って、千明は空を仰いだ。



この話に出てくる男性は意図的に女性的な響きを持つ名前にしています。


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