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恐るべし!フラグ回収男

簡易紹介。

姫野湖太朗→ギャルゲー主人公。

王司志信→上記人物の幼なじみ、攻略不可。本編主人公。



 桜の花咲く暖かな春の、ある晴れた日。新入生を迎える前に、進級が行われた。今まで過ごしてきたクラスメートとの別れと、新たに出会う事になるクラスメートが入り乱れ、──クラス替えは無事終了する。退屈な始業式が終わると、初めてのホームルームが始まった。


「…」


 こくり、こくりと上下する頭と心地良さそうな呼吸のリズム。これからの希望に満ちている若者の中に一人、夢の世界に浸っている者が居る。担任の睨みも何のその、強者だ。そんな彼こそが姫野(ひめの)湖太朗(こたろう)、ギャルゲー「君の在処」の主人公である。幸せそうに眠る彼に、担任の水窪(みさくぼ)祥乃(よしの)は冷ややかな笑みを浮かべて近づいてくる。二十六歳という男盛りに加えて、セミフレームのブランド眼鏡の下から覗く切れ長の瞳、スーツ、細マッチョの長身、顔も整っている等…勝ち組男要素が満載の彼は、姫野湖太朗の肩にそっと手を乗せる。


「…ん?」

「おはよう、姫野」

「…おはようございます、水窪先生」


 肩への刺激で目を覚ましたらしい生徒へ、担任は宣告する。嫌な予感を覚っているのであろう、姫野は目を泳がせている。…自業自得である。


「ホームルーム中にたっぷり休めたようだからな、君には明日の入学式受付業務を手伝って貰おうか」

「…えっ!」


 思わず出したであろう声。それが響き渡る前に彼は担任の有無を言わせない笑顔を見て、凍り付いた。そして、引きつった笑顔で何度も首肯する。


「はい、喜んで!」

「助かる。ありがとう」



***



「そんな訳で、明日駆り出される羽目になりましたー」

「へえ。水窪先生、御愁傷様」

「えー。まあ、寝てしまった俺が悪いんだけどさ」


 ヒメコ(昔からの呼び方なんです、湖太朗の事ね)と一緒に帰り道を歩む際、今日の顛末を聞いた。水窪先生に同情するしかない。自業自得でしかない彼のこの行動は…実は後輩ヒロインへのフラグ立てでしかなかった。ここも選択肢があり「真面目に話を聞く」、「男なら堂々と寝る!」の二者択一の場面である。この選択肢は後者を選ばなければ、後輩ヒロイン等のスチルを一枚取り逃してしまう。おまけに好感度上昇選択肢も派生する為、ベストエンドを目指すユーザーにとっては外せない選択肢なのだ。しかし、ゲームと現実は違う。それをヒメコは身を以て知らしめる。


「隣の席の村石さんって女の子に寝てる間の事を教えて貰えなかったらヤバかったー!」

「…はいはい、自業自得」


 唸り上げている幼なじみにため息を吐くふりをして、思考をめぐらす。選ばなかった選択肢で起こるイベントまで起こしているなんて、…強者過ぎる。ヒロインの一人である「村石香織」さんの初対面イベントは、後輩ヒロイン等のスチル初対面イベントと二者択一なのですよ。ただ、村石さんのイベントはスチルも無いし差程重要性は高くない。…と思われていたのだが。


「ありがとう村石さーん!」

「はいはい」

「…それにしても、何だろうこの指輪」

「!」


 完璧なフラグ回収力!そう、村石さんと別れた後に拾う「おもちゃの指輪」が、ルート入りには必要不可欠なんですよ。「ノブ、これ誰の何だろうな」と、指輪を夕日にかざしているヒメコにどう声をかけるべきか。私は、何を言っていたんだろう?前世の兄に付き合った為か複雑なルートフラグやパラメーター調整、好感度選択肢は解るのだが…流石に台詞迄は覚えていない。一度息を吐いてから、慎重に答えを選ぶ。


「随分持主の大切な想いが込められているみたいだよ、その指輪」

「へえ、…流石「分析」の加護だな!」

「持主は解らないから、あんまり役には立てないよ。よくあるRPGのステータス画面みたいなもんだし」

「いやいや、凄い助かったって!…じゃあ、持主を捜してあげないとな」


 主人公って大概お人好しだよなあと、思いつつ「ガンバ」と声をかける。お節介を焼いて積極的に関わっていかないと、道は拓けないからね。…険しい道だろうが。村石さんのルートなんて、本当に主人公の方がお邪魔虫って位ヒーローとお似合いだし。

 あと、ヒメコの説明口調通り、私の加護は「分析」である。加護とは今や二人に一人は持っている特異能力を意味している。加護って単語は「神様からのギフト」って意味で、使われてるね。私の「分析」は相手の能力パラメーターが解る代物で、体力や頭脳等が数値化されるのだ。今も「分析」を展開した結果、高価値は低い反面、思い出価値は高いと出た訳ですよ。犯罪に利用出来そうだと思ってるんだけど、特に深い意味の無い不思議ファンタジー要素の為、世界観は普通の現代日本でしかない。犯罪聞かないんですよね、何故か。…本当に、なんでだろう。

 そうやって思考をめぐらせていて、ヒメコの話を適当に聞き流していたら、いつの間にか明日の入学式受付と指輪の持主捜しを手伝う事になってた。人の話は以後、ちゃんと聞こうと反省しました…。




めざせ!ハーレム男。

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