表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/25

8話

指摘があったので早速修正しました。魔法説明は後書きに。

少し戦闘入ります。戦闘中は三人称になりますが、気にしないでください。

途中までノリノリだったんですけど、終盤はやっつけ感が……

感想や要望、指摘など、どしどし送ってください!

さて、状況は非常に芳しくないな…まさかこの俺がこんなトラップに引っ掛かるなぞ…


「虚仮にしやがて…絶対ぇ愉快なオブジェにしてやる…」


「ブツブツ言ってないでどうするのよ!?このままじゃあ高宮が…」


先程から無駄だとわかりながらも、出口に魔法やら拳やらを叩き込んでいる村園女史が、慌てた様子で怒鳴ってくる。

ふむ、やはり闇の上級魔法相手じゃあ破るのは厳しいようだな。…しゃあねぇな。こんな任務で使いたくはなかったが、背に腹は代えられないからな…その前に、と。


「村園女史。俺にいい案があるんだが。」


俺は村園女史に自信満々に提案する。


「いい案!?」


予想通り食いついてくる


「あぁ、その案はな…」


「もったいぶらなくていいから早く言いなさい!!」


激昂しながらも、俺の案をしっかり聞くために無防備に近付いて来る村園女史。

…どいつもこいつも警戒心薄いねぇ。この国の連中はみんなそうなのかね?まぁ、いいや。

胸中で呆れながら次の瞬間。俺は村園女史の首筋に手刀を叩き込み、意識を刈り取る。


「俺が魔法を使う」


意識を失い倒れ込む彼女を支えながら、聞こえてはいないだろうが、俺の案を囁く。

正直、こんな錯乱状態の彼女を連れて行っても大した戦力にもならない、むしろ足手纏いになるだろうと判断した結果の措置だ。

俺は彼女を壁際に適当に放り投げておく。別に俺フェミニストでもねぇし。まぁ、それはいいとして、さっさとやろうかね。

ストーカーの野郎に教えてやるよ…誰に喧嘩を売ったのかをな…

俺は薄い笑みを浮かべながら、まずは己に掛けていたリミッターを解除した。







「ごちそうさまでした」


食堂にて、私は「ルミナスレディースセット」を食べ終え、両手を合わせて礼をする。舞は咲夜さんと夕食で、いつも一緒に食事をしている村園先生がいないので、久しぶりの一人での食事だ。舞に食事を誘われたが、流石に姉妹水入らずの場を邪魔したくはなかったので、遠慮させてもらった。

水を一口飲み、一息つく。何となく周りを見回してみると、皆が皆というわけでもないが、大半が友人やら恋人やらと食事や語らいを楽しんでいる。

羨ましいですね…私も友人と食事を楽しんでみたいです。

そこまで考えた所で、ふとある人物が脳裏に浮かんでくる。白髪で人を寄せ付けない、それでいて人を惹きつける雰囲気を持つ人。舞以外で私を「高宮龍之介の孫」ではなく「ただの優奈」として接してくれた人。

そうですね、せっかくなら煉と一緒に食べてみたいですね。彼は見た目こそ少々怖いですが、実際は優しく、いい人物ですし。あの気難しい舞も認めていましたからね。どうせなら舞と煉と私の三人で食べるのも楽しそうですね。きっと楽しい食事になると思います。そんなことを考えながら、無意識の内に彼の姿を探す。まだ彼を警戒していた頃に、彼がこの食堂を利用しているのは知っているので、今日もまた来ているだろうと思っていた。しかし、いくら探せども目当ての白髪は見当たらない。世界屈指の名門であるこの学院には、海外からの留学生も多く、様々な髪の色の人物がいる。しかし白髪は煉夜だけだ。故に探し出すのは簡単だとおもっていたが…

いませんね…もう帰ってしまったのでしょうか?

まさか、ストーカーに…!?


嫌な予感がし、視線を彷徨わせていると見覚えのある浅黒い肌をした金髪の男を見かける。いつも煉と一緒にいる男子だ。私は席を立ち、彼のことを聞くべく浅黒金髪さんへ近付く。


「すいません」


「ん、うぉわ!高宮ちゃん!なになに、俺に何かよう?」


「れ…白神は?」


彼のテンションの高さに若干引きながらも、煉のことを聞く。

人前で彼をあだ名で呼ぶのは何故だか妙な気恥ずかしさがあるので、前のように呼ぶことに。


「煉夜?煉夜ならなんか用事があるっつってどっか行ったけど。」


「用事、ですか?」


まさかストーカー関係…!?

嫌な予感が益々積もる


「あぁ。俺の読みだと、あいつは手紙の子に会いにいったんじゃないかと睨んでいる。クッソ〜あのリア充がぁ!!」


「…手紙の子とは?」


「今日煉夜の下駄箱ん中にラブレターと思わしき手紙が入ってたんだ。本人は否定してたけど、あいつそれ見て珍しく嬉しそうに笑ってたからな。ありゃ絶対ラブレターだ!」


「…そうですか」


まだ浅黒金髪さんが何か喚いているが、私はそれを無視して他のことを考えていた。

せっかく人が心配しているのに、当の本人はラブレターを貰って喜んでいるのですか、そうですか…!

彼がラブレターを貰い、その差出人の女の子に会いに行ったと聞いて、何故か胸の中がモヤモヤとし、同時にイライラする。そこでハッとする。

どうしたんでしょうか、私は…本来なら彼に危害が無いことを喜ぶべきなんでしょうが、この不快な感じはなんなんでしょう?突然自分の内に湧き起こった感情。それに私は戸惑う。


「まぁ、それはいいとして、煉夜に用事があるなら俺から言っておくけど?」


「あ、用事というまでのことでもありませんので…」


戸惑っていた所に突然尋ねられたので、表面上は冷静に、内心は慌てて答える。


「そうなんだ。…げっ!もうこんな時間かよ!?それじゃあ俺は見たいテレビがあるからこれで!」


そう言うと浅黒金髪さんは慌てて食堂から出ていった。


…私も戻るとしましょう。


私は自分のテーブルまで戻り水を一口飲み、食堂を後にした。



外はすっかり暗くなっており、外灯の光もどこか心許ない感じがする。

食堂から女子寮までには少しばかり数分程度だが距離がある。

前までは村園先生と一緒に帰っていたから特に気にしなかったが、この暗闇の道は少々不気味に思う。


…少し急ぎましょう


少しだけ歩く速度を上げる。そこであることに気付く。


人がいない?


自分以外周りに人の気配がないのだ。普段はもっと食堂帰りの女子生徒がいるはずなのに。まるで人払いの魔法を使ったかのような…


「!」


そこまで考え、自分の思い過ごしを願いながら更に速度を上げる。

嫌な予感が胸をよぎる


コツッ


不意に足音が聞こえてくる。

背筋に悪寒が走る。恐る恐る振り返ると、そこには仮面を被った全身黒ずくめの男が立っていた。


「貴方は?」


「貴様が知ることなぞ何もない…」


恐怖心を胸にしまい込み、毅然とした態度で尋ねるが、相手は取り合わずこたらに近づいてくる。

私は腕を突き出し、魔力を込め威嚇する。


「それ以上近付いたら魔法を放ちます…!」


「抵抗せぬ方が身のためだ…」


しかし男は構わずこちらに近づき、手を振り上げる。そして、その手に魔力が収束していく。


やるしか、ないのですか…


優奈は覚悟を決め、両者呪文を唱える。


『罪深き者よ、己が業に呑み込まれよ…』


『翔よ雷、敵を貫け…』


そして魔法が完成する


『プリズム・ジャッジ』


『ライトニング・スピアー』


男が手を鋭く振り下ろすと、槍の形をした雷が唸りを上げながら優奈に向かって直進する。対する優奈の目の前には巨大な光の鏡が出現する。雷の槍が鏡に直撃した瞬間、雷の槍は威力を増して進行方向を反転する。


「ぬぅ…!」


自分が放った筈の雷の槍が、己を貫かんと向かってくるのを見て男は呻きながら横に避ける。

雷の槍は男が先程までいた場所に突き刺さると、バチバチィ!!と音を立て、辺りに電気を撒き散らしながらながら爆発する。男はその爆発に巻き込まれないように距離を取るが、不意に足が地面に沈む。


「何!?」


男は地面を見てみると、土を踏みしめていた筈が、今は水に足を捕られていた。


「『ウォーター・フール』貴方が避ける方向は予想がついていたので、仕掛けておきました。私をあまり舐めないでください」


初めての危険が伴った実践の為か、態度は毅然としているが、声と体は恐怖により震えている。

男はそんな状態の彼女が、自分の行動を先読みし、罠を仕掛けていたことに仮面の内で驚嘆していた。だが、それを表には出さない。


「…足を封じた程度で俺に勝ったと思うなよ」


「思っていません。だから追い討ちを掛けさせてもらいます」


男はなんとか水から出ようともがくが、ズルズルと足が更に沈んでいく。その間に優奈は呪文を唱える。


『水よ…その姿を変えよ……』


呪文の前口上。それは属性を変化させる為の言霊。


「派生魔法か…!」


『極寒の墓にて己が無力を知れ…フリーズ・グレイブ』


「ぐっ…!!」


瞬間、男の周りの空気中の水分が凍り、男は生み出された氷山の中に取り込まれる。

念の為氷山に近づき、様子を見てみる。男はピクリとも動かない。


「ハァ、ハァ、やり、ました…?」


確認し終えると、極度の緊張から解かれ、思い出したかのように冷や汗が吹き出て、荒い息を吐く。そして、同時に安堵する。


なんとかなりましたか…とりあえず誰かに連絡を…そういえば携帯は使えるのでしょうか?


などと考えながら携帯を取り出し、いざという時の為に寮に向かって歩き出す。


「甘いな…」


「え…?」


突然背後から聞こえてくる声。その声が聞こえると同時に思考がフリーズする。

恐る恐る振り返ってみると、氷の中の男は笑っていた。仮面を付けて表情がわからない筈なのに、何故かそう感じた。次の瞬間、男の体からバチバチと音がして、電気エネルギーが解放される。

放たれた電気エネルギーにより氷山を容易く溶け、蒸発する。


「嘘……」


「一瞬意識が飛んだが、残念だったな。貴様が俺を封じ込んだ後、すぐに攻撃魔法でも放っていれば俺が負けていただろう…」


呆然とする優奈に対し、男は悠然とした足取りで近付いてくる。

優奈は我に返ると慌てて男と距離を取り、再び手を突き出し魔力を込める。

その様を見て男はゆっくりと手を突き出しながら、仮面の下に笑みを浮かべる。


「どうやら俺はお前を侮っていたようだ。なるべく穏便に済ませようと思っていたが仕方ない…少し本気でいかせてもらうとしよう」瞬間、男から強烈な殺気と威圧感が放たれる。

突如浴びせられた明確な殺意。それは今まで何不自由なく暮らしてきた少女に、かつてないほどの恐怖を与えるには十分だった。

足が竦む、背筋が粟立つ、呼吸が上手くできない。


「多少傷ついても文句は言うなよ…」


顔から血の気が引き、恐怖に体を震わす少女に向かって男は躊躇いなく魔法を放つ。

それを防衛本能が働いたのか、優奈も瞬時に魔法を展開する。


『罪深き者よ、己が業に呑み込まれよ…』


『翔よ雷、敵を貫け…』

放たれるは雷の槍。


迎えるは光の鏡


プリズム・ジャッジとライトニング・スピアー。先程と同じ魔法同士がぶつかる。しかし先程とは違い、雷の槍が光の鏡に直撃した瞬間、光の槍はいとも簡単に貫かれる。

しかし雷の槍はプリズム・ジャッジの反射能力の影響を受け、僅かに軌道がそれ、優奈には直撃しない


「ふむ、少しばかり弱かったか…」


「なん、で…?」


自分の魔法があっさり貫かれたのを見て優奈は愕然とする。


「その魔力、使用属性、技量。貴様が天才と呼べる程の逸材であることは認めよう。だが意志力までは備わってなかったようだな」


魔法の威力は魔力と意志力の掛け算だ。同じぐらいの魔力を込められた二つの魔法。『貫通』の意志を込めた男の雷の槍は、恐怖によりマトモな意志が込められていない光の鏡を容易く貫いた。これにより優劣がついてしまった。

男は再び魔力を手に収束する。優奈は後退りをし、そこで、自分が携帯を持っていることに気づき、何とか誰かに連絡できないか考える。


「助けを呼ぼうとしても無駄だ。厄介な2人は今頃潰し合っているだろうし、この空間は人払いよりも高度な魔法により隠蔽されている。そうそうバレることも侵入されることもないだろう。俺の魔力残量から考えて長くは保たないだろうが、何、それまでには済む…」


しかし思考を読まれ打つ手が無くなり、胸中は絶望に塗りつぶされていく。

男はそんな優奈の様子を見て勝利を確信し、腕を振り上げ魔力を溜める。


「さて、残念ながら終わりだ。何、殺しはしないから安心するがいい…少し気を失ってもらうだけだ…」


優奈はただ男の腕に集まっていく魔力を呆然と見ていることしかできない。恐怖により体はマトモに動かず、思考も上手くできない。まさに絶体絶命。その時突然脳裏に浮かんだのは、一度自分を守ってくれた白髪の男

そこで男は魔法を放つ。


「終わりだ!」


「…煉!!!!」


彼ならもしかしたらと淡い希望を乗せて、咄嗟に信頼の証を叫び、目を閉じる。


迫り来る魔法


駄目かと諦めかけた。


その瞬間


その願いは見事に叶う。


「呼んだか、お嬢?」


聞こえる筈のないのんびりとした声が自分の目の前から聞こえてきた。

魔法説明


プリズム・ジャッジ

属性、光

位、中級

防御魔法

目の前に光の鏡を出現させ、直撃した相手の攻撃を倍の威力にして跳ね返す


ウォーター・フール

属性、水

位、下級

罠魔法

相手の足を水を絡め沈める罠魔法。もがけばもがくほど足が沈んでいく。


フリーズ・グレイブ

属性、氷

位、中級

拘束魔法

空気中の水分を凍らせ、相手を封じ込める水の派生魔法。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ