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7話(修)

村園女史の位を付け加えました。


何か眠い時に書いたので、強引かつ支離滅裂な感じに仕上がってます…

主人公軽く鬼畜モードに入ります。

次回当たりに主人公の魔法が発動させようかと思います。

感想どしどし送ってくださいね〜

結局ズボンはそのままの状態で、何事も起こることなく時間が進む。事情を知らない奴らが俺を見てクスクス笑っていたので、「次世代ファッションだ舐めんなよグラァ!!」と豪語したら爆笑された。犯人め…この辱め、一生忘れんぞ…!

それはそれとして、基本、授業はとうの昔にやった内容なので、簡単すぎる。なので、ずっとペン回し12回転に挑戦してたり、寝てたりしていた。そんな俺を隣の席のお嬢や、教師が注意してきたが、暇つぶし代わりに教科書の内容を無駄を無くし、わかりやすくまとめた俺のノートの内容を見て絶句していた。

それもどうでもいいとして、更に時間が流れ放課後。俺と翼は玄関に向かって無駄に広い校舎内を歩いていた。ちなみにお嬢には舞が付きっきりでいるので問題ないと判断し、ひとまず放置しておく。

それにしても今日はガラになく気張っちまった。


「あぁ〜…今日は無駄に疲れた…」


歩きながら伸びをする。背骨がいい感じにゴキゴキ鳴っている。


「ハハハ、お疲れさん。でも周りからの評価はうなぎ上りだぜ?名家の人間を無手で倒した無名の男。ってな」


「嬉しくもなんともねぇよ…あの程度の奴、お前でも楽勝だろ」


「流石に無手はねぇよ」


笑いながら俺の肩を殴ってくる翼。

痛ぇなバカ野郎。


「で、これからどうするよ?」


お返しとばかりに翼の肩関節を一瞬で外すと、腕をプラーンプラーンと力なく揺らしながらこれからの予定を聞いてくる。

ふむ、流石は俺。相手に気付かれず肩を外すとは…それはいいとして


「とりあえずズボン変えたい。よろっと視線がウザイ」


「さっきから笑われてるしな。」


既に完治した足が剥き出しになっている片足をプラプラと振りながら嘆息する。それを見て翼は呆れたような苦笑を浮かべる。


「しっかし、魔法を蹴り砕くわ蹴り落とすわ…何者だよお前……」


「…まぁ、魔法が使えなかった分、体術は重点的に鍛え上げたからな」




これは本当のことだ。鳳にいた頃も魔法が使えない分、体術などで名誉挽回してやろうと頑張ったし、魔法が使えるようになった今でも魔法のみに頼ることはなく、体術も極力使用するよう心掛けている。

強い力は人を惑わす。

強大な力を持ち得ながら、力に惑わされ、力に溺れていった者の末路を俺は数多く見てきた。

そのほぼ全てが醜悪で無様な最期を迎えていた。

あの人も……


「あぁはなりたかねぇからな…」


「煉夜?」


無意識に呟いていたようで、翼は不思議そうにこちらを見やる。


「なんでもね。とりあえず私服に着替えてぇ」


「じゃあとりあえず寮に戻るか。」


そして少し歩き玄関に着き、靴を履き替えようと下駄箱を開ける。すると、そこには一枚の紙が入っていた。

怪訝に思い慎重に手紙を手に取る。そして、すぐに罠魔法(トラップマジック)が施されていないかチェックする。

特に何もなさそうだな…


「なっ、煉夜貴様ぁ!!俺を差し置いてラブレターだとぉ!?てめぇ見せやがれ…って、あぁ!?なんか腕がブランブランしとる!?」


翼は俺の手元にある手紙を見て激昂し、掴みかかってこようとするが、そこでようやく脱臼していることに気付いたようで、何やら騒いでいる。

…バカは放っておいて、内容は何かね、と。

俺は開封し中身を確認する。そして、思わず笑みを浮かべる。


「翼、先行ってるわ。」


そういい残して俺は校舎を後にした。


「ちょ、それより腕が、あぁ!!リア充爆発しろぉぉぉぉぉぉ!!!」


後ろでなにやら叫んでいるが、気にしたら負けかなって思っている。





「おぅ、待てや白神。」


「あ?」


ひとまず寮に帰ってくると、入り口で男子寮寮長である三年生、羽柴 道利に声を掛けられる。

身長190オーバーの長身にスラッとしたいるが逞しい体。肩ぐらいで切りそろえられた茶髪に端整だがどこか野性味のる容姿で、性格は剛胆の一言。人当たりが良く、周りからは兄貴と呼ばれ慕われている人物だ。手には何かのファイルを持っている。


「んだ羽柴?」


「聞いたぞ。あの鳳の分家の人間を魔法使わないで潰して、更に女守って魔法蹴り落としたらしいな。とんでもねぇことしてんなお前」


一年である俺が呼び捨てしたことも気にせず、豪快に笑う。このような人となりだから俺もこの人を気に入っている。


「三年にまで広まってんのかよ…」


「授業終わってすぐ桜木が教えに来てくれたぞ。それにしても魔法を使う相手を素手だけで倒すか…今度俺とも戦りあってみるか?」


拳を突き出してニヤリと笑う羽柴。


「パス、めんどい」


「ハハハ、釣れねぇな」


手をヒラヒラと振りながら答えると、笑いながら拳を下ろす。断られるとわかっていて冗談で言ったのだろう。


「で、用件はそれだけか?」


「あぁ、忘れてた。ほらよ。」


そう言って手に持ってたファイルを投げ渡してくる。


「お前宛てに送られてきた物だ。差出人は不明だがな。」


「あぁ、悪いな。」


そう言って受け取り、俺は自室へと戻ることにした。





流石名門とだけあってこ、この寮の部屋の設備も素晴らしい。バスルームにキッチン、リビングなどがあり、ホテルのような部屋だ。

自室に入ると、とりあえず制服から私服に着替え、ファイルを開けてみる。そこから出てきたのは数枚の紙だった。

その内の一枚を手にとり見てみると、そこには多くの人の顔写真と、人の様々な情報が書き記されていた。


「流石は高宮の爺さん。仕事が早い。」



それらの資料は、魔法授業の途中で抜け出した時に、携帯で高宮の爺さんに頼んでいた雷属性の魔法を使える教員を纏めた物だった。俺は自分のベッドに腰を下ろし、その一枚一枚を確認していく。


しばらく確認して、俺はある人物を見つけ、目を留める。

それは村園女史の情報だった。


「やはりいたか…」


村園 真宮

属性 雷 水 風

魔力値 94700

二つ名「雷水天女」

位、七位

備考

性格は〜(中略)〜攻撃魔法、防御魔法ともに優秀で攻撃魔法は雷を、防御魔法は水を、補助魔法は風を中心的に使用する。戦闘スタイルは遠距離から魔法で攻める典型的な魔導士タイプ。攻撃は雷属性を中心か…やはり今のところ一番怪しいんだよな…しかし…

そこまで思考した時、部屋のドアが開く。


「あれ、煉夜。何でお前ここにいるん?」


そこには脱臼から治った翼がいた。俺はさり気なく資料をファイルに戻し、布団の下に隠す。


「あ?何でって…」


「ラブレターの主の所へ行ったんじゃ…?」


「…あぁ、そりゃお前の早とちりだろうが。あれはラブレターじゃねぇよ」


「なんだよ、そうだったのかよ。いやぁ、ビビったぜ。彼女いない仲間が1人減るかと思ったからよ」


どこか安心した様子の翼。こいつ顔はいいのだから、黙ってれば彼女の一人や二人ぐらいできるだろうに…


「ん?何だよ。その残念な奴を見るような目は」


「いや、別に。ただ残念な奴だな、と思ってな。」


「まんまだった!?」


などというやり取りをギャーギャーとしている内に夕食の時間になった。



「さて、晩飯だがお前はどうする?」


私服に着替えた翼が聞いてくる。

ここの寮は晩飯を学食で食べる奴と自炊する奴がいる。学食は作る手間もないし、安定しておいしい料理を食べれるが、金がかかる。自炊はやりようによっては金が掛からないが、手間が掛かる。

ちなみに俺は本来なら自炊派だが、お嬢は学食派らしいので、警護の為学食派になっている。


「俺はちょいと用事があるから先行っててくれ」


「あいよ〜」


俺の言葉を怪しむわけでもなく、気の抜けた返事をしながら翼はさっさと部屋を出て行く。

よほど腹が減っていたのだろう。

翼が部屋から出て行ったのを確認すると、俺はポケットから手紙を取り出し、内容を再度確認する。


『午後七時に演習場へ一人で来い。お互いの探り合いはもう十分だ。』


手紙にはそう書かれていた。無論、ラブレターなどという甘ったるい物では断じてない。


「果たし状ってやつかね…」


直感的に感じてくる戦闘の気配に思わず笑みが浮かんでくる。別に戦闘狂という訳でもないが、やはり強い奴と殺り合うのはなかなかに心躍るモノがある。

現在の時刻6時50分。


「行くか」


誰に言うでもなく呟き、手紙を放り捨て、部屋を出る。





演習場へ向かっている道中。俺はふと妙なことに気付く。

人の気配が全く無い…?

演習場は基本的に使用するのは自由で、夜中でも魔法の練習をする奴は少なくない。しかし、今は全く気配が感じられないのだ。まるでこの場所だけが世界から隔絶されているかのように。

人払いなんてチャチな結界魔法じゃねぇな…もっと高度な…

そこまで考えた所で演習場に到着する。

演習場に明かりはついておらず、なにも見えないほどに暗い。

奇襲に注意しながらとりあえず演習場の中心に歩いていく。

人の気配は…無いな。

まさかブラフか?しかし、ブラフにこんな高度な結界魔法を使うとは思えないが…まぁ、とりあえず


「…腹減ったし何もないなら帰るか」


腹が減っては戦はできぬということわざもあるし、などと言い訳のように考えながら戻ろうと足を一歩踏み出す。すると、突如気配が現れる。

暗くて姿は見えないが、相手も俺の存在を確認している所を見ると、手紙の差出人かね…?

とりあえず様子を見て待つことに。

さぁ、どう出る?

次の瞬間。雷撃の矢が飛来してくる。

雷下級魔法『ボルトアロー』

その雷撃の矢は今日喰らった物より魔力の密度が高く、大きい。

下級ね…小手調べってか?

俺はそれを体を逸らして避ける。一瞬、雷の光により相手のシルエットだけ確認できた。

相手は体つきから見て女か…

そこまで考えた所で今度は空中に魔力を感じる。降り注ぐは雷の雨。

中級雷魔法『ライトニング・レイン』


闇雲に動き回ってもこの雷撃の雨からは逃れられない。更に落ちたところが小さなクレーターになっている程の威力。一歩間違えれば大怪我じゃすまないだろう。だが、魔力に敏感な俺は空中に感じる魔力から落下地点を把握できる。最小限の動きでそれら全て避す。

このことに相手は驚いているようで、動揺している気配を感じ取れる。

よろっと攻めるか。

俺は気配を完全に消しさり、音もなく女(仮)に近付き背後を取る。

この暗闇、更に動揺している相手が俺の気配を察知できるはずもなく、俺は手早く相手の両肩を外し、頭を掴み地面に叩きつける。

すぐさま相手が何か唱えようとしてきたので、口に指を突っ込み、それを封じ、拘束する。まぁ、軽い脳震盪を起こしてるだろうから、マトモに魔法が使えるとは思えないが念のためだ。


「詰みだな。」


「〜〜〜!!」


うん、何言ってるかわかんねぇ。とりあえず情報を得るか。資料通りなら間違い無くコイツはストーカーではない。

ストーカーは高宮の爺さんが雇った護衛を返り討ちにした。そいつらの実力はわからないが、あの高宮財閥のトップが半端な護衛を雇うとはおもえない。そいつらを返り討ちにした割には手応えが無さ過ぎる。



「今から俺の質問に答えてもらう。答えなければ関節を一つずつ外していく。抵抗すれば骨を一つずつ砕いていく。嘘を吐いたら内蔵を一つずつ潰していく。わかったら頷け」


相手の背筋をゆっくりとなぞりながら威圧するように声のトーンを下げ、相手に囁く。

相手は壊れた玩具のように何度も頷く。

それを確認して相手の口から指を引き抜く。


「何故俺を狙った…?」


「あ、あなたが呼んだんじゃ…」


ミシィ


「あぐぅ!!」


「質問に答えろ」


俺は手で相手の脇腹、肋骨を圧迫すると、相手の骨が悲鳴を上げる。


「て、手紙にここに来るように書かれていたから…」


若干怯えつつ、しかし、気丈に相手は答える。

嘘を吐いてるようには見えない…そして聞き覚えのある声だ。だが気にしない。

相手は気付いてないみたいだし。


「その手紙にはなんて?」


「…午後七時に演習場に来い。決着をつけよう」


「…決着?お前と誰が?」


「私は、ある生徒に付きまとっている犯罪者だと思っていたけど…」


…まさか


「…ちなみに、お前の名前は?」


「…村園 真宮」


…なるほどね。そういうことか。俺は村園女史の両肩をはめ直し、拘束を解き、立ち上がらせる。


「手荒なことをして悪かった。村園女史」


「!?君は…」


俺固有の呼び名に俺が誰だか気付いたのだろう。

村園女史は勢いよく振り返る。そして、顔を確認すべく指先から魔法で小さな明かりを灯す。


「白、神…何で…?」


よほど驚いたのか、口をパクパクとしながらなんとか言葉にする。俺は村園女史の頭から血が垂れているのに若干驚いた。恐らく頭を地面に叩きつけた時だろう。


「まぁ、簡単に言うと、俺は理事長に雇われた高宮のお嬢の護衛なんだわ。」


「え、え?」


「まぁ、簡単に言うと、俺は理事長に雇われた高宮のお嬢の護衛なんだわ。」


「い、いや。二回言わなくても言葉は理解しているわ。ただ頭が追い付いていないだけで…」


うん、多分それ多少は俺の責任でもあるわ。

村園女史の血だらけの頭を見ながら心の中で謝っておく。

ようやく冷静になり、俺のことを理解した村園女史と俺は、お互いのことを話し合ってみた。

俺は村園女史を怪しいと思っていた。魔法授業の時、首の負傷をした現場にいなかった村園女史が、俺が冗談を言った時迷わず負傷した首をピンポイントで狙ってきて、何故か俺が首を痛めていることを知っていた。まるで現場を見ていたかのように。俺がお嬢を庇って怪我して、保健室にいった時。何故か村園女史がいて、お嬢を見るなり慌てていた。当初首のことは、村園女史はお嬢を盗み見していたのではないかと疑った。保健室のことは、魔法を使ったことがバレない為に逃げ込んだのかと考えた。もしくは俺がお嬢を庇ったことで俺を新たな護衛だと断定し、俺を一目につかず始末しようとしたが、お嬢がいたので諦めたのかとも思った。

しかし、それら全て俺の思い違いだったらしい。

どうやら村園女史は前からお嬢がストーカー被害に遭っていることを知っていて、お嬢を心配して見守っていたりしていて、転入当初から俺を疑っていたらしい。俺をあえてお嬢の隣に座らせたのは、俺がお嬢に不審なことをしてボロを出さないか監視する為。首のことは、お嬢ではなくお嬢に近付いた俺を監視していた為。保健室のことは、俺に共謀者(翼と読んでいたらしい)がいて、ワザと少し怪我をする程度に抑えられた魔法からお嬢から庇い、お嬢と近付いたではないかと危惧した。そこへ俺が保健室に向かったと連絡を受けたので、そこで化けの皮を剥がそうと待機していたとのこと。ちなみに出て行ったと見せかけて実は保健室前で待機していたが、舞が来たので退散したらしい。

見方によっては生徒想いのいい先生だが、俺からしたら…


「うん、どんだけ疑われてたんだよ俺…」


「し、仕方ないでしょう。妙な時期に転校してくるし、悪人面だし…」


「人を見かけで判断すんじゃねぇよ。ガチで悪の道に走るぞド畜生」


俺ってそんなに悪人面なのか…?


「まぁ、それはそれとしてぇ、ちょっとこっちきて白神君♪」


そう言って妙に明るい声を出しながら、俺の腕を掴んで自分の近くに引き寄せる村園女史。

…嫌な予感が……

そう思った瞬間、自分の下から殺気を感じる。


「レディの」


俺の顎に全身を使ったアッパーが叩き込まれる。


「顔に」


跳ね上がる俺の顔面を両手で掴み、一気に引き寄せられ、そこに膝を叩き込まれる。


「何してくれてんだ」


後方によろめく俺に更に一回転して勢いの付けた肘を鳩尾に叩き込まれる


「てめぇはぁぁぁ!!!」


体を「く」の字に曲げる俺にトドメとばかりに鋭いハイキックを叩き込む村園女史。それをモロ側頭部に受けるが、倒れることなく踏みとどまる。

常人なら間違いなく重体入院コースまっしぐらであろう、全てに己の体重を乗せた攻撃のフルコース。堪能してしまいました…


「ふぅ、これでチャラにしてあげるわ」


「…左様ですか」


スッキリした様子の村園女史。多少理不尽に感じながらも実際は大して効いてないので黙っておくことにする。


「それにしても、あの手紙のせいでもうお腹ペコペコよ。早く戻りましょう。」


「そうだな。早く帰って夕食作ら…」


そこまで言いかけて嫌な予感が頭をよぎる。


「…一つ聞きたいんだがいいか?」


「何かしら?」


「アンタは俺が来る前もお嬢をストーカーの如く見守ってたんだよな?お嬢が危険な目にあわないように」


「言い方が気になるけど…そうね。鳳が傍にいないときは大体見守っていたわね」


「じゃあ、お嬢の親友の鳳は食堂派か自炊派かわかるか?」


「確か…自炊派ね。一つ上のお姉さんと一緒に食べてるらしいわ。どうかしたの?藪から棒に」


村園女史は不思議そうにこちらを見ているが、俺はあることで頭が一杯になっていた。

…これはヤバいかもしれない…


「じゃあ、最後に。アンタは食堂派か自炊派…」


「私は食堂派だけど…」


その答えを聞いた瞬間、俺は全力で走り出した。


「ちょ、どうしたのよいきなり!?」


背後で村園女史が何か言っているが、それどころではない。

俺は演習場の出口を通ろうとするが、目の前には何も無いのに何かぶつかる。再度通ろうとするが、まるでそこに見えない壁があるかのように…否、まるでそこから先が隔絶されているかのように通れない。

この結界魔法は…!?


「クソッ!やられた!!」


憎々しげに言葉を吐き捨て、目の前の通れない空間を思いっ切り殴る。


「どうしたのよ。いきなり走り出して。」


後ろから村園女史が追いついてきた。


「今は恐らく食事が終わるぐらいの時間。護衛役である俺とアンタはここにいて、お嬢は食堂で食事、鳳は寮で食事…お嬢にはまともな友達がいない。食堂から寮までは多少の距離がある…」


「何を言って…」


俺の言葉の意味することを理解していない村園女史に、俺は答えを突きつける。





「今現在、お嬢を守る存在がいない…」





「!?」


村園女史から動揺の気配が伝わってくる。


「な…なら早く戻らないと!!」


慌てた様子で演習場から出ようとするが、俺と同じように見えない壁にぶつかったかのように、弾かれる。


「な、何よこれ…!?」


「闇の上級魔法…『プリズン・アビス』」


深淵の牢獄(プリズン・アビス)

属性、闇

結界魔法

結界を張った空間を一定時間世界から隔絶し、相手を暗闇の空間に封殺する絶対堅固の結界。外側からこちら側に干渉することはできず、空間の範囲調節も可能。しかし、浪費する魔力は大きく、有効時間は短いというデメリットを持ち、更に発動までの時間が長いため、戦闘中に使用するのは不向きな魔法。


…だが、相手を足止めするにはもってこいの魔法だ。しかも、人間は暗闇でずっと生きていられるようには造られていない。暗闇の閉鎖的空間にしばらくいるだけで精神は衰弱する。そんな状態でたとえ出れたとしても、マトモにストーカーと殺り合えるとは思えない…

本来なら引っ掛からないであろう誘いを、お互いがお互いを疑っている為乗ってしまい、護衛役を二人とも足止め、あわよくば共倒れを狙う。俺の纏いもただの結界ならともかく、隔絶されては意味を為さない。そして、普通なら狙わないであろう食事時を狙うとは…やってくれたな…!!



「チィ!もっと早く結界の意味に気付いていれば…!!」


てっきり暗闇の中から俺をなぶり殺しにするのかと思ったが…


「それよりどうするのよ!?このままじゃあ高宮は…」


焦りが徐々に積もっていく。このままじゃあ依頼が失敗に終わっちまう。それも最悪な形で…

クソっ!!!一体どうすれば…






……なんてな。

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