3話
自分の文才の無さに嫌気が差してきます…しかぁし!私は負けません!
つーわけでどうぞ〜
俺がこの学院に来てから早一週間。
俺は順調にクラスの連中と交友を深め、ワイワイガヤガヤと温くもなかなかに楽しい毎日を過ごしています。まぁ、それは寮のルームメイトとなった友人、桜木翼の助けもあってこそだが…
依頼については、前に俺が対象を監視していたのが舞に勘づかれてから、舞が常に対象の周りを警戒するようになり、前に気配を消して近付いてみたら、勘かどうか知らんが、気配を察知され魔法を大量に叩き込まれてしまった。無論全部避けたし正体バレてないから別にいいんだが…そんなわけで対象には迂闊に近付けない状態にある。
ま、俺の代わりに対象を警護してくれるのはありがたい。俺はこの温い学院生活を堪能…ではなく、ストーカー潰しに専念させてもらおう。
そんな俺は現在、魔法授業を行う為教室から演習場に向かっている途中だった。
「うっしゃあ!魔法授業だぜ煉夜!燃えるぜぇ!!」
「無駄に熱いぞ翼。そんなに女子にいい所を見せたいのか?」
「当たり前だろ!!魔法授業は2クラス合同だからな!隣のクラスの女子とお近づきになるチャンスなんだぜ!?」
さっきからこいつテンション高くて鬱陶しい…それにしても魔法授業ねぇ…
魔法授業。それは、この学院がもっとも力を入れている授業であり、この授業の成績により将来の職場が決まるといっても過言ではないらしい。
その授業内容は基本的には魔法を使用した実技で、毎回変わる出題される条件を魔法でクリアしろというものだ。例えば、瓶の中にあるボールを、瓶を破壊せずに魔法により取り出す。とか、目の前から大岩が転がってきた、これを魔法で対処しろ。など、繊細なモノから大雑把なモノまで幅広くある。これは柔軟な発想力と、魔法の応用力を鍛えるモノらしい。
それにしても隣のクラスか…確か舞がいたな。面倒な…
「まぁそれはどうでもいいとして「どうでもいいだと!?」…少し黙れ。魔法授業ねぇ…俺からしちゃあただダリィだけだがな…」
「そうか?女の子抜きにしても魔法授業は楽しい…って、そうか、煉夜は魔法使えないんだったな。」
そう、俺は魔法を使えない設定になっているため、出題される条件をクリアするどころか、挑戦すらできないのだ。だから基本的にこの授業中は先生の手伝いなどををしているということだ。
「そういうことだ。だから最初の瞑想とか以外は基本雑用しかやることねぇんだ…サボるか…」
「先生には俺から言っといてやるよ。」
「悪ぃな。そんじゃ…」
俺は話の分かる友人に軽く手を振りながら来た道を引き返そうとして…
「きゃっ」
「っと」
振り向いた先にいた女性とぶつかり、俺は反射的に転びそうになる女性の手を掴み受け止める。その女性とは俺の警護対象である、高宮優奈お嬢様であった。
警護役が警護対象を怪我させるとか洒落になんねぇな…
つーわけで、本来なら無視するところを、親切な俺は彼女の安否を聞いてみることにする。
「あ〜…大丈夫か?」
「ッ離して!!」
…おもっくそ手を振り払われた。テンション一気に下がった。あぁ…もうこのまま早退しよっかな…
などと軽く鬱気味に考えていると、突然何者かに胸倉を掴まれる。
「お前ッ!優奈に何をした!?」
その荒ぶる襲撃者は昔俺の妹分であった舞だった。
俺は襲撃者の首に叩き込もうとつくった手刀を元に戻す。
「あ?別に何もしちゃいねぇよ。ただ振り返ったらぶつかった。それだけだ。」
「嘘を吐くな!本当のことを言え、このストーカー!!」
えぇー…いきなりストーカー扱いかよ…相も変わらずの猪突猛進ぶりだな愚妹よ。
つーか、おい、翼。何故俺を変態を見るような目で見てやがる…
俺は溜め息を吐き、とりあえず翼を後で締めると心に誓い、弁明することに。
「ストーカー?何のことだよ。俺はこの学院に転校してきたばかりだぞ?んなことするかよ。」
「嘘を吐くな!」
「…あの、舞。さっきは取り乱してしまったけど、彼は違うと思います。」
おぉ、予想外の所から助け舟が。これで勝つる!いや、何に勝つかは自分でも知らんが、まぁ、ノリだノリ。
「しかし、コイツは先程お前に…」
尚も俺を疑う舞に俺は妙な疲れを感じる。
…はぁ、他人としてコイツと接するのは何か疲れるな…まぁ、いいや。とりあえず堂々とストーカー探しのできる口実でも作らせてもらうか。
「…何のことかよくわからんが、そこまで言うんだったら証拠や根拠があるんだろうな?俺がそのストーカー?だっていう。」
「それは…」
さっきの勢いはどこへやら、俺の反論に口ごもる舞。
攻めるのは得意だが攻められるのは苦手なのも相も変わらず、と。
「舞は悪くありません。舞はただ、私のために一生懸命なだけで…」
「あ?一生懸命なら人を疑って犯人扱いしてもいいと?随分と傲慢な物言いするじゃねぇの、高宮のお嬢様。」「そ、そういう意味じゃ…」
俺の言葉に狼狽し、二の句が出せないでいる高宮のお嬢に、俺を睨み付けるものの、先程の失態があってか口出ししてこない舞。状況を理解していないのか、ポカンとしている翼
…話進まねぇな……
とりあえず俺はさも何も知らないように振る舞いながら聞いてみる。
「…まぁ、それはいいとして、とりあえずそのストーカーってのは何なんだ?」
「……」
「だんまりしてたらわかんねぇぞ?」
「…あなたには関係ありませ…」
「こっちはストーカー扱いされたってのに、関係ないとか言わねぇよな?」
小さく拒絶するように呟いた言葉をぶったぎる。
そして、俺はさっさと話せや。という催促じみた視線で高宮のお嬢の目をじっと見つめる。
高宮のお嬢は目を逸らししばらく口ごもると、観念したのかストーカー被害について話し始める。ストーカー被害はここにくる前に貰った資料と大体一緒の内容だった。
物が無くなったり、妙な魔力の流れや視線を感じたり、無言電話がきたり、誰もいない筈の場所を歩いていると背後から足音が聞こえてきたりと。
魔力以外はストーカーのテンプレだな…
俺は如何にも仕方なさそうな口調で呟く。
「ハァ、しゃあねぇな…疑われっぱなしってのも癪だしな。俺がストーカーを見つけてやりゃあ俺への疑いが晴れるってことだよな?」
「そ、そんな、危険です!それに、貴方を巻き込む訳には…」
「おいおい、勘違いしてんなよ。俺は暇つぶしと俺の名誉の為にストーカーを捜すんだ。別にお前の為とかじゃねぇ。」
いや、ツンデレとかじゃないからな?マジで。
すると、俺の言葉に舞は怪訝そうな目でこちらを見てくる。
「お前、何を企んでいる…?」
「別に、さっき言った通りで何も企んじゃいねぇよ。強いていうなら、よろっと教室でずっと探るような視線を受けるのに嫌気が差してきたってとこだな。」
「すみません…」何気なく言った嫌みに、申し訳なさそうに謝る高宮のお嬢様。
「謝るぐらいならさっさと止めろ。流石に不快になってくる。」
それに優しい言葉を掛けてやる程出来た人間じゃない俺。更に申し訳なさそうに縮こまる高宮のお嬢様。突き刺すように睨んでくる舞と高宮のお嬢様の様子を見て同様に睨んでくる通行人たち。おーおー、まるで俺が悪人みたいじゃねぇの。心が痛いねぇ…ってまてまてまて、何故急に魔力を練り始める通行人A!?
「よくわかんねぇけど、俺も協力するぜ!」
そして空気を読まずに会話に参加してくるバカ。
ま、お陰で嫌な空気は払拭されたからいいか。舞も何か毒気抜かれたような感じだし。通行人Aは未だ俺を睨んでるが…うん、魔力を練るのは止めたっぽいから無視しとこう。しかし通行人を暴徒に変えるとは…恐るべし高宮のお嬢のカリスマ…
俺は若干安堵しながら、翼の肩にポンと手を置く。
「つーわけで、翼はいろいろと協力してくれるらしいから精々こき使ってやってくれ。」
「え、俺だけ!?」
「あ?お前さっき自分で宣言したばかりだろうが。」
「そりゃそうだが…煉夜もだろ?」
「俺のは暇つぶしだ。協力するなんざ言った覚えはねぇよ。」
「卑怯だ!!お前が協力する的な空気出してたから俺も親切心全開で便乗したんじゃねぇか!!」
「本当に親切心がある奴は便乗なんてしねぇよ。下心の間違いだろ。つーかよく考えてみろよ。俺がいなけりゃお前両手に花だぜ?」
「よし煉夜。どこへなりとも消え失せろ。」
「…それは流石に酷くね?」
いきなり態度を変える翼に苦笑する。そんなバカなことをしている俺達を見て、高宮のお嬢はクスクスと笑っている。
ふむ、多少雰囲気が和らいだか…やはり多少交友を深めた方が動きやすいか?
「煉夜……?」
これからの方針を検討していると、不意に舞が俺の名を呟き、俺の顔をマジマジと見てくる。
「…あぁ、自己紹介がまだだったな。俺は白神 煉夜。そして、こっちのが浅黒金髪…」
「ちゃんと紹介してくんない!?俺は桜井 翼ってんだ。よろしく!」
「白神…当たり前か…」
勘づかれる前に俺は自己紹介をしておく。便乗して翼も名乗り、手を差し出すが、舞は俺の名を聞くなり落胆したような声で呟くだけだ。
どうでもいいが、翼が手を差し出してるのにスルーしてやるなよ。なんか可哀想に見える。
「で、アンタは?」
「煉夜、知らないのか!?彼女は高等部一年の5本の指に入る美少女にして、彼の鳳家の宗家の人間である鳳 舞ちゃんだぞ!?」
俺が舞に名前を聞くと、スルーされて恥ずかしかったのか、翼が顔を赤くしながら大きめの声で舞の紹介をしてくる。うん、滑稽だな翼よ。
大声で美少女と紹介された舞は、そっぽを向きながらも満更でもなさそうに頬を朱色に染めている。
まぁ、俺は舞が鳳の人間だって知らない設定だからな。一応リアクションしておくか。
「MA☆ZI☆DE!?あの鳳の、しかも宗家の人間かよ!?」
うん、ワザとらしすぎた…みんなすっげぇ引いてるし…
「それより、そろそろ授業が始まってしまうんじゃ……」
それよりって…まぁ、別にいいが…
俺の体内時計では後2分でチャイムが鳴るな。
「そうだな。優奈、行こう。」
「よっし、じゃあ急ごうぜ優奈ちゃん、舞ちゃん!遅刻だけは勘弁だからな。」
「うむ、頑張ってこい若人よ!」
早足で演習場へと向かう三人を俺は旅立つ弟子を見送る師のように見送る。
「お前も来い!!」
「やん、大胆…って首!!首はマジでやめて!苦しいから!!マジでやめっ!!」
しかし真面目な舞にサボろうとしていたことを見抜かれ、首根っこを掴まれ、俺は引きずられながら演習場へと向かった。
それから2分後、俺達は鳴り響くチャイムと同時に演習場に辿り着くのだった。