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20話

大分遅くなりました。

しかもクオリティは低く、短めです。

誠に申し訳在りません


今回はシリアスシーンなんですが、作者はシリアスシーンが苦手且つ夜遅く眠い状態で書いたモノなので、いろいろとおかしな点があると思いますが、どうぞ。

昼休みが終わり、例の如く午後の授業をサボり放課後。

村園女史の説教を受けた後、俺はのんびりと玄関ではなく、屋上へと向かっていた。咲夜との約束を果たす為だ。

正直、面倒な上に俺にメリットは何もないので行く必要性はないのだが、あの人には過去に大分世話になっているので、これぐらいの約束は守らなくてはならないだろう。

ということで、屋上までやって来たのだが……


「申し訳ありませんでした、煉夜」


「……あ?」


俺は現在、咲夜に土下座されている。

何故かって?知るか。俺が聞きたいわ


「私は昨日お前を拒絶してしまいました……」


あぁ、そういうこと。

いや、でもあんなん見せられれば誰でも拒絶すると思うが……

例えば友人が次の日には殺人鬼になってたら誰だってドン引きするだろ?

そんな感じのことなのだから気にしなくてもいいのだが……

わざわざ土下座してまで謝る咲夜の律儀さに俺は苦笑する。


「ハイハイ顔上げて。別に俺は怒ってないし、悲しんでもないし、ましてや傷ついてもない」


「しかし……」


「それに、そんな形のいい頭を足下に置かれたら……」


つい、踏み潰したくなる。


俺の少しばかり危ない思考を察知したのか、咲夜はいそいそと優雅に立ち上がる。

それに満足して一つ頷く。


「それでよし。で、話があるんじゃなかったのか?」


話を促すと空気が引き締まり、咲夜は真剣そのものの顔で口を開く。


「教えてください煉夜……外武錬で何があったのかを……」


予想通りといったところか……まぁ、当たり障りなくいこうか。


「ふむ、まずそこから違う。俺は外武錬なんてのをしに海外に行った訳じゃない」


「外武錬をしに行ってない……?では何をしに……」


俺の答えに咲夜は怪訝な顔をする。

勘違いしていそうなので、俺は少し訂正を加える


「いや、この言い方じゃ語弊があるな。

確かに俺は外武錬ってのはされた……あんたらが知っているのと意味合いが違うがな」


「……どういう意味ですか?」


眉を顰めて首を傾げる咲夜に、真実を伝えようか一瞬迷うが


「それは宗主にでも聞け。

俺が言っても現実味が無さそうだからな」


面倒ごとは宗主に丸投げすることにした。

俺の存在が鳳にバレるだろうが、宗主ならきっと俺の考えを汲み取ってくれるはずだ。

俺が自分から出向くまで静観を貫いてくれるだろう。


「お父様に……?わかりました。

お前がそう言うなら、今度聞いてみます」


「……」


いや、疑問ぐらい持とうぜ?

高宮の爺さんといいお嬢といい……簡単に人を信じすぎでしょ……

少しばかり呆れたが、咲夜は俺を過剰信頼している節が昔からあったので、スルーしておく。


「では、お前は何故そこまで歪……変わってしまったのですか?」


わざわざ言い直す咲夜の律儀さに苦笑が浮かぶ。

まぁ、折角言い直してくれたのを訂正するのもアレなので、気にしないことに


「そうさな……失って得た結果、とでも言っておこうか」


「失って得た……?」


「ま、いろいろあったってことさ」


そう言って俺は視線を夕陽に向ける。

瞳に流れ込む朱い光に少しだけ目を細める。

そしてふと脳裏にフラッシュバックされるは、その朱と似て非なる紅。


俺の大切なモノを奪っていった蹂躙の色。

今でもしっかりと思い出せる。

壊れ逝く日常を、消えていく生命達の灯火を、そして、あの人の最期の瞬間を……

あの日俺は、己の無力さに嘆き、哀しみ、怒り、絶望し……なにより憎悪した。

だから力を求めた。

狂ってもいい。

壊れてもいい。

俺の大切なモノを奪った奴を蹂躙し、破壊するだけの力を……ただ求めた……

そして、願いが通じたのか、俺は己の力を覚醒させた。

ある対価を支払って……


その時の情景が脳裏に鮮明に映し出され、歪みそうになる顔に笑みを貼り付ける。

しかし、口内では奥歯を噛み砕かんばかりに食いしばり、拳をキツく握り締める。

そうでもしないと何かが溢れ出そうだったから。

憎悪でも憤怒でも悲哀でもない何かが……

握り締めた掌に爪が突き刺さり、血が溢れ出て床に赤い斑点を残していく。

それを体を影にして隠しながら、咲夜に悟られぬよう瞬時に頭を切り替え、視線を戻す。

咲夜は心配そうな表情で此方を見ていた。

やはり10年もの付き合いは侮れないらしく、俺の僅かな表情の変化を読み取ったらしい。


「あぁ、この外見も失って得た結果だな。染めた訳じゃないぞ?」


だから極めて明るく言葉を紡ぐ。陽気に朗々と、先ほどの揺らぎを感じさせぬよう。


「その様子ですと、詳しくは話してくれないようですね……」


咲夜も特には言及してこず、会話を進めてくれる。ありがたい

俺は胸中で咲夜の心遣いに感謝しながら、感情を鎮め言葉を紡ぐ。


「そりゃあねぇ。俺の……白神煉夜の核となる事だからな。

おいそれとは教えられんよ」


「家族にも……ですか?」


「家族にも、だ……」


俺の本質を見てまだ家族と呼んでくれるか。

その優しさに妙に心がざわつくのを感じる。


「ま、俺の過去なんて気にしなさんな。

過去に何があろうと、今俺がここにいるってことが全てだ」


それに、と語尾に付け加え、言葉を続ける。


「あんたには、何ら関係の無いことだからな」


拒絶。

俺の言葉に咲夜の顔が哀しげに歪む。

そして生まれる沈黙。

しばらく待っても咲夜は話す気配が無いので、痺れを切らした俺は


「さて、話というのは以上か?だったら俺は帰るが……」


そう言って、踵を返そうとする。


「……舞と雅也に会いましたか?」


しかし、多少慌てたようだが冷静に俺を引き止める咲夜。

話を続行するならもう少し付き合ってやろう。

珍しくサービス精神豊富な俺は視線を咲夜に向け、答える。


「会ったぞ。雅也にはあんた同様一目でバレた。だが、舞は気付きながらも理解しようとしてなかったな」


「あの娘はまだ過去のお前を……それで、どうするのですか?」


「別にどうもしねぇさ。アイツが俺を受け入れようが拒もうがな」


多少対応は変えさせて貰うが……


「……それでは舞があまりに不憫では?あの娘は私達の中で一番、お前の帰りを心待ちにしていたのですよ?」


「だとしても、だ。事実を突き付けても、理解し納得しなけりゃ、それは本人の中では嘘になる」


そしてあいつは、俺が嘗ての兄だということを嘘と思い込もうとしている。

お年頃って奴なのかねぇ……絶対違うと思うが……

ま、それはともかく


「現実と向き合って俺を受け入れようとするか、現実から逃避して過去の(げんそう)を待ち続けるか……それはあいつ次第のことだからな。俺は何も口出ししねぇさ」


「そう、ですか……」


少しばかり不服そうだが納得する咲夜。


「そういや俺も少しばかり気になることがある」


そこで少しばかり趣向を変え、俺からも質問してみる。


「あんたは、今の俺を見てどう思う?弟云々ってのは無しで」


口元には笑みを。

しかし、瞳の感情の色を消し去り咲夜に問う。

この問い事態に意味は無い。

強いて言うなれば暇潰し。

先程まで輝きを放っていた夕日はその輝きを弱め、闇の帳へと沈みかけている。

晩飯にはまだ早い。しかし、何かをするには短い時間。

だからこその暇潰し。

咲夜は考え込むように、迷うかのように顔を俯かせる。



「私は……」


「ん?」


「私は正直……お前という存在を恐ろしく感じます」


「ほぅ……」


「お前が私の弟というのは確かに感じられます。

しかし……それだけなのです。

それ以外は昔のお前とはまったく別で……今だってそうです。

昔のお前ならそんな無機質な眼はしなかった。

昔のお前ならそんな笑みを浮かべなかった。

だから無意識に探してしまうのです。

昔のお前の表情を、仕草を、癖を、口調を……」


搾り出すかのような声で心情を吐露していき


「私も、舞のことをいえないのかもしれませんね」


最後に自嘲するように咲夜は呟く。

それまで黙っていた俺は、そうか、と呟き空を仰ぐ。

夕日はもう半分以上が沈んでおり、日光の恩恵を失い空気が冷え始める。

そんな暗くなってきた空を見ながら、今日は星が綺麗に見えそうだと、どうでもいいことを考え始める。


「しかし」


咲夜は一拍間を空けると更に言葉を紡ぐ。


「私は、今のお前を受け入れていこうと思います。

あの時の表情を見るに、お前はとても苦労したのでしょう……

ならば、それを労わるのは家族の役目です」


その芯の通った声に、俺は自然と視線を咲夜に移す。


「もう一度言います。私はお前を……白神煉夜を受け入れます」


そう言って柔らかく微笑む咲夜。

その目には、確固とした覚悟と全てを包み込むような慈愛の光が宿っていた。


「止めといたほうがいいと思うが?」


「覚悟はできています」


「後悔すると思うぞ?」


「知らずに後悔するより、知って後悔したほうがマシです」


折れる様子は無し、か。


「なら、勝手にすればいい」


言いながら俺はゆっくりと扉に向かって歩き出す。


「ちなみに、海外(むこう)で俺の全てを受け入れられた奴は、決まって狂人か聖人のような奴しかいなかった」


それ以外の奴は皆俺を恐れるか、気味悪がって離れていった。

俺を友だと言った奴も、仲間だと言った奴も、家族だと言った奴も、全て……

それ程までに俺の狂気は、常人には受け入れがたい代物なのだ。


夕日は完全に沈み、闇の帳が世界を包み込む。日光の恩恵を失い肌寒くなった空気を感じながら、俺は扉の前で立ち止まり、顔だけを咲夜に向ける。


「あんたはどうなるのか、少しばかり期待させて貰うぞ?」


そして、挑発するような、嘲笑するかのような、薄い笑みを作る。


「煉夜……」


「おっと、そろそろいい時間だな。

じゃ、俺は帰るわ」


何か言おうとした咲夜の言葉をわざとらしくぶったぎり、俺は鉄の扉に手を掛ける。

言葉を聞かなくても、顔を見て気概は十分伝わってきた。

なら、もう話す事も何も無い。

俺は一度空を見てからゆっくりと鉄の扉を開き、音もなく屋上を去った。


今日は予想通り、星が綺麗だった……

次は少し煉夜のイメージダウンを計ろうと思います。

あと、新キャラとちょっとした伏線も混じえたいな、とも思っています。

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