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18話

遅くなりました。

最近寒くなってきましたね。皆さんも風邪にはお気をつけ下さい。

さて今回は微妙にギャグ…なのでしょうか?まぁ、クオリティは相変わらず低いので、それでも構わないという方はどうぞ

「で?昼休みは有耶無耶になったが聞かせてもらおうか。お前と鳳先輩の関係を……」


「ガキの頃世話になった幼なじみのお姉さんだ」


「え、それなんてエロゲ?」


以上、夕食後の自室でのやり取り。



翌日の朝。いつも通り翼と談笑しながら登校し、階段を上り一年教室前廊下に出ると、妙な雰囲気ができているのに気付く。

何やら俺達のクラス……1年A組前に人混みができており、辺りにはどうにも浮ついたような空気が漂っている。


「何だ、朝っぱらからこの人混みは?」


「さてな……とりあえず言えることは、これじゃあ教室には入れないってことだ」


「だな。何かあったのかもしれないし、少し様子を見ようぜ」


耳障りなざわめきに顔を顰めながら、俺達はとりあえず様子を見ることに。

聞こえてくるは、女子の黄色い声に男子の興奮したかのような荒い声。

どうやら誰か有名な人物がA組にいるらしく、この人混みはその人物を一目見ようと、生徒が集まったモノのようだ。

例えるなら差し詰め、アイドルの出待ち、といった所か。全く持って鬱陶しい。


「だぁあ!人が多すぎて誰が来ているのか全く見えん!」


翼はそう言うと、人混みを掻き分けて前へと進んでいく。俺もその後をついていくことにするが、何故かな……先程から妙に嫌な予感がする……

なんというか、蟻地獄に知らず知らずの内に足を踏み入れてしまっているかのような……

そして、俺のこういう予感は高確率であたる……

昔よく経験した感覚に辟易しながら、人混みをスルスルと躱わし歩いていくと、ふと周りからの声が耳に入ってくる。


「よっしゃ、朝から鳳副会長見れた!今日はいいことありそうだ!」

「やっぱり綺麗よね〜鳳先輩」

「あぁ、咲夜様……素敵……」

「でも何で一年教室にいるんだろ……」


何?咲夜が此処にいるだと…?この嫌な予感はまさか……!


足を止め一度そこまで考えるが、頭を振り冷静に考え直す。

……いやいや待て待て落ち着こうか。

例え咲夜がいたとしても、何も俺に用事があるとは限らんだろう。

昨日あれほど突き放し、一片とはいえ俺の本質を見せたのだ。しばらくは自分から俺と関わりを持とうとはしない筈だ。ならば恐らく、舞関係の話でお嬢に用事があるといった所か。うん、妥当な線だ。なら驚く必要はない、俺は堂々としていればいいのだ。

そう結論付け、再び人混みの中を進もうとしたところで、更に色々な声が耳に入ってくる。入ってきてしまう。


「なんでも煉夜って生徒に用事があるらしいぞ」

「煉夜って……あの白髪悪人面の不良?」

「そう、その白髪の白神よ。目付きが悪くて遅刻、サボリの常習犯。転校してきて一週間ちょっとしか経ってないけど、いろいろな噂のある人よ」

「なんでも、高宮さんと鳳さんを誑かして、それだけじゃ飽きたらず鳳副会長にまで手を出したとんでもない誑しらしいよ」

「何それ、最低ぇー」

「いや、俺が聞いた話だとそれはフェイクで、実は桜木にD組の国重、E組の柊に沢白副会長まで喰っちまった男色だと…」

「何?BL?BL?キャーー!」




…………




「この俺も哀しみを背負うことができたわ……」


「な、何ぃ!実体を空に消し去っただとぅ!?」


「これはまさか……無○転生!!」


一瞬で人混みの最後尾まで移動した俺に驚愕する翼と生徒A。ありがとう、ノッてくれて。

つーか何あの俺の評価……目付き悪ぃのと不良ってのは否定せんが、誑しで男色は酷すぎるだろ……流石の俺も泣くぞ……


「俺は至ってノーマルだッ!!」

「…………うるさい」

「すんません!!」


歩いていた長い銀髪の女子生徒に、すれ違いざまに怒られちまった……どうでもいいが、学生時の俺はテンションがおかしい気が……


「おやおや、何の騒ぎですかコレは」


そこへ、思考している俺の隣へ括った長い青髪を揺らしながらやってきたのは、E組が誇る天才児、柊渚。何が天才なのかは付き合いの短い俺にはわからんが……まぁいい

とりあえず軽く手を上げ挨拶する。


「よぅ」


「やぁ、白髪。おはようございます」


向こうも微笑みながら挨拶を返してくる。

相変わらずイントネーションがおかしい気がするが何、もう気にするまい。


「ところでこの騒ぎはいったい?」


「あぁ、鳳副会長が来ているみたいでな」


「あぁ、なるほど……それでこんな人がウジャウジャいやがるんですか。相変わらずの人気ですねぇ」


そう呟いてやれやれと肩を竦める渚。

こいつは相変わらず口調が丁寧なのか汚いのかわからん。


「それで、お前は何をしていたんですか?」


「あぁ、それはだな……」


何と説明すればよいものか……まぁ、適当に答えておこうか。

そう考え、口を開こうとした瞬間。


「煉夜〜!鳳先輩が呼んでるみたいだぞ〜!」


手をこっちにブンブンと振りながら、いつの間にか最前列にいる(バカ)の声が廊下に響き渡る。

それと同時に一斉に此方に向く数多の視線。


「………ハァ」


「あらら」


俺はこの面倒事になりそうな事態に、眉間を押さえながら溜め息を吐き、渚は口元に手を当て微笑んでいる。

絶対こいつ楽しんでるだろ……


「どうやらボクはお邪魔みたいなので失礼しますね、白髪」


そう言って颯爽と身を翻す渚。

正直そんなエアリーディングは不要だったが、あいつがここにいてもしょうがないので、手を気怠げにヒラヒラと振って見送る。


そんなことをしていると、突如人垣が左右に割れる。

その中央にできた道の奥から姿を現したのは、予想通りというか情報通りというか……昨日突き放した我が姉貴分……咲夜だった。


「煉夜……」


「……これはこれは副会長。俺のようなしがない不良にいったいどのような御用で?」


遠すぎず、それでいて近すぎない距離まで歩み寄ってくる咲夜。それに対し俺は、先日の昼休みに赤髪眼鏡にしたように、わざとらしいほど恭しい態度で対応する。

その馬鹿にしたような態度に、周りのギャラリーがムッとするが無視。なにも俺とて馬鹿にするつもりでこのような態度を取ったわけではない。

これは謂わば意思表示。

俺とあんたはもう無関係だということを、遠回しに咲夜に示しているのだ。


「少し、時間をくれませんか?」


「何故?」


「話があります」


しかし咲夜はそんな俺の態度を無視し、目を真っ直ぐ見据えながら話を進めてくる。そこには昨日のような弱々しさは感じられない。

寧ろ、今度は絶対に退かないという強い意志が、目を通じて俺に伝わってくる。


少し甘く見ていたか……


胸中で面倒なことになりそうだと舌打ちをしながら独りごちり、俺は態度を改め答える。


「だが断r……」

「却下です」


見事なまでの即答。ネタの一つも満足に言わせてくれんのか…

俺は溜め息を一つ吐くと少しばかり気を引き締め、口元にはいつも通りの微笑を貼り付け答える。


「つってもねぇ、もうすぐホームルーム始まる時間だが?」


「今日の放課後にでも話し合う約束をしてもらえれば十分です」


「最近忙しいんじゃねぇのかよ副会長」


「仕事はひと段落付いたので、それぐらいの時間ぐらいは作れます」


「だったらその時間を休養だか何だかに使った方が有意義だと思うがね。そうだな、赤髪眼鏡でも誘って遊びに行ったらどうだ?」


「そんなことより私には此方の方が重要です」


そんなことって……道は随分と困難なようだぞ、赤髪眼鏡よ……


バッサリと提案を斬り捨てる咲夜に、苦笑を隠しきれない俺。


しっかし、向こうは退く気無ぇみたいだな。さてどうしようか……いや、俺が応じればさっさと済む話なんだろうが……ただ、恐らくするであろう昨日と同じ内容の話を連日でしたくねぇし、何よりこの人、舞と雅也を連れてきそうだからおっかねぇ。

あぁ、面倒になってきた。

ならどうするか?決まっている


「戦略的撤退!」


「逃がすとお思いですか?」


どうやら思考を読まれていたらしく、身を翻し駆けだした俺の背後の道が、突如現れた閉じられた豪奢な門により塞がれる。


詠唱破棄だと……!?流石は鳳次期宗主といった所か、味な真似を……


毒づきながら目の前に現れた門を見据える。意表を突かれたが、この程度の魔力密度なら、多少纏いの密度を上げた蹴りで破壊可能だろう。

そう判断し、足を振り上げ門を蹴破ろうとするが……


「ッ!」


ザワリ、と背筋に悪寒が走る。

あれを破ったらマズいと、瞬時に本能と今までの経験で悟り、俺は後方に跳び退く。

そして思い出す。この魔法の正体を。


「『識別の門』か……」


「よくわかりましたね」


「……ま、伊達に世界回っちゃいないってことよ」


『識別の門』

光の中級魔法で、元々は籠城戦などに使用されていた魔法。使用者が味方と判断した者はこの門を通れるが、それ以外の存在がこの門を通ったり破壊しようとした瞬間、門から光が放たれ、敵を一掃する…だったか。

門の魔力密度の薄さはフェイクで、油断して通った、または壊した敵の力量を自動で把握し、その敵に見合った力を使用者から直接供給して敵に放つ、防壁魔法に見せかけた迎撃罠魔法。

確か中級の中でも上位に食い込む魔法の筈だが、それを詠唱破棄か…すげぇな


「つーかこんな物騒なモン使うなよ……」


「お前が逃げるからでしょう。さて、これで逃げ場はもうありませんよ?」


「逃げ場は無い?それはどうかな!」


そう言うと、俺は瞬時に周囲を見回す。

前方、咲夜with野次馬諸君

後方、識別の門

右方、壁

左方、窓(四階)


………


「……どうやらここまでのようだ…」


呟きながらゆっくりと窓際へと移動する。

「早ぇよ!?」というツッコミが聞こえた気がするが気のせいだろう。


「なら話合いの約束を……」

「だが!俺はお前の魔法では捕まらん……!」


俺は少し嬉しそうな、それでいて油断無くこちらに近付いてくる咲夜の言葉を遮り、指をビシィッと指すと、俺は廊下の窓を全開にする。そして


「サラバダー!!」


窓の外へと身を踊らせた。


『!?』


背後で野次馬連中が驚愕の声や悲鳴を上げているのが聞こえてくる。

まぁ、四階から魔法が使えない奴が飛び降りたんだ。当然っちゃ当然の反応だな。


「煉夜!」


急速に迫ってくる地面を見ながら浮遊感を楽しんでいると、咲夜が恐らくは保護魔法だか何だかの穏やかな風を放ってくる。

しかし俺は、纏いの密度を上げそれを跳ね除ける。いらぬ気遣いだ。

地面が更に近づき、野次馬連中の悲鳴が一層強くなる。それを気にせず俺は空中で体を捻り体勢を直すと、そのまま地面に軽々と着地する。

足に少しの衝撃が走るが、全く問題無い。つーか、気や魔力を使わなくても50メートル程の高さなら普通に着地できるので、この程度はまだまだ楽勝の範囲だ。

先程まで騒いでいた野次馬共は静まり返っている。

その事に少しだけ気分を良くすると、俺はそのままどうせなら授業をサボろうかと考えながら、着地した中庭から悠々と歩きだす。

多少目立ってしまったが、今からこの場を離れれば問題ないだろう。

しかし、不意に緩やかで清涼な風を肌に感じ、足を止める。

その風が普通の風なら特に気にしなかっただろう。

しかし、その風は微かだが魔力を帯びていた。


この風は……


この風の感覚に覚えがあった俺は、思い出そうと一瞬思考する。

その間に風は、緩やかに渦を巻きながら集っていき、徐々に人の輪郭を形成していく。

そして、俺が思い出すと同時に風は凪ぎ、その場には咲夜が現れていた。


『ゼピュロスの風』

魔力で自分の意識と風を同調させ、その風で広範囲に詮索、移動することのできる風属性上級魔法。ただ、使用して詮索中は無防備になるという欠点も存在する。

そういや昨日使っていたな、忘れてた。


「何故逃げるのですか、煉夜?」


ノリで……なんて言える訳ねぇよな……

微笑みながら問う咲夜。その笑みは花が咲くように可憐で、見惚れるほどに美しい。

……しかし俺にはわかる。

その微笑が引き攣っていることを……

感情を抑え切れてねぇな、大分御怒りのご様子で……


「何故あんたは追いかけてくる、副会長?」


だが極めて冷静に質問を返す。

これ以上の恐ろしい笑顔を見てきた俺にとってこの程度、恐るるに足らんわ!!


「お前が逃げるからです」


小首を傾げながらにこやかに応える。

しかし、身に纏う空気は冷ややかだ。

美少女が小首を傾げる動作ってのは可愛いらしいモノじゃなかったのか?薄ら寒い何かを感じるんだが……

ドラゴンがブチ切れ一歩手前の時のような寒気を感じながら、俺は溜め息混じりに言う。


「……あのなぁ、あんた自分の人望とか容姿とか理解してんのかよ?」


俺の問いに今度は素で首を傾げる咲夜。

あら可愛い……じゃなくて、やっぱり自覚無ぇのかよ……

咲夜の表情に、深い溜め息を一つ落とす。

思い出すは昨日のリアル鬼ごっこ。赤髪眼鏡を筆頭に俺+αを殺りにきた暴徒の集団。

お嬢が見ず知らずの人間を悲しげな表情一つで暴徒に変えたように、咲夜もそのようなカリスマを持つらしい。

抱きついてきてアレだ。下手をしたらどうなるか想像も付かん……いや、それはそれで面白そう……

おっと、また悪い癖が出るところだった


「まぁ、なんだっていいがな」


勝手に自己完結し、また溜め息を一つ。

……どうでもいいが窓からこっちを見てる野次馬共の視線が鬱陶しいな……

まぁ、いきなり4階から飛び降りる阿呆と、みんなの副会長様が一緒にいてこんな空気漂わせてれば嫌でも目立つか……


「煉夜、お前は誤解しているようですが、私は戻って来いなどと説得するつもりはありません」


周囲の視線に多少嫌気を差していると、咲夜が先程とは打って変わって真顔で語り掛けてくる。


「ただ今一度、私と話し合いの機会を設けてください。お願いします」


そう言って真摯に頭を下げる咲夜。

その態度、言動、目から、彼女がどこまでも真剣なのだと理解できる。

だがその瞬間、周囲からの視線全てが槍の如き鋭い殺気を帯びる。

その視線からは、「てめぇ如きが副会長に何させてんだよ、あぁ!?」みたいなどす黒い感情を感じる。

ふむ、このままだと俺は、間違い無く連中に吊されるのではなかろうか?主に赤髪眼鏡とか舞とか赤髪眼鏡とか赤髪眼鏡とかに……

そんな心配をしていると、ふと、ビシリッ、と何かに亀裂の入るような音が聞こえてくる。

何気なくそちらに視線を向けてみると、三階から笑顔で俺を射殺すかのように睨むという荒技をこなしている赤髪眼鏡の姿が……

手を添えられた窓には蜘蛛の巣状の罅が入っており、どうやら先程の音はこれが原因らしい。


……この学院の窓って強化ガラスじゃなかったっけか?


本格的に感じてきた身の危険に冷や汗が背中を伝う。


「煉夜……」


顔を挙げ、尚も俺に語り掛けようとする咲夜。


そこへ


キーンコーンカーンコーン


予鈴のチャイムが鳴り響いた。


「お、予鈴のチャイムだな。それじゃあな、副会長さん」


それを逃げ口に、俺は咲夜の横を素通りする。

野次馬達もそのチャイムを聞いて、名残惜しそうだが窓際から教室へゾロゾロと戻っていった。

流石は名門。案外真面目な奴が多い。

しかし、背後の人影は動く気配は無い。


暗い空気がその場に漂い始める。


……はぁ、しゃあねぇなぁ


「……放課後に屋上」


「え?」


「暇潰し程度には付き合ってやる」


振り返らずに気怠げに、傲慢に言う。

捻くれ者の俺にはこんな言い方しかできないが許してもらいたい。


「ハイ!では放課後に屋上で」


すると、物悲しい雰囲気が払拭され、周りの空気が明るくなったように感じる。

そして、彼女は嬉しそうな、それでいて何か覚悟を決めたような雰囲気のまま、魔法でその場を去っていった。

よく考えてみりゃあ、あの人には昔から恩義があったからな……流石にそれを仇では返したくない。

などと内心で言い訳のようなことを考え、一人苦笑する。

それにしても、説得じゃなく、話し合いねぇ……


「さて、どうなることやら」


そう一人ごちて、俺はサボり場所を求めてその場から去った。

今回は…北斗の拳ネタが多いですね。作者が北斗の拳が好きなのだからしょうがないのですが……

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