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5/12

九十秒だけ、眠れ


赤い光は、最初、細い糸みたいに見えた。


壁の継ぎ目が開いた暗がりの奥で、一本だけ静かに灯っている。

それなのに、地下室の誰よりも強くこちらを見ていた。


> `DEFENSE SUBROUTINE PARTIAL WAKE`


白い文字が浮かぶ。


意味は全部分からない。

でも、身体が先に嫌がった。


あれは灯りじゃない。

こっちを照らすための光じゃない。

こっちを見つけるための光だ。


「動くな」


ドルフが低く言った。


誰に向けたのか分からない声だった。

自分に言い聞かせているようにも聞こえた。


壁の隙間が、もう少しだけ開く。


暗がりの中から現れたのは、腕だった。


人の腕ではない。

関節の少ない黒い筒。先端に、赤い線を宿した細い目がひとつだけついている。金属に見えるのに、長い眠りの埃も錆もほとんどなかった。ずっとそこで待っていたものの顔だった。


ユノが息を呑む。

札を持つ手が、はっきり震えた。


「……何ですか、あれ」


誰も答えなかった。

答えられる人間が、ここにはいなかった。


そのとき、石段の上から足音がした。


「奥様!」


戻ってきたのはガレスだった。

雨色の外套の裾に夜露をつけ、短槍を握ったまま地下へ駆け下りてくる。短く刈った栗色の髪が汗で額に張りつき、左の眉の古い傷が薄い灯りの下でいっそう濃く見えた。黙って立っているだけで夜道に慣れている男だったが、今はその慣れより先に、急いで戻ってきた息の荒さがあった。


「ミナは村まで下ろしました。見回り番に預けています」


それを聞いて、リリエルの胸のどこかが少しだけ緩んだ。

あの子は無事だ。


ガレスは地下室の様子を一目で見た。

中央の板。壁の溝。開きかけた隙間。その奥の赤い光。


立ち尽くしたのは一瞬だけだった。

すぐに槍を構え直す。


「……何をすればいい」


いい問いだ、とリリエルは思った。

何なのかではなく、何をすればいいか。今必要なのは、それだけだった。


だが、答えるより先に赤い光が動いた。


細い線が、ドルフの肩へ滑る。

次にユノ。

セレス。

リリエル。

ガレス。


ひとりずつ、ゆっくり止まる。


選んでいる。


「伏せろ!」


ドルフが叫んだ。


次の瞬間、赤い線の先から、音もなく白い閃きが走った。


板の横の棚が斜めに裂ける。

硬いものが一瞬で熱を持って砕ける音。並んでいた魔石のうち二つが床に跳ね、ひとつはそこでぱきりと割れた。遅れて、焦げた匂いが立つ。


ユノが後ずさる。

母がリリエルの肩を引く。

ガレスが一歩前へ出て、槍の柄で赤い筒を払った。


金属がぶつかる鈍い音。


手応えはあった。

だが浅い。赤い目は一瞬揺れただけで、すぐまたこちらへ戻る。


「硬ぇな」


ドルフが吐き捨てた。


視界の奥で、白い文字がせわしなく流れる。


> `MANUAL OVERRIDE REQUIRED`

> `DEFENSE TARGETING ACTIVE`

> `FALLBACK AUTHORIZATION AVAILABLE`


待っている。


またその文が出る。


> `Fallback authorization waiting...`


喉の奥が熱くなる。


何を待っているのか。

誰を待っているのか。

分からないのに、そこだけ妙に近い。


そして、その近さに、少しだけ心当たりがあった。


さっき見た、白い天井。

光る薄い面。

長い指。

知らないはずなのに、指先だけが知っている作業。


言葉ではなく、口の形だけが喉に残る。


「リリエル」


母の声が飛ぶ。


「できることは」


短い問いだった。

でも、それで十分だった。


説明ではなく、手順。


リリエルは板を見た。

白い文字の列。

赤く点滅する警告。

右端に、ほかより少し暗い欄。


そこへ触れればいいと、指先が知っていた。


怖い。

でも、止まるより先に手が動いた。


「待て!」


ドルフの声を背中で聞きながら、リリエルは板へ走る。


ユノの祈りが重なった。


「天の火よ、夜を裂く清き輪となりて、

我らを外つものより守り給え。

乱れしものを境の外へ退け、

今ここに、ひとときの拒みを置け——!」


祈り札が白く燃え、薄い光の膜がリリエルと赤い目のあいだへ滑り込む。完全ではない。だが、一瞬だけ筒の先が軋むように明滅した。


その一瞬で十分だった。


リリエルの指が、板の暗い欄に触れる。


冷たい。

その冷たさの下に、別の感触がある。


そして、喉が勝手に動いた。


「保守権限。暫定承認。防衛停止」


知らない言葉だった。

自分で喋っているのに、自分のものではない音だった。途中で喉がひっかかる。それでも止まれない。


赤い目が、ぴたりと止まる。


板の上に文字。


> `AUTH: PARTIAL MATCH`

> `FALLBACK MAINTENANCE PRIVILEGE ACCEPTED`

> `DEFENSE SUBROUTINE: SUSPEND / 90 SEC`


九十秒。


意味が落ちてきた瞬間、リリエルは叫んだ。


「止まった! でも九十秒だけ!」


ガレスが即座に動いた。

一歩踏み込み、槍の石突で赤い筒を強く打つ。今度は抵抗が違う。さっきより鈍い。眠りかけたみたいに動きが遅い。


ドルフも横から短鉈を叩き込む。

火花。低い音。


筒の先端が斜めに歪み、赤い線が乱れて壁の方へ流れた。


ユノがその隙に札を二枚投げる。


「天の火よ、散らず、揺らがず、

今ここに留まりて、

眠りかけたものを縫い留めよ——!」


紙札は金属に張りつき、淡い光でそこだけを縫い留めた。


「今のうちに!」


母が言う。


リリエルは板にかじりついた。

九十秒しかない。


表示の下に、新しい欄が開いている。


> `EMERGENCY MAINTENANCE PATH`

> `Northern auxiliary line degraded`

> `Replace cell / Reset flow / Confirm route`


三つ。


替える。

流れを戻す。

経路を確定する。


「ドルフ!」


リリエルは壁の棚を指さした。


「左から三番目の、ひびの入った石! それを抜いて、右端の生きてる石と入れ替えて!」


「これか!」


「それ!」


ドルフはもう動いていた。

こういうとき、この人は速い。分からない言葉でも、工房の仕事に置き換わった瞬間に迷いが消える。


ガレスが赤い筒を槍で押さえつける。

広い肩で踏ん張ると、狭い地下室がさらに狭く見えた。傷の走る眉の下で、目だけがやけに静かだった。


母は板の脇を見ていた。


「ここ。細い欄が減っているわ」


リリエルも見た。

北へ向かう流れの量みたいなものが、脈打つたびに細くなる。


「そこ、右に。もっと」


母の細い指が、板の脇の溝を横へ滑らせる。


反応した。


北側の赤い点滅が、ひとつだけ白く戻る。


上の方で、かすかに灯りが点く音がした気がした。


「入れ替えた!」


ドルフが言う。


板の表示が変わる。


> `CELL REPLACED`

> `FLOW RESET PARTIAL`

> `ROUTE CONFIRMATION PENDING`


最後が残っている。


リリエルは板の線を見た。

村の見取り図に似た線。そのうち北へ向かう一本だけが、途中でわずかに揺れている。


祠から北端へ向かう途中。

丘の中腹。


「……そこ」


喉の奥に、言葉の形が落ちてきた。


「北側補助灯。経路修正。整列」


祈りではない。

願いでもない。

剥き出しの命令だった。


板の上の線が、ほんの少しまっすぐになる。


白い点。

赤い点。

白い点。

白い点。

白い点。


外で、今度ははっきり分かる音がした。


ぱちり。

ひとつ。

またひとつ。


北の補助灯が、順番に戻っていく。


同時に、赤い筒ががくりと力を失った。


ユノの札の光がふっと弱まる。

ドルフが追撃すると、今度は抵抗がなく、赤い筒は壁の隙間へ半ば落ち込むように沈んだ。


板の表示が変わる。


> `NORTHERN AUXILIARY CLUSTER STABLE`

> `DEFENSE SUBROUTINE RETURNING TO SLEEP`


誰も、すぐには喋らなかった。


狭い地下室に、五人分の荒い息だけが残る。

リリエルも、いつのまにか肩が小刻みに揺れていた。


母が最初に息を吐いた。


「……保ったのね」


確認するような声だった。


「今はな」


ドルフが答える。

その言い方で、完全には終わっていないことが分かる。


ユノは札を持ったまま、赤い筒が沈んだ壁の隙間を見ていた。顔色は悪い。だが真っ白ではない。崩れたあとに、別の足場を探している顔だった。


ガレスは槍を下ろし、短く息を吐いた。


「……さっきのは何だった」


傷のある眉の下で、目だけがまっすぐリリエルを見る。怖がってはいない。だが、警戒はしている。初めて見るものを、初めて見るまま受け止める兵士の目だった。


リリエルは答えられなかった。


代わりに、板の上へまた新しい文字が出た。


> `MAINTENANCE LOG AVAILABLE`

> `PRIMARY OPERATOR STATUS: LOST`

> `FALLBACK USER STATUS: PARTIAL`

> `RETURN WITH FULL AUTHORIZATION`


失われた。

本来ここを管理するはずだった誰かは、もういない。


だから仕組みは代わりを待っていた。

待っていて、リリエルが来た。

けれどリリエルは途中までしか通らない。


「まだある」


リリエルは小さく言った。


「何が」


母が聞く。


リリエルは板を見たまま答えた。


「この部屋だけじゃない。わたし、まだ途中までしか入れてない」


ドルフが顔をしかめる。


「今日は潜るな」


それは強い声だった。

反対の余地を残さない声。


「灯りは今、持ち直した。上はもう夜だ。灰牙の血も流れてる。これ以上やるなら、帰り道ごと危なくなる」


正しい、とリリエルは思った。

正しいからこそ悔しかった。


母がノートを開く。


「今日はここまでにしましょう」


そう言ってから、板を見て付け加える。


「でも、次は準備して来る。人も、道具も、紙も」


ガレスが低く言う。


「槍もいる」


ドルフが鼻を鳴らす。


「今の壁の腕みてえなのが、もう一つあったら面倒だ」


ユノは少し遅れて言った。


「……札も、持ってきます」


その声は少しだけ変わっていた。

祈りを捧げるためではなく、使える手順として持ってくる声だった。


---


地上へ戻る階段は、下りるときより長く感じた。


上へ出ると、夜はもう村の輪郭を半分呑んでいた。

だが北の補助灯は生きている。さっきまで落ちていた場所に、細い青白い列が戻っている。


それだけで終わるなら、まだ良かった。


祠の前には、人がいた。


父だった。


エドガルは、いつもより厚い上着を引っかけただけで丘まで来たらしく、襟元が少し乱れていた。日に焼けた顔の疲れが、今夜は隠れていない。困ったときほど少し下がる眉尻が、今は下がる前で止まっていた。父の後ろには、見回り番が二人。さらにその下の坂には、灯りを持った村人たちまで集まりかけている。


誰も大声では騒いでいない。

でも、皆、祠を見る。

その次に、リリエルを見る。


見つかってしまった、とリリエルは思った。


地下の部屋だけではない。

そこへ入って、戻ってきた自分も。


「戻ったか」


父の一言は短かった。

怒っているようにも、安心しているようにも聞こえる。たぶん、その両方だった。


母が先に言った。


「北の補助灯は一度戻しました。今夜のあいだは保ちます」


「今夜のあいだは、か」


父の声が低くなる。

それを聞いて、後ろの村人たちのざわめきがさらに静まった。


今夜は大丈夫。

でも明日は分からない。


その意味は、誰にでも分かる。


父の視線が、祠の開いた床石を通り過ぎて、リリエルに落ちる。


重かった。


広場の村人たちの視線とは違う。

逃げないかわりに、逸らしてくれもしない視線だった。


「詳しい話は屋敷で聞く」


それだけ言って、父はガレスを見る。


「お前は先に下りて、村へ近づく奴を止めろ。今夜はここへ入れさせるな」


「承知しました」


ガレスが即座に動く。

その横でドルフが工具箱を持ち上げる。


「おっさんどもに覗かせたら、変に触るな」


「分かってる」


父は短く返した。


それから、ようやくリリエルを見る。


「お前は、一人で行ったのか」


「……違う」


リリエルは首を振った。


「みんなで」


父の眉がわずかに動く。


その返答が気に入ったのか、そうでないのかは分からなかった。

ただ、そのあとで父は叱らなかった。


叱るより先に、考えなければならないことが多すぎたのだろう。


---


屋敷の書斎へ戻るころには、夜はすっかり深くなっていた。


父は椅子へ座る前に言った。


「最初から話せ」


応接間ではなく書斎なのが、余計につらかった。

ここは父が領主として話を聞く部屋だ。


ドルフが先に口を開く。


「祠が開いた。下に部屋があった。灯りは全部つながってた。北の補助灯が落ちたのも、そこで詰まりが起きてたからだ」


言葉は荒いが、順番は守っている。

工房の職人は説明が下手でも、嘘はつかない。


ユノが低い声で続けた。


「祈り場では、ありませんでした」


その一言がいちばん重かった。


父の顔色が変わる。


「では何だ」


ユノは答えられなかった。

代わりに、リリエルの方を見る。


その視線の中に、申し訳なさがあった。

自分では説明できないから、八歳の子どもに預ける。そのことを、彼は恥じているのだと分かった。


父の視線もこちらへ来る。


「リリエル」


呼ばれた瞬間、急に足元が頼りなくなった。

地下の板の前でも、赤い目の前でも、こんなふうにはならなかった。父に呼ばれるだけで、八歳の自分に戻る。


「お前は、何を見た」


何を、と聞かれても困る。

板。文字。地下の部屋。

でも、そんなことを言っているのではないと分かった。


父は続けた。


「お前だけが分かるものがあるんだな」


嘘は、つけなかった。


リリエルは小さく頷いた。


父の目が、ほんの少しだけ閉じた。

怒っているのか、疲れたのか、祈っているのか分からない顔だった。


「どうして黙っていた」


その声は静かだった。

静かだから、余計につらい。


「……言っても、たぶん分からないから」


「言わなければ、なお分からん」


「分かってる」


思ったより強い声が出た。

自分でも驚いたし、父も驚いた顔をした。


「分かってる。でも……言葉がないの」


喉が熱くなった。

泣きたいわけではない。けれど、泣く前の体に似ていた。


「見えるの。知らない文字が。分かるの。どう触ればいいか。でも、どうして分かるのかは分からない。だから、うまく言えない」


部屋が静かになった。

ランプの芯が小さく鳴く音だけがした。


父はしばらく何も言わなかった。

やがて、ゆっくり息を吐く。


「それで、危ない場所に入った」


「入らないと灯りが落ちた」


リリエルは言った。

言ったあとで、自分が父に言い返していることに気づいた。止められなかった。


「入らなかったら、もっと落ちた」


今度こそ父は怒ると思った。


けれど怒ったのは父ではなく、母だった。


「二人とも、そこまで」


声は高くなかった。

高くないのに、空気だけがぴたりと止まる。


「お父様は、あなたが死ぬかもしれなかったことに怒っているの。あなたは、入らなければ村が危なかったと思っている。どちらも本当でしょう」


真ん中に線を引く声だった。


父は机の縁に手を置いたまま、目を閉じた。

その横顔は急に年を取って見えた。困ったときに少し下がる眉尻が、今度はきちんと下がっていた。


「……そうだ」


短く言う。


「そうだ。私は、お前を危ない場所へやりたくない」


その言葉を聞いた瞬間、リリエルは急に怒れなくなった。


父は領主だから止めるのではない。

父だから止めるのだ。


「でも」


それでも、口は止まらなかった。


「でも、わたしにしか読めないなら、どうするの」


誰もすぐには答えなかった。


その沈黙のあと、それまで壁際で黙っていたガレスが口を開いた。


「一人で行かせなければいい」


全員が振り向く。


ガレスは入り口の近くに立ったまま、槍を壁へ預けていた。若いが、こういう部屋で余計な遠慮をしない男だった。


一度だけ父の顔色を見た。

それでも、黙ってはいられなかったらしい。


「読めるのがお嬢様だけなら、読む役はお嬢様にしかできない。なら、護る役を別につければいい」


父がガレスを見る。

怒りもしないし褒めもしない。ただ、本気で考え始めた人の顔になる。


「お前は簡単に言うな」


「簡単ではありません」


ガレスは即答した。


「でも今夜、それで北の補助灯は持ち直した」


正しい。

それが正しいとき、人は反論しにくい。


ドルフが鼻を鳴らす。


「俺も同感だ。あのお嬢ちゃんを地下に入れたくねえ気持ちは分かるが、入れねえと直らねえもんもある」


ユノも、少し遅れて頷いた。


「……私も、そう思います」


父はしばらく黙ったまま、机の上の地図を見ていた。

やがて、ゆっくりと椅子へ座る。


「分かった」


その一言で、部屋の空気が少し変わる。


「好きにしろ、という意味ではない。今後は勝手に行くな。潜るなら、私の許可を取れ。人をつける。時間を決める。準備なしでは二度と入らせん」


それは許可ではなく、条件だった。

でも条件が出たということは、完全な否定ではない。


リリエルは小さく頷いた。


「はい」


父は次に母を見る。


「記録はお前がまとめろ。ドルフさんは必要な道具を書き出してください。ユノ殿は、丘の祠について神殿に残っている古い記録を探れますか」


「探します」


ユノは今度は迷わなかった。


「ガレス。明日から北側の見回りを倍にしろ。祠へ近づく者がいたら止めろ。ただし、噂を広げるな」


「承知しました」


父は最後にリリエルを見た。


「お前は、今夜は寝ろ」


その言葉が、急に子ども扱いみたいで少し腹が立った。

でも、たぶん本当に眠った方がいい顔をしているのだろう。母が何も言わないのが、その証拠だった。


会議みたいなものはそこで終わった。


部屋を出るとき、母がリリエルに紙を一枚渡した。


帳簿の切れ端だった。

そこに整った字で短く書いてある。


見た順番を全部書きなさい。忘れる前に。


慰めではない。

母らしかった。


リリエルはその紙を見て、少しだけ笑いそうになった。

少しだけ、だけれど。


その夜、窓の外の北の灯りは静かに点いていた。


でも、もう昨日までの灯りではなかった。

その下に部屋があることを知っている。

その奥で赤い目が眠ることも知っている。


そして何より、今夜から、自分がそこへ入る側だと皆に知られた。


灯りの輪の外にあるものは、前より少しも遠くなっていない。

ただ、戻る道だけが少し狭くなった気がした。


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