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# 第八話:噂と拒絶
正午前。
三人は、城壁に囲まれた小さな町へ辿り着いた。
門番の視線が、必要以上に厳しい。
カイの肩の包帯が、妙に目立っていた。
◇
「目的は?」
「補給と宿泊だ」
レオンが答えると、門番はしばらく三人を観察した。
そして、低い声で言う。
「最近、この辺りで“魔眼”の噂が流れている」
空気が、凍った。
「関係ないなら、入れる。だが――」
門番の視線が、カイに止まる。
「問題を起こすな」
◇
町に入ってすぐ、違和感は確信へと変わった。
露店の会話が止まる。
視線が、背中に刺さる。
「……感じ悪いわね」
ミラが小さく呟いた。
「気にするな」
レオンはそう言ったが、歩調は早い。
◇
ギルド。
受付の女性は依頼書を確認すると、困った顔をした。
「申し訳ありません。現在、あなた方に回せる依頼はありません」
「昨日まではあったはずだろ?」
「……上からの指示です」
理由は、言わなかった。
だが、十分だった。
◇
宿も、同じだった。
空室はある。
それでも、断られる。
「客が困る」
「噂がある」
それだけで、扉は閉められた。
◇
夕方。
町外れの井戸のそばで、三人は立ち尽くしていた。
「この町じゃ、野営も禁止だって」
レオンが吐き捨てる。
「……誰かが、情報を流した」
ミラの声は、震えていた。
◇
カイは、黙っていた。
答えは、分かっている。
だが、言葉にすれば――
もう戻れない。
◇
その夜。
町の外。
焚き火も使えず、闇の中で身を寄せる。
遠く、松明の光が揺れている。
巡回兵だ。
「……追い出されたわね」
ミラが苦笑する。
「まだ生きてる」
レオンはそう言った。
◇
カイは、夜空を見上げた。
星は、冷たく瞬いている。
(噂は、武器になる)
誰かが、それを使っている。
仮面の組織。
あるいは――
◇
カイは、左眼に手を当てた。
守るために、隠してきた力。
だが今、それが――
仲間の居場所を、
一つずつ、奪っていく。
◇
沈黙の中、
三人は、同じ方向を見ていなかった。
それぞれが、
別の答えを、胸に抱えながら。




