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# 第八話:噂と拒絶


正午前。


三人は、城壁に囲まれた小さな町へ辿り着いた。


門番の視線が、必要以上に厳しい。


カイの肩の包帯が、妙に目立っていた。



「目的は?」


「補給と宿泊だ」


レオンが答えると、門番はしばらく三人を観察した。


そして、低い声で言う。


「最近、この辺りで“魔眼”の噂が流れている」


空気が、凍った。


「関係ないなら、入れる。だが――」


門番の視線が、カイに止まる。


「問題を起こすな」



町に入ってすぐ、違和感は確信へと変わった。


露店の会話が止まる。


視線が、背中に刺さる。


「……感じ悪いわね」


ミラが小さく呟いた。


「気にするな」


レオンはそう言ったが、歩調は早い。



ギルド。


受付の女性は依頼書を確認すると、困った顔をした。


「申し訳ありません。現在、あなた方に回せる依頼はありません」


「昨日まではあったはずだろ?」


「……上からの指示です」


理由は、言わなかった。


だが、十分だった。



宿も、同じだった。


空室はある。


それでも、断られる。


「客が困る」


「噂がある」


それだけで、扉は閉められた。



夕方。


町外れの井戸のそばで、三人は立ち尽くしていた。


「この町じゃ、野営も禁止だって」


レオンが吐き捨てる。


「……誰かが、情報を流した」


ミラの声は、震えていた。



カイは、黙っていた。


答えは、分かっている。


だが、言葉にすれば――


もう戻れない。



その夜。


町の外。


焚き火も使えず、闇の中で身を寄せる。


遠く、松明の光が揺れている。


巡回兵だ。


「……追い出されたわね」


ミラが苦笑する。


「まだ生きてる」


レオンはそう言った。



カイは、夜空を見上げた。


星は、冷たく瞬いている。


(噂は、武器になる)


誰かが、それを使っている。


仮面の組織。


あるいは――



カイは、左眼に手を当てた。


守るために、隠してきた力。


だが今、それが――


仲間の居場所を、


一つずつ、奪っていく。



沈黙の中、


三人は、同じ方向を見ていなかった。


それぞれが、


別の答えを、胸に抱えながら。


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