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# 第四十九話:完璧な未来の檻


赤い視界の奥で、



時間が枝分かれしていた。



血眼が映すのは、



一つの“答え”ではない。



無数の“完成形”。



――完璧な未来。



戦争は存在しない。



貧困も、



差別も、



喪失もない。



街には笑顔だけが並び、



誰も涙を流さない。



その中心に、



カイは立っていた。



英雄として。



救済者として。



「……これが」



バルザの声が、



優しく囁く。



「お前が望んだ世界だ」



カイは、



黙って周囲を見る。



救われた街。



生きている人々。



――失われなかった者たち。



胸が、



痛んだ。



「ここでは、



誰も選ばなくていい」



「苦しみは、



最初から存在しない」



完璧な未来の中で、



一人の少女が笑う。



――ミラ。



傷もなく、



恐怖もない。



彼女は、



カイに手を伸ばした。



「カイ。



もう戦わなくていい」



指先が、



触れかけた瞬間。



カイは、



立ち止まる。



――違和感。



完璧すぎる。



選択が、



一つも存在しない。



「……ミラ」



彼は、



静かに言った。



「ここでの君は、



選んだのか?」



ミラは、



一瞬だけ、



言葉を失う。



その沈黙が、



答えだった。



世界に、



ひびが入る。



笑顔が、



止まる。



「……そうだ」



カイは、



血眼を細めた。



「これは未来じゃない」



「完成した檻だ」



バルザの声が、



鋭くなる。



「それでも見ろ!」



「失わない世界を!」



無数の未来が、



一つに収束しようとする。



英雄。



平和。



永遠。



カイは、



ゆっくりと拳を握った。



「……俺は」



「失う痛みを知っている」



「だからこそ」



「選ぶ意味を、



捨てない」



血眼が、



未来そのものを切り裂く。



完璧な世界が、



崩れ始めた。



遠くで、



本物のミラの声が、



確かに響く。



「カイ!



戻って!」



砕ける未来の中で、



カイは一歩、



現実へ踏み出す。



残された選択は、



ただ一つ。



――次で、



全てが決まる。


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