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# 第四十九話:完璧な未来の檻
赤い視界の奥で、
◇
時間が枝分かれしていた。
◇
血眼が映すのは、
◇
一つの“答え”ではない。
◇
無数の“完成形”。
◇
――完璧な未来。
◇
戦争は存在しない。
◇
貧困も、
◇
差別も、
◇
喪失もない。
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街には笑顔だけが並び、
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誰も涙を流さない。
◇
その中心に、
◇
カイは立っていた。
◇
英雄として。
◇
救済者として。
◇
「……これが」
◇
バルザの声が、
◇
優しく囁く。
◇
「お前が望んだ世界だ」
◇
カイは、
◇
黙って周囲を見る。
◇
救われた街。
◇
生きている人々。
◇
――失われなかった者たち。
◇
胸が、
◇
痛んだ。
◇
「ここでは、
◇
誰も選ばなくていい」
◇
「苦しみは、
◇
最初から存在しない」
◇
完璧な未来の中で、
◇
一人の少女が笑う。
◇
――ミラ。
◇
傷もなく、
◇
恐怖もない。
◇
彼女は、
◇
カイに手を伸ばした。
◇
「カイ。
◇
もう戦わなくていい」
◇
指先が、
◇
触れかけた瞬間。
◇
カイは、
◇
立ち止まる。
◇
――違和感。
◇
完璧すぎる。
◇
選択が、
◇
一つも存在しない。
◇
「……ミラ」
◇
彼は、
◇
静かに言った。
◇
「ここでの君は、
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選んだのか?」
◇
ミラは、
◇
一瞬だけ、
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言葉を失う。
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その沈黙が、
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答えだった。
◇
世界に、
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ひびが入る。
◇
笑顔が、
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止まる。
◇
「……そうだ」
◇
カイは、
◇
血眼を細めた。
◇
「これは未来じゃない」
◇
「完成した檻だ」
◇
バルザの声が、
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鋭くなる。
◇
「それでも見ろ!」
◇
「失わない世界を!」
◇
無数の未来が、
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一つに収束しようとする。
◇
英雄。
◇
平和。
◇
永遠。
◇
カイは、
◇
ゆっくりと拳を握った。
◇
「……俺は」
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「失う痛みを知っている」
◇
「だからこそ」
◇
「選ぶ意味を、
◇
捨てない」
◇
血眼が、
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未来そのものを切り裂く。
◇
完璧な世界が、
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崩れ始めた。
◇
遠くで、
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本物のミラの声が、
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確かに響く。
◇
「カイ!
◇
戻って!」
◇
砕ける未来の中で、
◇
カイは一歩、
◇
現実へ踏み出す。
◇
残された選択は、
◇
ただ一つ。
◇
――次で、
◇
全てが決まる。




