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# 第四十八話:大陸規模の無選択
空が、
◇
一斉に沈黙した。
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太陽は昇っているはずなのに、
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光が届かない。
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大陸全域。
◇
都市も、
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村も、
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戦場も。
◇
すべてが、
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同じ瞬間に止まった。
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人々は、
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立ったまま、
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剣を振り上げたまま、
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涙を流したまま、
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動かなくなる。
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――選択が、消えた。
◇
「始めよう」
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バルザの声が、
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大陸そのものに響く。
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「痛みのない世界を」
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精神の檻の残骸の上で、
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カイは、その光景を“見ていた”。
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血眼が、
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無数の未来を映し出す。
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止まった世界。
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争いのない都市。
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笑顔だけが存在する人々。
◇
――だが。
◇
その未来のすべてに、
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“意志”が存在しない。
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「……これが、
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お前の理想か」
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カイの声は、
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低く震える。
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遠くで、
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ミラが目を覚ました。
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彼女の周囲だけ、
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時間が流れている。
◇
「カイ……?」
◇
彼女の胸の光が、
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血眼と共鳴する。
◇
バルザが、
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姿を現す。
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「選択は、
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苦しみを生む」
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「ならば、
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最初から与えなければいい」
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大陸を覆う巨大な魔法陣が、
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空に浮かび上がる。
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それは、
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無数の“目”の形をしていた。
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「血眼よ」
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バルザが叫ぶ。
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「見えているはずだ」
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「この世界が、
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どれほど美しいかを!」
◇
カイは、
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ゆっくり首を振る。
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「……確かに」
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「壊れない」
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「でも――」
◇
血眼が、
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さらに深く赤く染まる。
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「生きていない」
◇
その瞬間、
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カイの足元から、
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亀裂が走る。
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精神の檻の残骸が、
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完全に崩れ落ちた。
◇
ミラが、
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一歩、前に出る。
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「私も、
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見た」
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「痛みはある」
◇
「でも、
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選べる世界がいい」
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二人の意志が、
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重なる。
◇
だが、
◇
大陸全体を覆う魔法陣は、
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すでに完成していた。
◇
止まった世界の中で、
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動けるのは、
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ほんのわずか。
◇
最後の選択まで、
◇
残された時間は――
◇
あまりにも短い。




