044
# 第四十四話:精神の檻
塔の最深部。
◇
音が、消えていた。
◇
風も、
◇
時間も、
◇
存在しない。
◇
そこは、
◇
精神だけが囚われる場所。
◇
「歓迎しよう」
◇
バルザの声が、
◇
頭の内側に直接響く。
◇
カイは、
◇
ゆっくりと周囲を見渡した。
◇
無数の鎖。
◇
光で編まれた檻。
◇
「これが……
◇
精神領域か」
◇
ミラは、
◇
胸を押さえる。
◇
「息が……重い」
◇
「当然だ」
◇
バルザの姿が、
◇
霧の中から現れる。
◇
「ここでは、
◇
意志そのものが重力になる」
◇
「弱い心ほど、
◇
動けなくなる」
◇
鎖が、
◇
ミラの足に絡みつく。
◇
「ミラ!」
◇
カイは、
◇
一歩前に出る。
◇
その瞬間、
◇
無数の鎖がカイにも伸びた。
◇
「焦るな」
◇
バルザが嗤う。
◇
「君は特別だ。
◇
だからこそ、
◇
最も深く縛られる」
◇
カイは、
◇
目を閉じた。
◇
――思い出。
◇
失った街。
◇
泣き叫ぶ人々。
◇
自分が選び、
◇
背負った罪。
◇
鎖が、
◇
さらに重くなる。
◇
「……そうだ」
◇
カイが、
◇
静かに言った。
◇
「俺は、
◇
全部を背負うと決めた」
◇
ゆっくりと、
◇
目を開く。
◇
その瞳が、
◇
淡く輝いた。
◇
鎖が、
◇
きしみ始める。
◇
「なに……?」
◇
バルザの声が、
◇
初めて揺れた。
◇
「俺の意志は、
◇
重力じゃない」
◇
「――解放だ」
◇
鎖の一部が、
◇
音を立てて砕け散る。
◇
ミラが、
◇
顔を上げる。
◇
「カイ……!」
◇
だが、
◇
完全には壊れない。
◇
檻は、
◇
まだ閉じている。
◇
バルザが、
◇
低く告げた。
◇
「面白い……
◇
だが、
◇
これは序章にすぎない」
◇
精神の檻が、
◇
さらに深く閉じ、
◇
次なる試練が始まろうとしていた。




