035
# 第三十五話:離れる理由
夜は、
静かに崩れていた。
◇
焚き火の音だけが、
残っている。
◇
カイ、ミラ、
そして――
◇
レオン。
◇
三人の影が、
揺れていた。
◇
「……俺は、
◇
ここまでだ」
◇
最初に口を開いたのは、
レオンだった。
◇
ミラが、
息を呑む。
◇
「冗談、
◇
でしょ……?」
◇
レオンは、
笑わなかった。
◇
「英雄だった奴らが、
◇
仮面を被って、
◇
世界を壊す」
◇
「そんな話、
◇
信じられねぇ」
◇
拳が、
震える。
◇
「俺は、
◇
悪者を倒すために、
◇
剣を取った」
◇
「正義が、
◇
裏切るなら……」
◇
「俺は、
◇
戦えない」
◇
沈黙。
◇
焚き火が、
◇
はぜた。
◇
カイは、
目を閉じる。
◇
「……逃げるのか?」
◇
低い声。
◇
レオンは、
首を振った。
◇
「違う」
◇
「俺は、
◇
選ばない」
◇
「誰かを犠牲にする、
◇
選択を」
◇
ミラの手が、
◇
強く握られる。
◇
「……行かないで」
◇
声が、
◇
震える。
◇
レオンは、
背を向けた。
◇
「生きてりゃ、
◇
また会うさ」
◇
夜へ、
◇
歩き出す。
◇
残された二人。
◇
ミラの頬を、
◇
涙が伝う。
◇
カイは、
◇
彼女の前に立つ。
◇
「俺は、
◇
選ぶ」
◇
血のように赤い、
◇
瞳が開く。
◇
「憎まれても、
◇
間違っても」
◇
「それでも――
◇
前に進む」
◇
ミラは、
◇
涙を拭いた。
◇
「……なら」
◇
「私は、
◇
あなたの隣で、
◇
罪を背負う」
◇
二人の影が、
◇
再び、
◇
重なった。
◇
夜は、
◇
もう戻らない。




