034
# 第三十四話:救世の残骸
古い旗は、
血に濡れていた。
◇
地下都市。
◇
忘却区画。
◇
瓦礫の奥に、
封じられた記念堂がある。
◇
ミラは、
重い扉を押し開けた。
◇
中は、
静かすぎた。
◇
壁。
◇
描かれた壁画。
◇
仮面を外した人々。
◇
子どもを抱く者。
◇
怪我人を背負う者。
◇
その中央。
◇
刻まれた名。
◇
《救済同盟》
◇
かつての、
英雄たち。
◇
ミラの喉が、
鳴る。
◇
「……仮面の組織は、
◇
最初から、
◇
怪物じゃなかった」
◇
同時刻。
◇
地下鉄跡。
◇
カイは、
一人の老人と向き合う。
◇
白髪。
◇
隻眼。
◇
元・救済同盟の指導者。
◇
「世界は、
◇
選択に耐えられなかった」
◇
老人の声。
◇
「王が選び、
◇
英雄が救い、
◇
民は従った」
◇
「だが、
◇
救われなかった者は?」
◇
沈黙。
◇
「だから、
◇
我々は仮面を被った」
◇
「名を捨て、
◇
責任を捨て、
◇
希望を壊すために」
◇
カイは、
拳を握る。
◇
「それは、
◇
救いじゃない」
◇
「逃げだ」
◇
老人は、
笑った。
◇
「そうだ」
◇
「だから、
◇
若者に託す」
◇
懐から、
古い紋章。
◇
割れた仮面。
◇
「止めてくれ」
◇
「バルザを」
◇
「彼は、
◇
救えなかった子どもだ」
◇
遠くで。
◇
爆発音。
◇
ミラの通信。
◇
「カイ……
◇
彼らは、
◇
英雄だった」
◇
「……知ってる」
◇
カイの声は、
低い。
◇
「だからこそ――」
◇
「終わらせる」
◇
英雄の残骸が、
◇
再び、
◇
世界を壊す前に。




