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# 第三十二話:手を汚す者
煙が、
空気を裂いていた。
◇
地下都市。
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医療区画。
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仮設の結界。
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その内側で、
子どもたちが、
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震えていた。
◇
外。
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爆薬。
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カウントダウンの音。
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罠だった。
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仮面の組織は、
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わざとここを、
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“安全地帯”にした。
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ミラは、
結界の中心に立つ。
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魔力は、
もう限界だった。
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「解除すれば、
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爆発は止まる」
◇
通信水晶の声。
◇
「だが、
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結界も消える」
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沈黙。
◇
結界の外には、
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武装した人々。
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怒り。
◇
復讐。
◇
「中に、
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子どもがいるぞ!」
◇
「開けろ!」
◇
ミラの手が、
震える。
◇
解除すれば、
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人が、
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殺し合う。
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維持すれば、
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爆死する。
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二択。
◇
その時。
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カイが、
近づく。
◇
「俺が――」
◇
「選ぶ」
◇
ミラは、
首を振る。
◇
「違う」
◇
「これは、
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私の仕事よ」
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カイは、
言葉を失う。
◇
ミラは、
深く息を吸う。
◇
「守るためには――」
◇
「汚れるしかない」
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結界解除。
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光が、
砕ける。
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同時に。
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爆薬は、
沈黙した。
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外。
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武装した群衆が、
一瞬、
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躊躇する。
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だが――
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一人が、
刃を振るった。
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血。
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悲鳴。
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ミラは、
歯を食いしばる。
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治癒魔法。
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だが、
追いつかない。
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カイが、
前に出る。
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剣の腹。
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叩く。
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殺さない。
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倒す。
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数分後。
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静寂。
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子どもたちは、
生きている。
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ミラは、
膝をついた。
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手が、
血で汚れていた。
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「……私、
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間違えた?」
◇
カイは、
首を横に振る。
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「違う」
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「選んだんだ」
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遠く。
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屋根の上。
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バルザが、
拍手する。
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「素晴らしい」
◇
「これで、
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君も――」
◇
「仲間だ」
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ミラは、
顔を上げる。
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涙と血。
◇
英雄は、
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ここで、
◇
一人、
◇
死んだ。




