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# 第三十一話:選ばれる者
火は、
静かに燃えていた。
◇
地下都市。
◇
中央区の一角。
◇
爆破の跡。
◇
瓦礫の間で、
人々が呻く。
◇
泣き声。
◇
怒号。
◇
ミラは、
膝をつき、
◇
必死に治療を続けていた。
◇
光は、
弱く、
◇
それでも、
◇
確かに命を繋ぐ。
◇
「足りない……」
◇
魔力も、
◇
人手も。
◇
その背後。
◇
カイは、
立っていた。
◇
剣を支えに。
◇
見えない視界。
◇
だが――
◇
声が、
方向を教える。
◇
恐怖の震え。
◇
憎しみの熱。
◇
「王だ……」
◇
「名もなき王が、
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いる……」
◇
囁きが、
広がる。
◇
その時。
◇
群衆の中から、
一人の男が、
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叫んだ。
◇
「お前が来たから、
◇
こうなったんだ!」
◇
怒り。
◇
指が、
カイを指す。
◇
同調。
◇
「王なら、
◇
守れ!」
◇
「選べ!」
◇
責任。
◇
期待。
◇
カイの胸が、
重くなる。
◇
血眼の過去が、
◇
蘇る。
◇
――選ばされる者。
◇
その時。
◇
ミラが、
立ち上がった。
◇
「違う!」
◇
声は、
震えていた。
◇
「彼は、
◇
誰も選ばない!」
◇
ざわめき。
◇
「選ぶのは――」
◇
「あなたたちよ!」
◇
沈黙。
◇
ミラは、
人々を見渡す。
◇
「守ってほしいなら、
◇
彼を、
◇
王にするな!」
◇
カイは、
息を呑む。
◇
その言葉は、
◇
刃より鋭かった。
◇
遠くで。
◇
仮面の影が、
屋根に立つ。
◇
バルザ。
◇
「美しい……」
◇
「責任の放棄だ」
◇
彼は、
仮面の奥で笑う。
◇
「ならば、
◇
試そう」
◇
「誰が、
◇
選ばれるのか」
◇
合図。
◇
別区画で、
◇
第二の爆発。
◇
悲鳴が、
◇
重なる。
◇
ミラは、
歯を食いしばる。
◇
カイは、
剣を握る。
◇
「……行くぞ」
◇
「王じゃない」
◇
「仲間としてだ」
◇
二人は、
◇
燃える街へ、
◇
踏み出した。
◇
選ばれる者は、
◇
王ではない。
◇
覚悟した者だ。




