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# 第二十九話:血眼の原罪
古文書は、
血の匂いがした。
◇
地下都市。
◇
最深部。
◇
封印庫。
◇
ミラは、
一人で立っていた。
◇
壁一面に刻まれた、
古い紋章。
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“血眼”。
◇
かつて、
王を選ぶ目。
◇
そして――
◇
王を壊す目。
◇
ミラは、
震える手で、
◇
石板を読む。
◇
《未来を見る力は、
◇
必ず、
◇
人の選択を奪う》
◇
《選ばれた者は、
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全てを背負い、
◇
誰にも理解されぬ》
◇
《ゆえに――》
◇
《血眼の王は、
◇
必ず、
◇
孤独に死ぬ》
◇
同時刻。
◇
廃堂。
◇
カイは、
跪いていた。
◇
レオンの血が、
まだ乾かない。
◇
「俺が……
◇
選べなかった」
◇
拳が、
床を打つ。
◇
その時。
◇
低い声が、
背後から響く。
◇
「違う」
◇
仮面の男。
◇
バルザ。
◇
組織の“声”。
◇
「お前は、
◇
選ばなかったのではない」
◇
「選ばせなかった」
◇
沈黙。
◇
「血眼は、
◇
未来を示す」
◇
「だが、
◇
人を救わない」
◇
バルザは、
仮面に手をかける。
◇
「だから我々は、
◇
王を必要としない」
◇
「王は、
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象徴でいい」
◇
「混乱こそが、
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自由だ」
◇
刃が、
床に突き立つ。
◇
「選ばない世界を、
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作る」
◇
カイは、
顔を上げる。
◇
「……それで、
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誰が責任を取る」
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仮面の奥で、
笑う気配。
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「誰も取らない」
◇
「それが、
◇
自由だ」
◇
仮面の男は、
影に溶ける。
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その瞬間。
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カイの胸に、
奇妙な感覚。
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見えないはずの未来。
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だが――
◇
一つだけ。
◇
“確信”。
◇
この目は、
◇
呪いではない。
◇
呪いにしたのは、
◇
人だ。
◇
遠くで。
◇
封印庫の扉が、
開く音。
◇
ミラの声。
◇
「カイ……
◇
血眼は、
◇
孤独を選ぶ目じゃない」
◇
「孤独に、
◇
追い込まれる目よ」
◇
二人の影が、
交わる。
◇
原罪は、
力ではない。
◇
“期待”だった。
◇
血眼の物語は、
◇
まだ、
◇
終わらない。




