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# 第二十八話:王の重さ
鐘の音。
◇
地下都市。
◇
中央広場は、
人で埋め尽くされていた。
◇
恐怖。
期待。
◇
そして――
◇
諦め。
◇
高台。
◇
ザイードは、
両手を広げる。
◇
「秩序を与える!」
◇
「食料も、
安全も、
◇
俺が保証する!」
◇
歓声。
◇
だが――
◇
一拍、
遅れていた。
◇
その遅れに、
気づいた者は少ない。
◇
群衆の端。
◇
杖代わりの剣を持つ男が、
静かに立っていた。
◇
カイ。
◇
見えない視線が、
広場を測る。
◇
足音。
◇
一人の傭兵が、
前に出た。
◇
「止まれ」
◇
「王の前だ」
◇
カイは、
首を傾ける。
◇
「……軽い」
◇
次の瞬間。
◇
剣が、
地面を叩く。
◇
衝撃。
◇
波紋のように、
恐怖が広がる。
◇
傭兵は、
膝をついた。
◇
骨が、
悲鳴を上げる。
◇
沈黙。
◇
ザイードの笑顔が、
固まった。
◇
「誰だ!」
◇
「名を名乗れ!」
◇
カイは、
一歩前へ。
◇
「名は――」
◇
言葉を、
飲み込む。
◇
「……ない」
◇
ざわめき。
◇
その時。
◇
群衆の中から、
一人が走り出る。
◇
かつての仲間。
◇
レオン。
◇
「やめろ、カイ!」
◇
「ここで戦えば、
◇
皆が死ぬ!」
◇
裏切り。
◇
いや――
◇
選択。
◇
レオンは、
ザイードの前に立つ。
◇
盾のように。
◇
「俺は、
この街を守る」
◇
「お前じゃない」
◇
一瞬。
◇
カイの手が、
震えた。
◇
そして――
◇
止まった。
◇
剣は、
振るわれない。
◇
代わりに。
◇
仮面の影が、
屋根から降りる。
◇
刃の閃き。
◇
赤。
◇
レオンは、
倒れた。
◇
「王の前で、
◇
選ぶな」
◇
低い声。
◇
仮面の男。
◇
「選ばされる」
◇
悲鳴。
◇
混乱。
◇
ザイードは、
逃げ出す。
◇
カイは、
レオンの血に触れる。
◇
重い。
◇
剣よりも。
◇
「……これが」
◇
「王の重さか」
◇
見えない王は、
◇
初めて、
◇
何かを、
◇
守れなかった。




