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# 第二十六話:見えない王
静寂。
◇
地下都市。
夜明けは来たが、
光は弱かった。
◇
瓦礫の丘。
◇
カイは、
膝を抱えて座っている。
◇
左眼は、
白布で覆われていた。
◇
血は、
もう流れていない。
◇
だが――
◇
何も、
見えなかった。
◇
未来も。
分岐も。
◇
「……静かだ」
◇
それが、
最初の違和感だった。
◇
世界が、
“うるさくない”。
◇
足音。
◇
近づく気配。
◇
ミラだった。
◇
彼女は、
何も言わず、
◇
カイの前に座る。
◇
包帯を、
そっと外す。
◇
閉じた左眼。
◇
赤い輝きは、
もうない。
◇
「……本当に、
見えないの?」
◇
「見えない」
◇
短い答え。
◇
ミラは、
唇を噛んだ。
◇
「私の未来も?」
◇
カイは、
少し考えてから、
◇
首を横に振る。
◇
「今は……
君しか、
見てない」
◇
沈黙。
◇
風が、
瓦礫を鳴らす。
◇
その時。
◇
地下各地で、
同時に噂が走る。
◇
「王は死んだ」
◇
「いや、生きている」
◇
「名もなき王が、
戻った」
◇
ギャングたちが、
動き出す。
◇
空白を、
埋めようと。
◇
カイは、
立ち上がろうとして、
◇
よろけた。
◇
世界の距離感が、
狂っている。
◇
ミラが、
支える。
◇
「無理しないで」
◇
「……無理だ」
◇
「王は、
座っていられない」
◇
自嘲の笑み。
◇
その瞬間。
◇
遠くで、
爆発音。
◇
悲鳴。
◇
新しい争い。
◇
カイは、
目を閉じる。
◇
――いや。
◇
最初から、
閉じていた。
◇
「見えなくても――」
◇
「歩ける」
◇
剣を、
手探りで掴む。
◇
未来は、
見えない。
◇
だが――
◇
選ぶことは、
まだできる。
◇
瓦礫の上に、
立つ影。
◇
名もなき王は、
◇
“見えないまま”、
◇
再び、
歩き出した。




