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# 第二十四話:人質の価値
地下都市。
戦火の中で、
一つの灯りだけが残っていた。
◇
旧評議塔。
◇
かつて、
地下の秩序を決めた場所。
◇
今は――
◇
取引の場。
◇
鎖の音。
◇
ミラは、
円形の広間に立たされていた。
◇
拘束。
◇
魔力封印。
◇
だが、
彼女の背筋は伸びている。
◇
「怖くないのか?」
◇
問いは、
上から降ってきた。
◇
黒と金の仮面。
◇
仮面将・ラグナ。
◇
「……怖いです」
◇
ミラは、
正直に答えた。
◇
「でも――」
◇
「彼は、
来ます」
◇
ラグナが、
低く笑う。
◇
「それでいい」
◇
「お前は、
価値が高い」
◇
「癒し手」
◇
「象徴」
◇
「そして――」
◇
「血の眼を縛る鎖」
◇
◇
同時刻。
◇
瓦礫の街。
◇
カイは、
一人で歩いていた。
◇
血の眼が、
狂ったように疼く。
◇
――見える。
◇
ミラが処刑される未来。
◇
――見える。
◇
彼女を救って、
数千が死ぬ未来。
◇
分岐は、
◇
残酷なほど、
明確だった。
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拳が、
震える。
◇
(……選べ)
◇
祖の声が、
蘇る。
◇
「切り捨てろ」
◇
「未来を」
◇
「感情を」
◇
カイは、
立ち止まった。
◇
左眼から、
血が一筋、落ちる。
◇
代償が、
加速している。
◇
その時。
◇
仮面の伝令が、
声を張り上げた。
◇
「血の眼に告ぐ!」
◇
「明日、
夜明け前」
◇
「評議塔に来い」
◇
「来なければ――」
◇
「彼女は、
価値を失う」
◇
沈黙。
◇
街の音が、
消えたように感じた。
◇
カイは、
空を見上げる。
◇
(世界を救うか)
◇
(彼女を救うか)
◇
血の眼は、
答えを示さない。
◇
それでも――
◇
カイは、
歩き出した。
◇
評価など、
どうでもいい。
◇
価値など、
切り捨てる。
◇
彼が、
選ぶ未来は――
◇
まだ、
◇
名付けられていない。




