023
# 第二十三話:裏切りの名前
地下都市。
避難路の最奥。
◇
崩れた礼拝堂。
◇
ここは、
かつて仲間と
◇
約束を交わした場所。
◇
カイ、ミラ、
そして――
◇
第三の影。
◇
「……久しぶりだな」
◇
声の主は、
ロウ。
◇
かつての仲間。
斥候。
◇
誰よりも、
地下の道に詳しかった男。
◇
ミラの表情が、
凍りつく。
◇
「ロウ……?」
◇
彼は、
仮面を持っていない。
◇
だが――
◇
首元。
◇
薄く刻まれた、
仮面の紋章。
◇
「いつから……」
◇
ミラの声が、
震える。
◇
ロウは、
笑った。
◇
「最初からじゃない」
◇
「でも――」
◇
「信じるのは、
楽だった」
◇
カイの血の眼が、
反応する。
◇
――見える。
◇
ロウが、
仲間を売った未来。
◇
――同時に。
◇
彼が、
誰かを守る未来。
◇
二つ。
◇
重なっている。
◇
切れない。
◇
「理由は?」
◇
カイの声は、
静かだった。
◇
「生きるためだ」
◇
「英雄ごっこじゃ、
腹は満たせない」
◇
ロウは、
一歩下がる。
◇
その背後。
◇
影が、
動いた。
◇
仮面兵。
◇
包囲。
◇
「ミラは渡す」
◇
「お前は――」
◇
「ここで、
消えてもらう」
◇
ミラが、
叫ぶ。
◇
「やめて!」
◇
ロウの手が、
震えた。
◇
一瞬。
◇
血の眼が、
一つの未来を示す。
◇
――今、斬れば。
◇
ミラは助かる。
◇
――だが。
◇
ロウは、
完全に堕ちる。
◇
カイは、
刃を下ろさない。
◇
「……名前を呼ぶな」
◇
「裏切った瞬間、
お前はもう――」
◇
「仲間じゃない」
◇
ロウの目が、
見開かれる。
◇
その隙。
◇
爆煙。
◇
仮面兵が、
突入する。
◇
混戦。
◇
ミラが、
引き離される。
◇
「カイ!」
◇
叫びが、
闇に消える。
◇
煙が晴れた時。
◇
ロウの姿は、
◇
なかった。
◇
地面に、
落ちていたのは――
◇
一枚の仮面。
◇
内側に、
刻まれた名。
◇
《ロウ》
◇
カイは、
それを拾い上げる。
◇
胸の奥が、
◇
何も、
感じなかった。
◇
それが――
◇
一番、
◇
怖かった。




