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# 第二十話:地下都市、王を失う夜
地下都市。
その夜、
秩序が、死んだ。
◇
闇市の灯りが、
一斉に消える。
◇
魔力遮断。
完全封鎖。
◇
「始まったか……」
◇
カイは、高塔の縁に立つ。
感情は、静かだ。
冷えた湖面のように。
◇
血の眼が、
無数の分岐を映す。
◇
――放置すれば、
地下は仮面に支配される。
◇
――介入すれば、
“王”が死ぬ。
◇
カイは、
迷わなかった。
◇
「切る」
◇
◇
地下中央区。
◇
ノクスの“王”。
◇
名を、ヴァル=クロウ。
◇
犯罪も秩序も、
彼の掌にあった。
◇
玉座の間。
◇
重装の護衛。
◇
だが――
◇
影が、
先に動く。
◇
仮面兵。
◇
爆炎。
悲鳴。
◇
王は、
立ち上がる。
◇
「血の眼……来たか」
◇
「この街は、
怪物が守ってきた」
◇
「お前は――」
◇
言葉は、
最後まで届かない。
◇
血の眼が、
一つの未来を、
静かに消した。
◇
◇
刃は、
王の胸を貫かない。
◇
代わりに――
◇
影が、
王の背後から伸びる。
◇
仮面の刃。
◇
ヴァル=クロウは、
玉座に崩れ落ちた。
◇
血は、
少なかった。
◇
静かすぎる死。
◇
外。
◇
地下都市に、
混乱が走る。
◇
ギャング。
商人。
傭兵。
◇
支配者を失った街は、
◇
“空白”を晒す。
◇
カイは、
高塔から飛び降りた。
◇
着地。
◇
胸の奥が、
さらに冷える。
◇
(悲しみが……薄い)
◇
遠く。
◇
仮面の角笛が鳴る。
◇
――侵攻開始。
◇
地下都市は、
◇
王を失い、
◇
戦場になった。
◇
そして――
◇
血の眼の持ち主は、
◇
“王殺し”と呼ばれるようになる。




