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# 第十四話:正義の刃


雨が降っていた。


細く、冷たい雨。


追われる者に、休みはない。



山道。


足元はぬかるみ、逃げ場は少ない。


カイは、立ち止まっていた。



(ここで、終わらせる)


逃げ続ければ、街に被害が出る。


それだけは、避けたかった。



背後から、魔力の波動。



「やっと追いついた」


現れたのは、三人。


王都治安隊の精鋭。



先頭に立つのは、


白銀の杖を持つ女魔導士。


橋の上で会った、あの目。



「これ以上、逃がさない」



「……分かってる」


カイは、剣を抜いた。


初めて、


自分から。



「抵抗すれば、処刑対象よ」



「それでも」



雨が、強くなる。



魔法陣が、三重に展開する。


雷。


風。


拘束。



(正面からは、無理)



左眼が、静かに開く。


――半開ではない。



世界が、裂けた。



魔法の構造。


詠唱の核心。


一瞬の“隙”。



カイは、踏み込む。



一太刀。


雷が、霧散する。



二太刀。


風が、止まる。



三太刀目――



躊躇。



「やめろ!」


女魔導士の声。



剣先が、喉元で止まる。



雨音だけが、残った。



「……殺せないのね」


彼女は、震えながら言った。



「正義だから」


カイは答える。



「違う」



「俺が、選んだだけだ」



左眼を閉じる。


視界が、元に戻る。



その瞬間。



別方向から、


黒い刃が飛んだ。



治安隊の一人が、倒れる。



「なっ……!?」



木々の間から、


白い仮面が現れる。



「美しい判断だ」


低い声。



「だが――甘い」



仮面の影が、消える。



残されたのは、


混乱と、血。



女魔導士は、カイを見る。



「あなたじゃ……ない」



「知ってる」



遠くで、雷鳴。



この夜を境に、


噂は、変わる。



――怪物ではない。



だが、



「正義すら、敵に回す男」



そう呼ばれるようになった。


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