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# 第十三話:追われる者


正午。


街の鐘が鳴る。


その音は、祈りではなく――警告だった。



「旧礼拝堂事件の犯人を発見次第、拘束せよ」


掲示板に貼られた新しい布告。


似顔絵は粗い。


だが、左眼の傷だけは、はっきりと描かれていた。



(早いな)


カイは、群衆の中で帽子を深くかぶる。


救った男の顔が、脳裏をよぎった。



「怪物だってさ」


「禁呪を使ったらしい」


「目を見たら、魂を抜かれる」



噂は、いつも都合よく歪む。



路地裏。


背後から、気配が三つ。



「止まれ。王都治安隊だ」


銀の外套。


正規の魔導士。



「抵抗するな」


若い女魔導士が、前に出る。


迷いのない目。



(……敵じゃない)


カイは、そう判断した。


だから――


逃げた。



魔法が、路地を焼く。


石畳が砕ける。



(本気か)


カイは壁を蹴り、屋根へ跳ぶ。



空中で、左眼が疼く。


――半開。



魔法の軌道。


包囲の完成形。


逃げ道は、一本だけ。



着地。


市場。


人混み。



(巻き込めない)


カイは、剣を抜かなかった。



代わりに、投げた。


鞘だ。



魔導士の詠唱が、途切れる。



「なっ……!?」



その隙に、カイは駆ける。



橋の上。


追手は、まだ来る。



「待って!」


女魔導士の声。



足を止める。



「あなたが、本当に犯人なの?」



カイは、振り返らなかった。



「……俺は、殺してない」


それだけ言った。



沈黙。



次の瞬間、


橋の欄干が、魔法で吹き飛ぶ。



(答えは、これか)



カイは、川へ飛び込んだ。



冷水が、全身を包む。



水中で、視界が歪む。



白い影。


仮面。



(……見ている)



岸に上がった時、


追手の姿はなかった。



代わりに、


橋の上に残ったのは――



治安隊の布告が、


風に裂ける音だけだった。



その夜。



闇市の酒場で、


新しい噂が流れ始める。



「礼拝堂の怪物は――


人を助けたらしい」



真実は、


いつも遅れて、


静かに広がる。



そして――



白い仮面の一人が、言った。



「次は、逃がすな」



狩りは、


本格的に、始まった。


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