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# 第十一話:別れの朝


朝の光は、残酷なほど澄んでいた。


森の端。


簡素な野営地で、カイとミラは向かい合って立っている。


昨夜の出来事が、言葉を奪っていた。



「……ここまでね」


ミラが、先に口を開いた。


声は落ち着いている。


無理に作った、強さだった。



「一緒には、行けない?」


そう言ってから、ミラは目を伏せた。


答えは、最初から分かっている。



カイは、ゆっくりと首を横に振った。


「俺といる限り、危険は続く」


「……もう、巻き込みたくない」



ミラは、笑った。


泣きそうな笑顔だった。


「優しいのね。そういうところが」



しばらく、沈黙。


風が、草を揺らす音だけが続く。



「これ」


ミラは、小さな護符を差し出した。


淡く光る魔力が、込められている。


「回復じゃない。……帰るための魔法」



「帰る場所は、もうない」


カイはそう言った。


だが、護符は受け取った。


拒めなかった。



「生きて」


ミラは、真っ直ぐに言った。


「怪物になってもいい。……生きて」



その言葉が、胸に刺さる。


怪物。


誰かが、初めて口にした言葉。



「ありがとう」


それだけ言って、カイは背を向けた。



数歩、歩いてから――


足を止める。



「ミラ」


振り返らずに、言った。


「昨日までの時間は……嘘じゃなかった」



返事はなかった。


だが、


嗚咽を堪える気配が、確かにあった。



カイは、歩き出す。


一人で。



街道に出ると、朝日が眩しかった。


剣の重みが、以前よりも現実的に感じられる。



(これでいい)


守るために、離れる。


信じるために、疑われる。



遠くの丘の上で、


白い仮面の影が、こちらを見ていた。



「彼は、選んだ」


低い声が、風に溶ける。



カイは、その視線に気づかない。


ただ前を見て、


次の戦場へと、歩みを進めていた。



こうして――


孤独な旅が、


正式に、始まったのだった。


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