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星を拾う少女

作者: 戸川涼一朗
掲載日:2025/10/29

テーマは「小さな優しさが、誰かを救う」。

夜の中に希望を見つける少女の姿を通して、

作者が信じる“人の心の光”を描きました。

夜の街は、静かに息を潜めていた。

街灯の光がアスファルトを淡く照らし、どこか遠くで風鈴の音が鳴っている。


その道の端に、ひとりの少女がしゃがみ込んでいた。

白い指先に掬われているのは、淡く光るひと粒の星。


「……また、見つけた。」


少女はその星を胸に抱いた。

小さな光が彼女の胸の奥で、かすかに震えている。


少女の名は――セラ。

夜になると、星を拾いに出かける。

それは空から落ちてきた“心の欠片”。

悲しみや絶望が溢れすぎて、地上へ落ちた人の想いだ。


セラはそれを拾い、もう一度空へ返していく。

それが、自分の役目だと信じていた。



ある夜、セラは泣いている少年と出会った。

街の公園のベンチに座り、手の中で光を握りつぶすように。


「ねぇ……その光、どうしたの?」

「いらないんだ。もう見たくない。」


少年の掌の中で、小さな星が震えていた。

その光は弱く、今にも消えそうだった。


「それを壊したら、あなたの心も壊れちゃうよ。」

「……そんなの、もうとっくに壊れてる。」


セラは静かに目を伏せた。

彼の光は、誰かを失った痛みで黒ずんでいた。

触れると、冷たくて、胸の奥がチクリと痛む。


それでも、彼女はその星を手で包んだ。


「この星はね、あなたの涙でできてるの。」

「涙……?」

「うん。泣くことは、弱いことじゃない。

 ちゃんと心がある証拠だよ。」


少年の瞳が揺れた。

その瞬間、光が少しだけ明るくなった。


セラはその光を空に掲げ、囁いた。


「さぁ、帰ろう。空の上に——みんなの想いが待ってる。」


風が吹き、夜空の雲が開く。

一筋の光が、星へと溶けていった。

少年の頬に残った涙が、今度は優しい光に変わって流れ落ちた。



夜が明ける頃、セラはひとりで坂道を登っていた。

掌には、まだ一つだけ残っている星。

それは、ずっと前に拾って、まだ返せずにいる光。


彼女自身の涙がつくった星だった。

誰にも言えなかった孤独の光。


空を見上げ、セラはそっと微笑む。


「……もう、大丈夫だよね。」


星を手から離すと、淡い光がゆっくりと昇っていった。

空は薄明るく、朝が来ようとしている。


セラの頬を、優しい風が撫でた。


「ありがとう。」


その声とともに、最後の星が夜明けの空に溶けた。


街の片隅で、光がまた一つ生まれる。

誰かの涙が、誰かの希望に変わる。


そして少女は、今日もまた星を拾いに行く。


最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

『星を拾う少女』は、夜の中にある“希望の光”を描いた物語です。

どんなに小さな優しさでも、きっと誰かを救える。

そんな想いを言葉に込めました。


あなたの心にも、小さな星が届きますように

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― 新着の感想 ―
星が心の欠片というお考えには、純粋な気持ちが感じられます 感情が溢れて落ちてくる星を拾うセラが、星を落とした人と接する事で星が空に戻る動きかたは実に幻想的でした
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