同窓会
人がゴミのようだと思い出させてくれる東京駅、何度目だろう…上京したての頃はワクワクしたものだがそんなものはもうとうの昔に失ってしまった感覚だ。そんな人工的な砂漠こと東京駅にわざわざ来たのには理由がある、成人式だ…と言っても成人式の式典自体に参加するわけではない、同窓会に参加するのだ。というのも日本の頂点と言われる弊学であるがきっと成人式などとは無縁の人間が制度を作っているのだろう、期末がすぐそこなのだこのままでは留年してしまうのだ、いっそ春休みを潰してもいいから成人式まで休みにして欲しいものである。一応記しておくが僕は断じて友達がいないから成人式の式典には行かないって訳ではないのだ、ほんとだからね!
新幹線に乗りながらどんな風に皆が変わっているだろうか思いを馳せる、世の中では成人式マジックなどという邪な禁術が存在するらしいが俺はそんなことに興味はない、男女関係なく漢同士、再会を祝い過去に思いを馳せ熱い祝杯を交わす――これこそが醍醐味であろう。これのみによってこそ心の空洞を埋められるというものだ!そんなこんなで気付けば人も自然も野生動物も輝く我が故郷に帰還した。
いざ、同窓会だということで電車に乗る、当然そこにいるのは6年もの間、共に通学した仲間たちだ彼らは以前のように一心不乱にスマホゲーに打ち込んでいる、とても落ち着く空気感だ。中高時代はスマホの持ち込みさえ禁止されていた母校だがそんなもので我らの熱が収まるはずもなく電車内ス○ブラ大会を開催するなどして説教を受けたものだ。しかしながら童心を忘れない彼らは紛れもなく漢だと言えよう。そのまま話し込んでいると気付けば会場に到着した。会場に着くとそこには様々に変容した奴、そのままの奴、誰か不明の奴…いろんな奴がいるまぁなんだかんだで多少の変化はあれど仲の良かった奴はぱっと見でわかるものだ魂の輪郭がそいつらなのだ、一方であんま仲よくない奴はさっぱりわからない成人した女性は顔面塗装で玉の輿を狙うのだ偉大なる大婆様が言ってた気がするが本当にわからない、きっと塗装できてしまう魂なのだ。
ほどほどに談笑したところでいよいよ乾杯の音頭が掛かる。熱い漢同士の祝杯が交わされる大変心地の良い酒だ、やっぱり幾千万円さる神の一滴を求めるよりも漢同士という最高のスパイスを求める方がいいと思ってしまう僕は根っこが庶民なのだろう。そんなこんなで漢同士で談笑しているとトラウマの一端がちらりと視界に映った。今まで好きになった女全てに振られている僕だがきっと好きになってやらかし(自主規制)たことを反省はしているが後悔はしていないのだ。だからと言って話しかけるにしても自分から話すほどでもないだろう…否、垣間見が至高だからそうするのだ、仕方なかったのではないそうすべきなのだ。さて、自慢とかではないが僕を産んでくれた母のおかげで僕はアルコールに対してそれなりに耐性がある。やって当然皆の酔いが回り始めたなぁと思う頃に自分はすごく冷めてたと思う。みんなの動きには変化があった。会話の色が婚姻色に変化してきていたのだ。いやきっと婚姻色などというと命を含む全てを賭して繁殖に挑むギャンブラーの鏡たる鮭に呪い殺されるかもしれないそんなことを思うほどにただただくだらない痴情のもつれ話、異性に媚びる光景が展開されていた。彼らの中では彼女(彼氏)?欲しけりゃくれてやる、探せぇ…な感じの大繁殖時代が到来してるのだろう。僕はついていけてなかったと思う。お前が○貞だからだろとかそういう次元ではなくみんなが理性を失いつつあることで普段は全く感じない自分の理性が照らし出されてしまうのであった。しかし、観察する分には大変面白い現象だと思う。みなより多くの人間と話すためにスタンプラリーを回るが如くクルクルと流動していた。ただやっぱり魅力的な奴は魅力的なのだろう輪の中心になる資格ある者が点々と輪を作っていて動いている奴はよっぽど出会いを大切にする奴らか誰とでも話せるからこそ誰と話しこもうか決めきれないやつらなんだろう。きっとみんな行き場を、自分が収まるべき場所を見つけたいんだろう、その点この場はある意味、亡者の戦場と言えるのかもしれない。
まあそんなことは置いといて僕は引き続き漢たちと盃を交わしていた。彼らの中にも彼女がいるものもあるらしい、キープがあるの(ガチ要約)みたいなことを言ってる奴もいた…………ん?俺もしかしてんんん?まずい?みたいな気持ちが湧いてきた俺は当然毎週少年ジャ○プを買う童心を忘れない成人だ運動と食事の比もここ5年くらい変化していないのできっと俺は過去の現し身のように変わっていないように見えるだろう、だが内面は?童心を抱くというといいことのように聞こえるがそれは蛹が成虫になるのを拒否してるような者なのだろうかあれ?俺気付いたら人生の脱皮不全?……まぁ僕は自分がやってきたことに納得して生きてきたきっと俺は自分に恥じないやつに生きてるはずだ、だってあの子の分も俺が贖うと決めたんだから…青年から成人へ階段を上るというがそもそも階段なんて比喩がおかしい終わらないヒルクライムみたいな図が用いられるべきなのだ。まぁ飲もう、ということで浴びるほど飲んだ…
………現在、酔っ払ってますよ。飲みスギィ。アあゝアあゝ嗚呼………
ちょっと夜遅くなるだけで新幹線で帰るしかなくなる田舎の宿命を恨みつつ課金して新幹線ホームにた気付けば一緒にいた奴は消えていた。
ふと振り返るとそこに女の子がいた誰かよくわからなかったが黒髪が映えるショートカット(ボブというらしい俺にはさっぱりよくわかんないね)の女の子だった。気付けばその女を尾行しガラガラの新幹線で隣の席に座っていた酔いに任せてその女に色んなことを話した、俺は今まで振られたことしかないが反省はしてるんだただ俺は自分が間違っていたとはおまわないだから後悔はして無いし納得してるんだ…でも、ずっと1人じゃ隣に誰もいないのなら俺は何をもとに生きていくんだろうこの空洞はどうやったら埋まるんだろうそんなことを話したと思う。よく覚えていないだけどその女はきっとこう言った…生きてていいんだよと
ドン、ドンドン、……え?あ、
目が覚めるとそこは乗った新幹線の終点だった今何時かわからないがきっともう終電は無いんだろう。やってしまったと思いつつもスマホを取り出すもバッテリーがないのだろう白く発光するだけでよくわからない綺麗な女の子が映し出されている。きっと水攻めにあったかの城の人々はこんな気持ちだったんだろうひとまず朝までだべろうということでベンチに座る、例の3つに分割されたうちの真ん中に陣取る、ホームレスを除きたいんだろうが本当に排除してるのはたまの公園利用者だろう、それに本当のほんものはこの程度では除去できませんよっと。朧げな記憶を振り返る、あの女の子、誰だったんだろうわからない、でも俺はこれから先何を求めて生きればいんだろう、わからないんだこれが。きっと涙を流していたと思う、期間限定の後悔の涙だ。俺は何をすべきなのだろう。
そんな時1人のおっさんが隣に座った、すごい匂いだ
ホームレスの人なんだろう
「カカカ、どうしたこんな所で」
そのホームレスは豪快な生きる力に満ち溢れた笑い方をするおっさんだった
正直あまり良い気はしなかったのかな僕はタチの悪い問いかけをした
「失礼ですがあなたホームレスなんだろうと思います、職も行く宛もないのになんのためにどうして生きてるんですか?」
ホームレスは表情を崩さず答えた
「カカカ、ワシは確かに家も伴侶も職も失っただがこれは俺が思うままに生きてきた結果だ」
「後悔とかはないんですか?」
「ない!
こんなワシから一つ言葉を授けよう
後悔はする為にあるのではない後悔は勝手にたまるものだ時間でしか消せないものだ、停滞すれば直視し対峙せねばならんものだ、だから俺たちは進み続けなければならない…なればこそ後悔は無くしていく為にある!」
そのおっさんは目を輝かせながらそう言った。その目はもはやホームレスではない過去の自分が何度も見せてきた少年の瞳だった
「でも、なんの為に…進み続けたその先に何があるって言うんですか?」
「誇りだ!
この誇りに、この誇りを照らすおてんと様に恥じぬよう生きたその先に俺たちの納得はあるだから
立て
」
そう言われて俺は自然と立っていた
「ありがとうございます」
そう返す俺を覆うビルの影の裏にはきっと明るい太陽が上がっていた