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オレつづ  作者: 木荃好葉
妖事~ようじ~編
3/44

第三話 強敵と反逆者

「あ〜、よく寝た!」


薄暗い部屋に子供の声が広がる。

その声の持ち主、太谷喜雷は、英蔓賢とはまた別の山の奥に一人で住んでいた。


「さてぇ、今日からちゃんとした授業だー!楽しみだなぁ〜!」


なにかの鼻歌を楽しそうにノリノリで歌いながら窓を開く。太陽が雲で覆い隠されている。部屋は……明るくならない。ただその朝の空気のみが部屋の中に入ってくる。


「……うん?なんだろ、この感じ……嫌な予感がするな……」


小さくため息をつく。いや、太谷喜雷はそのつもりだが、正しくはかなり大きなため息だ。


「これは……先生、後でじっくり相談しよーぜー……」




同じ頃、英蔓賢も学校の教室に敷かれた布団の上でで目を覚ましていた。


「おい、英蔓ー。起きろー」


黒幕先生がフライパンを叩き、大きな音をたてながら英蔓賢の寝ている布団に近づく。どちらかというと、そのドシドシという足音の方がうるさいのかもしれないが……。


「ん〜、起きてますって……。どこから持ってきたんですか?そのフライパン……」


「これか?調理室だが。そうだ、それより英蔓、なにか感じないか?」


「え?」


そう言われて、少し集中する。寝起きな上、慣れない環境な為あまり集中できないが、確かに何かを感じた。すごく近い。学校になにかある……いや、でも昨日はこんな気配しなかった。まず昨日は気配を探ろうとはしなかったが、この気配ならおそらく集中しなくても気づけていただろう。


「これは……」


「なにかあるだろ?朝から段々と大きくなっていっているんだ。なにか、早速ここで起こるのかもしれねぇな……太谷と要相談だな……」


「太谷……?」


先生がハッとする。どうやら言ってはいけない事だったらしい。

昨日から何を考えているのか分からない先生だが、今だけはハッキリとわかった。


「そうだな……あまり秘密にしたくねぇが、ある目的のためだ。どうせ、いずれ分かるだろう。それまで待ってくれ」




そしてその頃木荃好葉と屍形魁斗は……。


「ふぁぁあ、おはよぉー。魁斗くん起きるの早くない?」


どうやら一つの部屋に二人で住んでいるようだ。

木荃が枕元の紫色の鉱石をひねる。すると、部屋の中心がぽわっと明るくなった。


「まったくぅ、灯りぐらいつければいいのに……あれ、どうしたの?」


さっきから魁斗くんが妙に静か。いや、普段からこうなんだけど、長年の付き合いだからこそわかる。これはなにか考え事をしているときだ。それも真剣に。


「木荃、まずいかもしれない。まだ確定ではないが、なにかが起きようとしている。場所は……学校?」


「詳しく説明して。そーゆーことなら知識としては引きこもり?の魁斗くんよりボクの方が英才教育受けてるし自信ある。何が分かってる?」


魁斗くんがうつむいた。あれ、ちょっと言い過ぎた?いつもならこうはならないんだけどなぁ。ごめん。


「すまない、本当にほとんど分からないんだ。分かっているのは、さっき言った通り何かが起こる事、それは学校でということ。そして……」


まさか魁斗くんが本気で分からないとは……ボクはいくら知識があっても、魁斗くんみたいにここから学校が探知できるほどの魔力はないから、正直どうしようも無いんだよな……。どうしよ、とりあえずヘアピンでもつける……あ、まだ寝癖直してないや。


「その原因は……おれたちの元の世界とは、また違う世界の力による……ということだ……」


ボクの手からヘアピンが滑り落ちた。え、真面目に言ってる……?また別の……異世界?星?




そして八時三十分。学校に全員が揃っていた。


しばしの沈黙。誰もそうとは言っていないが、全員がこの異変に気づいていることを気づいているようだ。

しばらくして、黒幕先生が重たい口を開いた。


「お前ら、覚悟しておけ。今日、ここで何かが……」


そこまで言った時、教室の床が光った。なにか発光している、魔法陣のようなものが突如出現した。


「くっそ、早速かよ!最悪だ!マジで!」


先生が軽くキレる。髪の毛をグチャグチャにし、明らかに取り乱している。

焦る英蔓賢。

驚く木荃好葉。

見つめる屍形魁斗。

睨みつけている……?太谷喜雷。


「この魔法陣……テーポルートが込められているな」


英蔓賢が屍形魁斗を見る。


「え、屍形、お前なんでそれを……!」


光が消えた。


魔法陣が消えた。


その時、五人も消えた。




ー英蔓賢


「いってて、なにがあったんだ?」


英蔓賢が目を覚ましたそこは教室ではなく、古い、中世のヨーロッパような町の道路の上だった。

突如現れ、道路の中心に横たわっている少年を多くの人が見つめる。


ここはどこだ……うっ!頭が痛い……!もしかして、テーポルート……瞬間移動の反動か!?


……なにかが聞こえる。なんて言ってるんだ……?

多分だけど大丈夫……か?分からない……。


……そうだ、ここでも使えるか分からないけれど、回復できれば!


「『聖剣召喚(ホーソサーム)』!」


その時、空……空間がガラスのように音を立ててヒビ割れ、その中からシンプルだが豪華な剣が現れる。その白色と金色の、いかにもな剣は、そう、聖剣と言うやつだ。俺の頭の変な輪っかについている宝石と同じ赤色の宝石が真ん中に飾られている。


「お!ちゃんと出た。……うっ、いった!早く、これで!『聖救光(メシアイト)』」


俺は聖剣に魔力を込める。それと同時に聖剣はひかりだし、辺りがその光に包まれる。強力な回復効果を持つ光だ。


その光に驚き、地面に倒れたおじいさんが叫ぶ。

大丈夫だろうか、怪我は……。


「こ、この光は……!そうか、その剣!その頭の赤い宝石!……間違いない、お主が伝説の勇者じゃなぁ!?」



異世界に飛ばされて早速、俺はその国の中心にある、王の城に運ばれた。


「ふむ、それで、この少年が伝説の勇者だと?」


広い部屋の奥の玉座に一人、やや太っている男が座っていた。その声は太谷程ではなかったが大きく、威厳を感じさせた。同時に疑いも。まぁ当然だよな。


「はい、このように聖なる剣を出現させることができ、またその剣を使うことで光魔法と思われるものを使っておりました」


これは面倒なことになってきたな……と、俺は一人心の中で思った。こうなってくると俺は自分の力について誤魔化しようがない。地球とは違って、恐らくここは魔法が浸透している。むしろマジック、と言う方が驚かれるだろう。いや、マジックとはなにか、魔法とはどう違うのか、という点で……。


「そうか……ワシは藁にもすがりたい。ここで王宮魔術師を呼ぶ。そしてもしその力が本物だと分かれば……」


「分かれば……なんですか?」


「お主には忌族長(きぞくちょう)、四天王、そして魔王を討伐してもらいたい」


ちょっと待て、魔王、四天王ならまだわかる。キゾクチョウとは……?



その後、俺はそのローブを被った王宮魔術師さんの持ってきた水晶によって、その力を持っていることが完全にバレてしまった。俺は何とか誤魔化そうとしたが、聖剣の鑑定もされたため、さすがに無理だった。

王様の説明によると、忌族というのは四天王に認められた有力な種族で、そのリーダーである忌族長は八体ほど存在しているらしい。

まずはこの忌族長から。次に四天王。最後に魔王。と、この順番に討伐して欲しいと言う。古い伝承によると、これ以外の順番では魔王がなかなか姿を現さなかったらしい。

正直に言う。なんだこれ、RPGゲームかよ!とは思った。



ー木荃好葉


「わぁ、頭クラクラする〜。はぁ、ここはどこだろ……?どこを見ても平原……だよね。家すらない。あれ?あれは山かな。ここがどこだかはっきりと分からない以上、下手に動くのはダメだよね……」


その時妙な気配がした。なんだ……?この気配は。

ボクは後ろに振り向いたが何も見えない。居るとすればその高い草むらの中だろう。


少しの静寂。まだ気配はする。殺意を感じる。でもどこ?上手く探れない……。


近くの草むらが揺れる。居る。距離は五メートルかな。かなり近い。ここまで近づかれるまで気づけないなんて、ボクも鈍っちゃったかな?


「キシャァァアア!」


勢いよく飛び出てきたのは、巨大な……なんだこれ、蜘蛛っぽいけど手のソレは絶対カマキリの鎌だよね。こんなの見た事ない。……もしかして、朝の魁人くんのあの話、冗談じゃなかった?まぁ冗談とか言うタイプじゃないと思うけど。


「おっと、危ない。ここがもし本当に地球でもない異世界だとすると、何が起こるか分からないからね」


その生物……とりあえず、クモカマキリはとてもすばしっこく、同時に気配を探りにくかった。本当に霧に覆い隠されているように思えた。


「まったく、ホントに厄介だなぁ!あんまり派手に動きたくないのに。とりあえず止まろ?ね?そうか……この戦い方がヒットアンドアウェイってやつかな……?」


クモカマキリは異様な瞬発力であちこちへ移動し、同時に両手の鎌でボクを狙ってくる。どうやら足で地面を蹴る時と同時に背中の八本の水色の触手で地面を弾いているらしい。そのため、正面を向きながら横へ飛ぶという本来この生物が体のつくり上できるはずのない変則的な動きが可能になっている。

この混沌とした感じ、謎の進化!やっぱり自然は面白い……!


「……さすがに肉弾戦は無理かも、速すぎる」


ボクは深く息を吸い込むと、覚悟を決めた。


「ここで魔法を安易に使っていいのか、いや使えるのかも分からないけれどしょうがないよね。『魂術(こんじゅつ)魂睡恨水(こんすいこんすい)』」


クモカマキリの動きが止まる。魂睡恨水。相手の魂を直接眠らせる術。要は催眠術だね。ただ、それだけじゃないんだよ。技名通り、これ多分めちゃくちゃ相手に恨み持って、殺意に身を任せて放つ技なんだろうな。だって……。


ちゃぽん……


相手の真下に底なしの水溜まりができるんだよ。もちろん寝ているから回避不可能。抵抗することなく沈んでいく。使用者のボクでもさすがにこの効果はヤバいと思う。ちなみに勝手に水溜まりは消える。沈んだらその後どうなるんだろうね。生き埋めか消滅か。


「まぁ、なにはともあれ、魔法は使えるしちゃんと効くみたいだね。良かった良かったー。で、だ。さっきから覗いてた君達は……誰?」


そう言うと、遠くの草むらから何人かが出てきた。どうやらボクの感覚は鈍っていなかったらしい。良かったー。


「……!あの、すみません。あなた、何者ですか……?」


草むらから出てきたのは重たそうな装備を着たおじさんが二人と杖を持った……それぞれの娘さんかな、若い女性が二人だった。


「先に答えて。君達は何者?なんの用?」


巨大で豪華な盾を持つおじさんが答えた。

どこか怯えているような態度だな。どうしたんだろう。


「えっと、我々は冒険者とか探検者とか呼ばれる者でして、この辺りの魔物を倒しに来たのですが……」


「魔物?あぁ、さっきのクモカマキリのことね」


「クモカマキリ……あぁ、なるほど。えぇ、実はその事でして……」


どうやらアイツはテンタクルシザースというらしい。テンタクルがタコみたいな魔物で、シザースが確かハサミだよね。おかしいなぁ……鎌だよ?じゃなくて、どうやらそれが結構強い方の魔物らしくて、プロのおじさん達でも苦戦するそう。


「それで驚いたと」


「えぇ、まさかあれほど簡単に討伐してみせるとは。あなたになら一つお願いできると思いまして……」


お願い……なんだろ。せめて楽なら良いな。ボクは早くみんなを見つけないといけないからね。


「あなたに、魔王を討伐するのを手伝って欲しい!」


「えっとぉ……魔王って?」


おじさん達が首を傾げる。何言ってんだこいつって目だ。ボクも首を傾げる。なにそれ。


「あの、魔王をご存知ないのですか?」


緑色の玉のついた杖を持つ女性がゆっくりと話しかけてきた。隣の青色の杖を持つ女性が、さすがにそんな訳……と耳打ちしているけど、ホントに知らない……。


「うん、初耳。君達の目的はそいつを倒すこと?」


「そうです……魔王とは、魔物たちの王で、我々の生活を脅かす悪の存在!しかし、ヤツはなかなか姿を現さないのです……」


「なるほど。とはいえ、だからって、むやみやたらに魔物を狩っていてもあまり意味が無いように思うけど」


「いや、それが古い伝承によると魔王は、四天王と忌族長と呼ばれる配下を倒すことで現れたと、そしてその配下が出てくるのが、多くの魔物が倒された時なのだそうで……」


なるほど……つまり危機感を持たない仲間思いな奴ってことか。チョロそうだね。


「ってことは、実質ボクは魔王以外とも色々戦わないとダメってこと?」


「はい……お願い出来ますか?無理な願い事だと言うのは承知しています。でもどうか……!」


正直なところ悩む。ボクとしては早くみんなのことを探したいし元の世界に戻りたい。だがその方法が分からない。となれば、自分一人で散策するよりも、少しはこの世界について知っていそうな人と行動を共にするのは悪くないかもしれない。少し面倒でも、闇雲に探すよりは確実だ。


「分かった。協力するよ。そうだ、ボクは木荃好葉。好葉って呼んで。実はボク、どうやらボクにとっての異世界に来ちゃったらしいんだ」




ー屍形魁斗


「ここはどこだ、気持ち悪い。……洞窟か?」


薄暗い洞窟に低く活気のない声がこだまする……。

屍形魁斗は、南東の地下に飛ばされていた。


見た感じ近くに出口は無さそうだな。

それよりもなにかが居るのが気になる。おれを狙おうとしているのか、愚かな。


「キィイイイ!」


耳障りな甲高い声を出しながらコウモリが飛んできた。

鋭い歯から滴る血液……ふ、あの程度に傷つけられるとは。


「はぁ、キィキィうるさい。黙れ。『圧殺ノ呪』」


空中でコウモリがなにかに押しつぶされたように破裂する。

頬にその血が付着する。この血、なるほど毒持ち。


「こんな毒がおれに効くと思うか?それにしても久しぶりに嗅ぐな、血の匂い。やはりいいものだ」


おれがそう言って顔に付いた血を服で拭うと、先程までおれを囲っていた無数の影が、恐れをなしたのかか消えていく。

毒蜘蛛、スケルトン、殺人茸……。

まだ居場所は探れるが意味はない。外に出るとするか……ん?なんだ?洞窟の奥から悲鳴?はぁ、出よう……いや、ここで助けてやればおれの信者がまた一人増えるのでは?人助けは気に入らないが、そのためならまぁ仕方がない。


「真下だな。まったく、アイツにこの方法を教わっていて正解だったな」


そう言って手に魔力を込めると、地面を打ち砕き、その衝撃でさらに砕くことで貫通。洞窟の奥深くに潜っていく。


「うわぁあああ!助けてください!!」


振り返ると、全身血だらけの男が腕だけでこちらまで這ってくる。どうやら足が折れているらしい。


「まったくみっともない。ニンゲンが武装したところで勝てる相手では無いことが、お前には分からないのか?」


そう言っておれは上を向く。そこにはどす黒いなにかがいた。先程のコウモリよりは強い。

その時足元でドサッと音がした。うめいていた男が地面に倒れている。気を失ったな。

……なるほど、他にも多くの仲間がいたのか。皆ヤツに倒されたのか?……全員瀕死。最後に弄ぶつもりか……いい趣味だ。


「お前……何者だ?その魔力の量、信じられん!」


気絶した男と戦っていたヤツがなにか話しかけてくる。濁った声、黒くドロドロの体から見える白骨。さらに悪臭まで漂っている。なんだコイツは。正直百歩譲って大嫌いだ。


「黙れ死に損ない。その腐った肉を捨てて朽ちた骨になれ」


「お前、誰に向かってそんな口をきいているのか、分かっていないようだな?」


「あぁ、はっきり言って興味な……」


「そうか!ならば教えてやろう!私は屍の忌族、族長!リーナだ!その腐った脳の奥に刻み込むがいい!」


魔物……リーナが身体をくねらせてそう言う。その度に、身体から黒い液体が飛び散っていく。


なに訳の分からないことを言っている?まずおれの言葉を遮るなゴミが。


「お前……色々言いたいのだが、良いな?」


「あぁ、お前の魔力がどれほど高くても、お前の命は今日までだからなぁ。最期の情けといこうか」


こいつは何を言っているんだ?このおれに情けだと?心底気に入らない。


「はぁ、お前はヒトの話を聞くことができるか?」


「聞いているつもりだが?」


即答だ。こういう奴はそう答えると思っていたが、まさかその通りとは。


「では……屍の忌族、族長とはなんだ」


「知らないのか?水皇(すいのう)様……四天王の一人の直属の配下の一角。選ばれし存在ということだ!」


あー、もうマジで黙れ。うるさい。太谷ぐらいうるさい。というか今話が通じていたか?まともな回答じゃないだろ。

本当に……なんというかめんどうだ。ただでさえ訳の分からないことになっているのに、このような巨大な化け物に上から見下ろされ、訳の分からない会話をするなど不快そのものだ。


「そうか、ではお前の名前だが、ふざけているのか?」


「ふざけているとはなんだ!この名は水皇様直々につけていただいたもの!それを侮辱するとは……!」


いや、おれの個人的な感覚というものだが、体長三十メートル程の、ところどころ白骨が見えているドロドロの肉塊が、自分の名はリーナだと言ったらふざけているようにしか思えない。

その水天王とやらのセンスを疑う。まぁ、このような化け物を配下にしている時点でまともではないだろ。


「まったく、腐った脳は、お前の事じゃないか?その脳すら溶けて無くなったか。愚かなことだ」


これほど揺さぶれば良いだろう。すぐに冷静さを失って本来の力が出せなくなる。時が経てば経つほど焦って手元が狂う。

さて、怒りに支配されているな?言葉を失ってうつむき、小刻みに震えている。その度に身体から肉片が飛び散り汚い音を立てる。


「キサマぁぁぁぁああああああ!!!」


さぁ、始めようか。この気色悪い化け物ごとき、おれの敵では無い。

そうだな、こいつ、闇属性な気がするが……今日尽きるのは、少なくともおれではなくお前の命だ。



ー太谷喜雷&黒幕先生


町に英蔓賢。平原に木荃好葉。洞窟に屍形魁人がそれぞれ飛ばされている時、太谷喜雷は砂漠に黒幕先生と居た。

二人は猛暑の中、汗だくになりながら、そしてなにかを話しながら砂の上を真っ直ぐに歩いていた。


「いやー、暑いですね〜!」


「あぁ、そうだな。お前のおかげで体が焼けて炭になりそうだ」


「それってどういう意味ですか」


それにしても本当に暑いな〜。砂漠にはサボテンとかオアシスとかがあると思っていたけど、なんにもない。


「先生、ちょっと元の姿に戻ってもいいですか?この身体無駄に体力使うんですよ……!」


「やめとけ。今元に戻ったらそれこそ体力を使う上、体の水分が足らねぇ。死ぬぞ」


それもそうか。先生はやっぱり賢いなぁ!あ、そだ。


「ところで先生はこの現象、どう思ってます?」


少し考える素振りを見せてから先生が言った。


「そうだな、やはり奴の力だと考えていいだろう。このようなことが記録に残されていない以上、ここがどこか、これからどうなるのか分からないのが痛いな」


「他の三人の居場所も分からないですしね。あの三人なら余裕で生き残るでしょうけど、再会出来ないかもしれないと考えると……」


「あぁ、かなりまずい。あの三人とお前にしか頼れないというのに。そう考えると、奴も考えたな」


どうやら直接手を下すことはできないらしいからね。

あ〜、喉乾いたぁ……。


「ここって魔法使えますかね……」


「使ってどうする」


「いやぁ、雨でも降らそうかと……」


「……天才か?」


はい!そーです!オレこそ天才!最高!やっぱシンプルに人に褒めてもらえると嬉しいね!!


「それにしても、やけに魔物が多いな……」


確かに、この砂漠、特別何かがあるようには思えないが、それにしては魔物が多い。オレたちに手を出す訳ではなく、じっと様子をうかがっているようだ。


「気になりますね……とりあえず!『天太召鼓(てんたいしょうこ)』!」


オレの周りに、太鼓が三つ召喚される。これがオレの魔法、天太だ!って、一人で何思ってんだ……。


「まぁいいや、雨だねー!よぉし!『天太命雨(てんたいめいう)』!」


勢いよく左端の太鼓を叩く。すると水色の輪っかが太鼓から音の広がりのように出てきた。

しばらくすると空が少しづつ曇っていき、すぐにぽつりぽつりと雨が降り出した。

この雨には生物を癒し、元気になる〜!みたいな効果があるらしい。


「ほぉ〜、意外と効果があるものだなぁ」


「そうですねー!みんな、大丈夫かな……」


突然、雨が止んだ。

おかしいな、オレが自分で止めないかぎり降り続けるはずなんだけど……。

ふとオレは空を見上げた。そこには……!


「まずいな。なんだありゃ」


「魔物……それも、かなり強力な方のようですね」


オレたちの視界に収まらないほどに巨大な、漆黒の『無』が空に浮かんでいた。

多分アイツに魔法を吸われたんだ。というか、あんな魔物聞いたことないぞ?まさか……!


「あぁ、ヤツが新たに創り出したんだろうな。もしかすると、この世界ごと……」


たとえまた別の要因であってもやることは変わらない!そう……。


「アイツを……ここで倒s……うわ!?」


オレが最後まで言い切る前に、オレたちは体が浮いた。

謎の黒い魔物に吸い込まれていく。


「またどこかに飛ばされるのかよぉ〜!」



ー???


「どうやら、上手くいったようですね」


雲よりもはるかに上の世界。そこはいわゆる天国や神の住む世界や、楽園と言われるような場所。あちこちに巨大な岩が浮いており、澄んだ美しい水が滝となって落ちている。

その世界の中でも上の方に、巨大な神殿が浮いていた。

神殿は多くの宝石や彫刻、貴金属によって飾られており、素材である大理石はとても滑らかで太陽の光を眩しいくらいに反射していた。


その神殿の奥に、透明で綺麗な、漆黒の球体があった。


「ここで彼らを食い止めることが出来れば良いのですが、そう簡単にはいかないでしょうね。彼らは、いや、あの忌々しい男と太谷喜雷は未来を……過去を知っている。それが最も厄介だ」


どこかから声が聞こえる。とてもよく響き、また冷たさを感じるものだ。


「誰が、どこに隠しているのだ?この世に存在しては行けない、私の唯一の失敗作であるあの記録は……!」


先程までの恐ろしささえ感じる淡々とした口調が、怒りを感じさせるものへと変わる。


「アイツに頼んでも存在している方が面白いだと?ふざけるな!あの記録のせいで私は幾度となく邪魔をされているというのに……!」


急に周りが夜になる。が、神殿は明るいままだった。正しくは、奥の玉が光っていた。

人工の明かりのない夜空に、豪華で光る神殿が目立つ。


「まさか、王の仕業だと言うのか……?まぁ良い」


少し間を開けて謎の声は言った。


「だとしても構わない。私はこのために準備を何度も何度も何度も!繰り返してきた!五人の反逆者共……!楽しみに待っていろ……この私が今度こそ、お前たちの終わりを……!」


光が消え、雲の上は闇に覆い隠された。

どうも〜!木荃好葉(このうえこのは)です!

(((o(*-*)o)))イエーイ♪


まさかの異世界とは!そしていきなり強敵が相手とは!なかなか不運ですねー。

さらに恐らく五人を狙っているであろう謎の存在も出現!まだ三話目ですよ!?

……ボクちょっと飛ばしすぎたかな?これ、一応考えてたシナリオ通りではあるんだけど。


余談ですがリーナさんの名前の由来は輪廻です。りんね。可愛い。以上!


読んでいただきありがとうございました!


最後になりましたが、コメント等いただけると……!

嬉しいです、助かります!意見感想待ってます♪


それではまた!( ・ω・)/バイバーイ

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