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オレつづ  作者: 木荃好葉
譚生~たんじょう~編
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第一話 振り出し

「さて、次の次元は、と。ふむ、今回でちょうど666回目、悪魔の好む数字だったか?まったく、そろそろアイツを止めて欲しいものだが……せっかくいろいろと用意したと言うのに。ただその先、私の望む未来が本当に正解なのだろうか?神すら知りえぬとは、非常に面白い。さて、今回は……いや、一度彼らに全て任せてみようか。あえて、“自分”を解放しよう」


オギャー!オギャー!オギャー!!


(さい)は投げられた。駒が進み始めた。……おや、これは残念……さすがは鬼門。またもや地獄か」



俺は英蔓賢(えいづるけん)。この春、ある男に誘われて、念願の学校に通うことになった。

今までは少し事情があって学校には通えていなかったが、そんな生活も今日で終わりを迎える……!

怪しいとは思う。見るからにただの中年の、こう言ったら悪いかもしれないけど、Theおじさんに誘われたのだから。メガネが妙に反射して目が見えなかったし。その上、学費ゼロ、最低限の生活の保証って、さすがにおかしいと思う。どんなボランティアだよってさ。百二十パー詐欺!だよな。

……でも、あの人は、わざわざ人里離れた山奥の俺の家まで来て、真剣な顔で俺が必要だと言った。俺は、もしかしたらと思ったんだ。


まぁ……やはり俺は騙されていたようだ。


渡された地図の場所に行くと、そこには廃校が建っていた。鮮やかな桃色の桜の木が風に揺られて校舎を覆い隠す。校舎は雲の影に隠されて、まだ朝だと言うのに、そこだけが夜かのように思えた。

くすんだ灰色の、ヒビの入った校舎。朝だというのに静まり返った町。俺はそれらに、どこか不気味さを感じていた。


「そうだよなー、そうだよなあー!さすがに嘘だよなー!まったくいい趣味してるよあの人。まったくどういうつもりだ?」


俺は一人、大きな声でそう言った。寂しくて、悔しくて。そういった負の感情を隠すためにあえて大きな声で言った。

無音の町に声が響く。


おかしいな、人は住んでいるはずなのに……なんの音もしない。


「はぁ、失ったものは無いと言えば無いし、しょうがない、帰るか……帰っても一人なんだけどな」


そう呟いて校舎に背を向けたちょうどその時、後ろから、声が聞こえた。


「おーい、君!英蔓君だよね!帰らないでー!」


名前を呼ばれた上、とてもうるさかったため振り返ると、校舎の二階で誰かが手を振っていた。

少年のような声で、少しうるさいなと思ったが、窓から見えるその声を出していると思われる存在は明らかに人間じゃなく、人形だった。


「え、なになに?怖いって……」


再び背中を向ける。こういうのは自分から関わらない方が正解なんだ。


「ちょっとまったぁー!オレに気づいてるよね!ね!帰るなー!うちの生徒でしょー?」


びっくりした〜、え、うるさ……ここまで割と距離あるよ?それでもこんなにうるさいって、どういう声量してんだ。

え、とりあえず反応してみる……?ヤバかったら逃げれば良いか……これだけ距離もあるし。


「えっと、君はー?」


「わぁ〜!やっと話してくれたー!え?オレー?オレは喜雷!太谷喜雷(たいだにきら)!こっち来て〜!一年三組ね〜!」


「え、あ、わ、分かったー!」


はぁ、大きな声を出すのは疲れる。アイツすごいな。

一年三組……行ってみるか……?まぁ、なにかあれば帰ればいいだけだし?正直好奇心が勝ってしまっているし?


門をくぐると、一気に肌寒くなった。ただそういう思い込みだったのかもしれない。しかし道は亀裂がはしっており、雑草に覆われているため、普通、誰であっても恐怖を感じるだろう。別に俺はビビりじゃない。普通だ。


明かりが灯っておらず、薄暗い校内に足を踏み入れる。

途中、暗くて気づけなかった足元のコケで転んだことは、死んでも永遠に秘密にすることを決めた。

あちこちの壁から鉄骨が見えていたが、落書きは一切なかった。また廊下が塞がっていることも多く、ただ二階に行って一年三組を探すだけなのに、妙に苦労した。


「ふぅ、やっと着いた、一年の、三組。それにしても酷いな、ここ。あちこちに椅子やら机が放置されてたし、あの人形……太谷?アイツここに住む妖怪とかじゃないよな。さすがに腹話術だよな」


がら


「お、遅かったじゃーん!まってたy」


ばたっ


ひとつわかった、太谷は妖怪か魔物だ。多分。いや、ガチで人みたいなやつが喋って動いてた……腹話術じゃない。まぁ、言われてみれば腹話術であんなに大きな声が出せるわけないよな。


「なんで閉めるのー?開けろぉおぉ〜」


扉が叩かれる。しかしドンドンじゃない、トントンだ。

ダメだ、可愛いと思うな、相手は少なくとも人間じゃない。でも、コレなら開けても襲われなさそう?あるいは勝てそうか?


がら


「えっと、太谷……?って」


ばたっ


最悪なことに、俺は、見てはいけないものを見てしまったようだ。

あの柔道着のようなものを着た人形(太谷)は、妖怪でも魔物でもない。呪いの人形だ。

というのも、扉を開けた時に教室の後ろの方で……床に魔法陣を描いてロウソクを立て、なにやらブツブツ言っている男が居たんだ……!確実に操ってるだろコレ!


教室の窓は開いていた。カーテンがゆらゆらと動いていた。だから教室は電球がついていないとはいえ明るかった。しかし不気味なことに、その男の場所だけが暗かった。そばに落ちていた桜の花びらは枯れていた。うん、帰ろ。


「間違いない、早く逃げ……!」


「なぜ逃げようとするんだ?扉の奥のニンゲン。お前も怪しい男に言われてここに来たはずだろ?それに、お前のせいでおれは儀式に集中できない。いい加減にしろ」


低い声、さっきまでの人形じゃない……儀式……そうか、魔法陣を展開していた人!終わった。


「お前……なるほど、だから呼ばれたのか?これで四人目……」


「うん。英蔓君で全員!ほらぁ、入ってきてよ……」


俺は覚悟を決めた。最悪、抵抗すれば……。俺にはその力がある。この家系なのに臆病だと言われてきた俺だが、もう違う。と思いたい。


がら


「ん?なぜ震えている。あぁ、安心しろ、おれは危害を加える気はないからな」


別に震えてなんか……いた。でも……その後の言葉も本当のようだな。その全身黒ずくめで、黒いパーカーを着た男の子は両手をあげ、真っ直ぐに俺の目を見ていた。

……あれ、四人?


「あの、今君、四人って言ったよね、あと一人は?」


「なにが君だ、馴れ馴れしい。おれは屍形魁斗(しのかたかいと)。あと一人ならあそこだ」


そう言って示されたところは窓。えーっと、屍形?誰もいないと思うんだけど。窓に人、幽霊……?


「おーい。四人そろったぞ。そろそろ起きろ」


そう言って屍形は窓の方にゆっくりと……いや、ゆらりと移動した。意味が分からないかもしれないが、本当にゆらりと言う言葉が合う動きだった。まるで煙のような……。

窓の外を見た。そこには、大きな満開の桜の木が生えていた。そして……。


「ん〜、ふぁぁあ、おはよぉー……」


その木の枝の内の一本に、一人の男子……いや、女子?が寝転んでいた。

見た目はショートカットくらいの可愛い女の子。腰に緑の布をスカートのように巻いて、緑の紐で結んでいた。シンプルな薄い茶色の服のポケットには、青いシャーペンが入っている。

でも声は少し高めな男子の声……?


「あ、きみが最後の一人?なんか変な感じだね?」


その子は髪につけた金色の葉っぱのピン?を揺らして起き上がった。首には∞を○で囲ったシンプルなデザインだが、金色の派手なネックレス。古いのか、少しキズがついている。

もしかして、この見た目、喋り方で意外とチャラい?

うーん、こいつは真面目なのか、その真似をしているだけなのか……。校則とか大丈夫なのか?制服はないみたいだけど。


「おはよー。きみ、名前は?ボクは木荃好葉(このうえこのは)。よろしく〜」


「え、あぁ、俺は英蔓賢。木荃か……、よろしく」


「ん、よろしく〜。ふぁあぁあ……」


「木荃……お前昨日何時に寝た?」


「ん?なんて?ボクは男だよぉ?」


「あ、いや……まいっか。男子なんだ、やっぱり?」


心の底でクラスに一人くらいは女子がいて欲しいと思っていた俺はこっそり悲しんだ。全員男(一人人形、一人呪術師、一人寝ぼけ)って、俺の青春が……。


「そうだよー?え、そうだよね、魁斗くん」


そう言って好葉は緑の綺麗な目を動かした。オレンジと紫の光が輝く。いやどういうことだよ。


「ダメだ、いちいちつっこんでいられない……」


「あぁ。好葉は男。まぁ、好意なら好きに……」


屍形が俺たちから目を逸らし、またゆらりと歩いて立ち去った。


「こ、好意ぃ?」


「ちょ、ボクは嫌だよ?こんなヤツ!頭になんか輪っかつけてるし!」


あ〜、ウチに代々伝わるなんか頭につける……であろうのクリーム色の輪っかのことか。確かにこれつけてたな。いつもの事すぎて忘れてた。

ちなみに金属のようだがまったく重くない。帽子みたいな感じ。あー、あるかな〜っていう感じ。うん。


「いや関係ないだろ、それを言ったら木荃も頭に葉っぱつけてるじゃないか!」


「はぁ?ボクのはヘアピンだし!ネックレスもいいでしょ?頭に宝石つけてるやつよりは!カーバンクルかよ!しかも髪型!真ん中で真っ二つに分けやがってぇ、せんたーわけってヤツ?そんなに宝石を強調したいの?」


「良くない!それになんだよカーバンクルって!それに髪型は別にいいだろ!」


「一つずつにしてよ……えっと、カーバンクルは頭に宝石つけてる小動物!可愛いんだ〜って、え、知らないの?」


「知らないって!言うなら魔物じゃんか!」


「……まぁそうだけど!」


はぁはぁ、ダメだ、完全に言い合いになってしまっている。


確かに頭につける輪のど真ん中に赤い宝石をつけるのはなかなか変わったセンスだと俺も思う。まぁそれが普通で育ってきたのだが、もしかして本当は頭に付けないのか?すごい頭にピッタリなんだけど。


「おれにはつっこまないんだな。ふぅ」


屍形が呟く。ってことは……つっこんで欲しいのか?どこを?


「屍形は帽子かぶってるだけじゃ……」


「なにもつけてないのが太谷だけなのか、このクラスは」


屍形は俺の言うことを完璧にスルーしてそう言った。これから上手くやっていける自信がもうないんだけど……マジかよ。


「どやぁ。えらいでしょー!マジメ!!あ、先生来るよ」


真面目では……なさそうだけどな。むしろこう言うのはアレだけどアホっぽい……。


コツコツと足音が聞こえる。本当に来たようだ。


がら


「おぅい、お前ら、席つけよーって、そういやどの席か言ってねぇな」


俺をここに誘った怪しい男が教室に入って来た。やっぱりあの人が先生をやるんだな。


「座れ。ここ、英蔓。こっち木荃。これ屍形。それ太谷な」


俺たちは一度言い合いを終わり、席につくことにした。右から、俺、木荃、屍形、太谷。


「よし、それじゃぁ早速だが始めるぞ。起立、礼、着席っと。じゃぁそうだな、自己紹介!英蔓からな」


俺は展開が急だなと思い、少しうろたえた。


まぁ、立つか?


「えっと、改めまして、英蔓賢(えいづるけん)、十四歳です。運動が好きです、よろしくお願いします!」


「改めてってことは、お前ら一度自己紹介したのか。まぁいいか、次、木荃」


隣の木荃が立つ。ボソリと、こうかな?って言ってた。疑問に思うことなんてあったかな。

もしかしたら木荃も自己紹介、今日が初めてだったのか?


「えっと、木荃好葉(このうえこのは)、十五歳!自然が好き!よろしく!」


あ、俺のがテンプレになった。へー自然か……いいよな。俺の家は山奥すぎるけど。

続いて屍形が黒い帽子を優しくおさえて立つ。


屍形魁斗(しのかたかいと)。十四。よろしく」


太谷がニヤつく。なに笑ってんだ?あ、違う、キレてるんじゃない。不思議なんだよ……笑ってる理由が。


「じゃぁ最後太谷……」


「ふ、やっとオレの出番か……!待ちくたびれてニヤついちまったゼ……きらーん♪」


ごめん、それ大声は……。待ちくたびれてニヤつくものなのか、それになに最後のきらーん♪って!


三秒で、いや二秒で描けそうな顔文字みたいな顔の、膝くらいまでしかないような大きさの人形が、必死で机にしがみつきながらカッコつけてるとかヤバいって……カオスだよ。


プルプル(' ▽ ')<え……?

U--U ※太谷喜雷


「えとー、どもー!太谷喜雷です!よく親からうるさいって言われて育ったけど、うるさくないよね!ね!!これから一年間よろしく!あ、ちなみにオレも十四!!」


「「「「うるさい」」」」


この時の太谷の、少し悲しそうな引きつった笑顔を、俺は忘れないだろう。でも三秒で描けそうだが。


(;▽;)ヒドイヨ、ミンナ


「おぉ、よしそれじゃぁ、これからよろしくな」


「あれ〜、先生はー?ボク先生の自己紹介、けっこー気になってたんだけど?」


先生が一瞬固まる。メガネを指で押し上げる。


確かに先生、自己紹介してないよな。今のままだとただの怪しいおっさんだぞ。


「……あ〜、悪いが、今お前らに言えることはない。そうだな、名前も勝手に決めてくれ」


ますます怪しいじゃん!それでホントに大丈夫か?名前も……てさ。


「え〜?じゃぁ……黒幕で!こういうのって意外と先生みたいなのが黒幕なんだよ〜。黒幕先生でいーでしょ?」


平然と、当然のように決めたなぁ、木荃。これでもし黒幕先生が黒幕だったらどうすんだよ……なんかしっくりくるけどさ。



「今のところ大きな変化は……なしか。手を出さないと言っておきながら、あの後すぐに手を出してしまった……。やはり、美しい秩序は嫌いだ」

どうも〜!木荃好葉(このうえこのは)です!

(((o(*-*)o)))イエーイ♪


一話目にしてなかなかおかしなことになってきましたね〜(おかしくしたヤツ)。

あ、何かいろいろ分かっても、それはコメントなどに書き込まず、自分の心の中に留めておいてください!お願いします☆


読んでいただきありがとうございました!


最後になりましたが、コメント等いただけると……!

嬉しいです、助かります!意見感想待ってます♪


それではまた!( ・ω・)/バイバーイ

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