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短編 61 青春ひゃっはー

作者: スモークされたサーモン


 男の子は三日経つと別人になるらしい。ふむ。書いてみるか。


 そんな感じでこの短編は生まれたのー!


 あれだね、本当にある話っぽい。大人になって激変とか。




「好きです! エッチしてください」


「死ね」


「何故に!?」


 百回目のプロポーズも失敗に終わった。これでこの学校の女子は全てプロポーズしたことになる。あとは教師と事務員の女性を残すのみ。流石に人妻にプロポーズはどうかと思うんだ。まぁやるけど。


 ほら、自分は中学生でありますから。

 


 友達から『スケベェ』と呼ばれる自分は女の子が大好きな中学生。


 三度の飯より女の子が好き。


 あの匂いを嗅いでいるだけで飯も要らない、そう思っている。女の子の上履きの匂いですら興奮する。体育の後なんか最高だと思うんだ。女の子の後をつけて残り香を楽しむのが今の日課だ。


 特に髪の長い子は良いね。最高だね。


 でも何でかな、自分はとても嫌われている。女の子達に、ものすごく避けられている。自分はこんなにも女の子が大好きなのに。


 自分も一応最低限の我慢はしてるんだ。リコーダーペロペロもしないし、物を盗んだりもしない。それは流石に駄目だと思うから。


 匂いを嗅ぐほうが遥かに興奮するし。椅子の匂いを嗅いでも木の匂いが強い。机の匂いはあんまり興奮しないものだし。


 やはり本体が良いと思うんだ。女の子って良い匂いするし。


「好きです! エッチしてください!」


「嫌です」


「何故に!?」


 隣に座る女の子からまたしても拒絶されてしまった。でも窓を開けてると彼女の匂いが風に乗って流れてくるから、まぁ良いんだけども。


 どんなに嫌がっていても隣の女子の匂いは既に知っている。一月で三回もシャンプーもしくはリンスを変えていることも把握済みだ。


 毎日が幸せで勉強も苦にならない。学校って最高だと思う。特に体育のあとはパラダイスだ。


 夏の教室なんて天国過ぎるだろう。透けるブラ。見える脇の下。汗ばむ首もと。太ももの白さに目を奪われる。


「好きです! 汗を舐めさせてください!」


「死ね」


「何故に!?」


 匂いを嗅ぐということは舐める行為とほぼ同じなのに!?


 まぁ無理矢理は良くないよね。うん。匂いを嗅ぐだけで僕は幸せさぁ。透けブラ最高です。スポーツ女子、最高すぎます。


 こうして自分は中学二年生の夏までこんな感じで女の子を追いかけまくっていた。


 そして中学二年の夏休み明け。


「……生きててスイマセン」


「死……へ?」


「……生きててスイマセン」


 九月の教室。隣の女子に土下座をした。彼女はタイツを装着していた。自分のせいである。まだ暑いのに上着も羽織っていた。やはり自分のせいである。


「……申し訳ありませんでした」


「……え、覗きとかしたの?」


 女子から殺気が出た。それも当然の事だろう。クラス全体がざわめいた。


 クラスの空気は最悪。でも答えなければならない。


「……してません」


 自分のしてきたこと、これの意味を自分は理解した。


 そして……死にたくなった。


 ひとなつ。


 このひとなつで自分は理解した。


 自分のしてきたことを理解出来るようになったのだ。


 なんか急に理解力とか常識とか身に付いた。自分でも驚くほどに。そして知ったのだ。自分の罪深さを。


「……もしかして奴のパチもん?」


「……本人です」


 土下座して埃っぽい床に額を着けたまま答えた。かつての自分なら平気な面をしてここで頭を上げてスカートを覗いただろう。今もその衝動はある。でもそれは『破廉恥』である。

 

「……何を謝ってるの?」


「……今まで多くの人に嫌な思いをさせてきた、それを自覚致しました。特にあなたには……今も大変な思いをさせていると」


 夏なのにタイツ。夏なのに長袖。これはもう拷問でしかない。


「……奴のパチもんね? というか別人よね?」


「本人です」


 この夏で体重がごっそり減った。確かに見た目は大きく変わりはした。頭も丸めた。でも罪は無くならない。


「……この罪をどう償えば良いのか、愚かな自分には分かりません。とりあえず結婚して責任を取らせてください」


「やっぱりお前かっ!」


 頭をズゴンと踏まれることになった。ご褒美……いや、これは罰。決して喜んではいけない。


 この日から自分の贖罪の日々は始まった。謝罪の行脚を始めたのだ。まずは先輩方への挨拶回り。



「申し訳ありませんでした!」

 

「ひぃ!?」


「踏むなり蹴るなり好きにしてください!」


「……なら蹴る」


 謝罪の為に土下座をしたら、先輩の大半は蹴ってきた。特に運動部は容赦なかった。でもそれも当然。夏前の自分は三年生の女子については既に進路先まで把握していたのだから。


 ストーカーよりも、むしろストーカー。


 今ならばそれが分かる。これは……気持ち悪い。声優を目指す先輩には声優事務所のパンフも渡していた。


 ストーカーよりもストーカー。


 その先輩は思いっきりドタマを踏んづけてきた。仕方無い。仕方無いのだ。多分紹介した事務所は全て落ちたと思うし。それはそれで本人の努力が足りなかったのだ。


 何であのときの自分はそこまで考えなかったのだろうか。声優を目指していた先輩は普通に進学することになったらしい。余程の事がオーディションとか事務所見学会であったのだろう。


 今なら分かる。先輩に声の才能は無いって事が。


 あのときの自分は何も分かっていなかったのだ。善かれと思ってした事が、決して善い結果をもたらさないということも。


 三年生の行脚はこうして終わった。頭には上履きの跡が多数着いた。仕方無い。全然嬉しくもない。当然だ。


 別の日、きちんと頭を綺麗にしてから、今度は一年生の行脚に赴いた。一年生は優しかった。誰も蹴らずに行脚は終わった。踏んできた子は少し居た。ほとんどの女子は遠巻きにしてすぐに離れていった。


 仕方無い。仕方無いのだ。入学直後から自分は彼女達に、しつこく付きまとったのだ。彼女達の心には消えないキズが出来ているのだろう。この罪は重い。


 そして遂に謝罪の行脚は同学年の女子へと移った。


 二年生の女子は……ハードだった。


「触るのも嫌だから棒で殴る」


「……はい」


 掃除に使うホウキでフルボッコにされた。仕方無い。仕方無いのだが少しやり過ぎな気もしないでもない。


 だが、それだけの事を自分がしていた。その事実を自分は更に理解した。


 クラス単位でのフルボッコ。それを三回。頭には棒状のアザが幾つも出来た。いつもは大人しい子がホウキでバシバシと叩いてきた。仕方無い。仕方無いのだ。彼女は自分のお気に入りだった子なのだから。むしろ殺されても文句は言えない。


 最終的に教師が止めに入ってフルボッコは終わった。


 だが罪は無くならない。行脚の旅はまたするつもりである。


「いや、すんな」


「だがこんなものでは到底謝罪とは……」


「目隠しと鼻栓も止めろ。見ててウザい」


 隣の女子に怒られた。行脚が終わると自分は目隠しと鼻栓を常にするようになった。見ることも嗅ぐ事もこれならば出来ない。己の浅ましさは誰よりも理解している。悪いことと分かっていても見てしまう、嗅いでしまうのだ。


 流石に目をくりぬき、鼻を削ぐ事は出来ない。ならばと目隠しと鼻栓をしていたのだが、隣の女子に少なからず迷惑をかけていたようだ。


 教師はみんなスルーしたので大丈夫だと思っていたのだが……。


「自分の事は小粋なインテリアと思って……」


「さっさと取れ」


 ……隣の女子は怖かった。かつての彼女でもここまでのドスは無かった気がする。


 恐る恐る目隠しと鼻栓を取ってみた。


 九月である。まだまだ暑い季節。学校は灼熱の世界でもあった。室温30度。クーラーを使ってても何故かこの設定。他のクラスではジャージで授業を受けていると聞く。うちのクラスはみんなきっちりと制服を着ていた。勿論自分のせいだ。


 今も目の前には夏なのに長袖にタイツを履いた怒れる隣の女子が…………が?


「……なによ」


「……半袖ですやん?」


 隣の女子は半袖だった。そして……透けて見えていた。ピンクのブラが。


「……あの、見えてますよ?」


「見んな」


「あ、はい」


 とりあえず授業を受けた。視線は黒板から離さない。でも周辺視野に嫌でも飛び込んで来る。


 ……みんな半袖だ。


 そしてナマ足だ。


 いやいや、おかしい。いや、おかしくもないのか。夏ならばこれが当然。


 でもなんで?


 謝罪はしたが、自分という人間は変わらない。今も透けブラをガン見したいのを舌を噛んで耐えている。女の子の汗の匂いを思いっきり深呼吸したいのも舌を噛んで耐えている。


 ……なるほど。これが罰なのか。唐突に理解した。彼女達は、当然の事ながら自分を許しなどしてはいない。ここで自分が欲望のままに流されれば彼女達に謝罪した事が無意味な物に成り下がる。


 自分はまだ謝罪の最中である。


『お前の謝罪は本気なの?』

 

 そう問われているのだろう。ならば自分の取るべきは克己それのみ。たとえ舌が千切れようが耐え抜く。それが本当の意味での謝罪であり更生となるのだろう。


「……あの、先生をそんなに見ないでもらえます?」


「……見てるのは黒板です」


 開始五秒で終わった。みんなの視線が超痛い。


 いや、教師も何で今日に限って透け透けなブラウスになっているのかな。いつもは芋ジャージだというのに。


「……どこ見てんのよ」


「黒板です」


 隣の女子のドスが刺さる。すごいよ。死ねと何度も言われてきたけど今のが一番震えたよ。


「……あの、やっぱり目隠しは……」


「あぁ?」


「なんでもないっす」


 隣の女子は何があったのだろうか。夏の前の彼女はこんなにも刺々しくは無かったと思うのだが……はっ!


 そういうことか。そういうことであったのか!


「……なによ」


 思わず彼女に優しい視線を向けていた。そしてバレた。早かった。


「……大丈夫。人生は幾らでもやり直しが聞く……と仏陀も言っていた」


 かもしれない。罪は罪としてな。彼女もひとなつで何かを悟ったのだろう。自分も世界が一変したかと思ったからな。うむうむ。仏陀先生、ありがとう。


「とりあえず殴らせろ」


「……はい」


 隣の女子はバイオレンスに目覚めたのかなぁ。まぁそういう世界もあるんだろうな。うん。自分には分からないけど、分からないからこそ、そういう事もあるんだろうねぇ。


「……先生も何となく殴りたいです」


「……はい」


 先生も目覚めた……いや、普通に憂さ晴らしか? まぁこれも自分の蒔いた種。その責任は取らないといけない。これが業というもので……


「あ、私も殴りたいです」


「じゃ、私も」


「あ、ホウキだす?」


「……なんかグーで殴りたい気分なの」


「だよねー」


 ……だ、だよねー。うん。とりあえず……フルボッコタイムになった。みんな拳の作り方をちゃんと知っていた。


 ……だよねー。





 あれから少し経った。


 あれである。あれ。


 隣の女子から告白されたあれである。そして他のクラスの女の子からも告白されたあの日のあれ、である。この子はお気に入りだったあの子な。


 そして先生からも責任を取れと言われたあのド修羅場のあれ、である。この先生は独身アラフォー先生な。


 先輩や後輩からも告白されて修羅場の域を越えた『ナニカ』になったあれ、である。


 良くないね。本当に良くないよね。ほら、いくら青春とはいえさ、若い男女が乳繰り合うのはどうかと思うんですよね。ほら、みんなまだ中学生ですし。三人先生がいるけどそれも良くないよね。先生だし。


「あぁ?」


 彼女その1に睨まれた。


「……なんでなん?」


 自分は……自分は性欲しか考えてなかった。女の子の事なんてまるで考えていなかった。エッチして子供が出来ても……いや、子供が出来ることすら頭に無かったのだ。ただ女体を楽しみたい、ただそれだけで。


 浅ましい人間。自分の欲望しか考えない利己的な人間。それが自分なのだ。


 それを知った自分は吐き気を覚えた。あまりにもクズ。それが自分であったのだ。生きてる価値もない、この世から消えて然るべき存在。そんなクズ野郎が自分だったのだ。


 だのに。


 だのにー!


「好きだとあんなに言っていたのですからちゃんと責任は取ってください」


 彼女その2に叱られた。


 それを言われるとぐぅの音も出ない。出ないのだがちょっとおかしいよね。おかしいと思うんだよ。


「……あのですね、それにしてもこれは……あの、流石に如何なものかと」


 何故か女の子にモテモテ。いや、モテモテというか、責任を取れと言われているのでモテモテではなくて自業自得?


「ハーレムよ。喜びなさい。私も両親が喜んでいるわ」


 先生その1が笑顔でとどめをさしてきた。この先生は一番大人の先生だ。アラフィフ……まだ四十代!


 これが……これが罰なのだろうか。ようやく正道を知ったというのに自分は……自分は唾棄すべき破廉恥な道を歩んでいる。


 よろしくない。とてもよろしくないと思うのです。ほら、こういうのはせめて一対一で清く正しく交際を……。


「あれだけの事をしておいて謝ったらそれで終わり……なんて思ってないですよね?」


 後輩からも怒られた。


 今日は進路説明会。二年生で行われる進路相談の場でもある。


「とりあえず進学校に進むとして……手に職は必須よね」


「国家公務員を目指しましょうよ」


「これだけの扶養家族がいるとなると無理かも。一応公務員だし」


「となると国家資格を取らせて高給取り?」


「人の金で金儲けをするFXトレーダーとかが良いんじゃない?」


「今からみっちり叩き込めば……」


 ……自分の進路相談会なのですが、自分の入り込む余地がありません。女の子達が楽しく会話しておられます。


 ……仏陀先生。


 自分はどうしたら良いのでしょうか。なんか……すごい話が展開されてます。


「みんな子供は一人は産みたいよね」


「子供に掛かるお金を計算すると……うわぁ」


「老後も入れるとあれね。幾つか道を作ってないと危険よ」


「ではとりあえず進学校に入れて……そこからは法律と経済ね。機械操作も出来ないと」


 仏陀せんせー! 自分は機械が苦手であります! 何か良い知恵をー!


 と、天国にいる仏陀先生に祈りを捧げていると彼女その1に睨まれた。


 もしや心の中も読めるのだろうか。


「今の成績ってどうなのよ」


 違った。助かった。


「……そこそこ?」


 上位ではない。そして下位でもない。わりとそこそこ。最近はなんか上がってきてる気はする。


「……みっちりしごくわよ」


「あの、自分、機械が苦手でして……」


「これから覚えれば良いんです。誰でも最初は知らないし、出来ないものです」


 ……仏陀先生。これは……もしかして逃げられないって奴ですかね。蜘蛛の糸とか垂らして欲しいっす。


 あ、そだ。


「実は出家でもしようかと……」


「なるほど、宗教を立ち上げる訳ね……金儲けなら最強だわ」


「認可さえ取れれば、あとは左うちわです。中々にえげつない事を考えますね」


「じゃ、そっちも考えつつ、ひとまずは高校受験。いいわね?」


「え、あ、はい」


 こうして二年生の進路相談は終わった。


 自分の醜さを知った年。遥か先の未来まで決定されてしまいました。


 馬車馬です。馬車馬のように頑張らないといけなくなりました。


 仏陀先生……。


 とりあえずキノコ、食べてみようと思います。


 生きていたら頑張ります。


 エノキで食中毒にはならないと思いますので、もうしばらく天国でお待ちくだされ。



 今回の感想。


 ラブコメではないし、ハーレムとも言いがたい。まさに『責任取れ』そんな話に落ち着いたか。


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