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09 特使


 国境の街、ジオーネ。


 戦争当事国双方不可侵の街は、いつの頃からか平和の象徴とされていた。


 いかなる理由があろうとも争いを持ち込んではならないという取り決めは、考えてみれば、戦争を操る悪党の隠れ家としては最適な場所。



「あの街を守る自警団こそが、連中の私兵だったのです」


 リシェルさんの声は、怒りに震えている。


 不可侵のため、外からの軍事的介入は不可、


 自警団こそが敵であるため、街中での協力者は皆無。


 手詰まりだとは思いたくないが、流石は長きに渡り悪事を隠匿してきた連中、少し感心した。



「皆さん、私たちが何者なのかをお忘れか」


 モノカさんが、不敵に微笑む。


「今までと、何ら変わるところは無いのです」

「特使勇者の特使活動を、邪魔する者こそ、悪」

「もし今までの情報が全て間違っていて、ジオーネに巣食う者共が善人だったとしたら、全てが終わった後で喜んで糾弾されてやりますよ」

「今の私に出来ることは、ツァイシャ女王様や巡回司法官の方々を信じて、ジオーネ目指してまっしぐら、です」



 チームモノカの強さの秘訣が、少しだけ、分かった気がする。


 モノカさんの周りに、ツワモノたちが集う理由も。



「それでは、速攻勝負のために、急ぎ作戦会議を」


 

 モノカさんたちが作戦会議をしてる中、リシェルさんから呼び出された。


「シナギさんに伝えたい事があります」


 ふたり、居間を出て、内緒のお話し。



「あの暴漢共から情報を得た方法について、です」


 確かに、戦争屋共の内部事情は、やけに詳細。


 まるで生きた捕虜から聞き出したかの如く。



「死人から情報を得る禁術を使いました」


 そのような秘匿情報を、なぜ、俺に。



「私たち司法官の皆も、もちろんツァイシャ女王様も、想いはひとつなのです」

「モノカさんとお仲間の皆さんたち、そしてあの小さなマクラさんまでもが、命を賭けて平和のために尽力している姿を、心の底から尊敬しているのです」


 どう見ても可憐な乙女にしか見えないリシェルさんの、まなざしには、どんな武芸者にも劣らぬ覚悟の光。



「シナギさんが、連中を生け捕りに出来なかった事を悔いている、と伺っております」

「どうか、判断を誤らないでください」

「シナギさんが、命懸けで、マクラさんを、救ってくれたこと」

「私たちにとっては、それ以上に重要な判断材料などありませんっ」


 リシェルさんの、ひとみに、涙。



「俺は、これからも、いろいろと迷ってばかりだと思います」

「今、ひとつだけ言える事。 乙女を泣かせるような極悪人にだけはなりたくないのです」

「お願いですから、泣かないでいただけると、悪党にならずに済むのですが」


 リシェルさんが、お顔を両手で隠して、ぱたぱたと走り去りました。


 成否は判断出来かねますが、俺なりに頑張った、はず。



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