07 和らぎ
場の空気は、先ほどよりも和らいでいる。
雑談的な、世間話的な、語り合い。
「なにゆえ『ぶなしめじ』なのでしょうか」
クリスさんからの問い、ごもっとも。
「ご先祖さまの大好物であったとしか、伝えられておりません」
「俺はきのこ類は大の苦手なので、あしからず」
クリスさん、微妙な表情。
「私たちも、常に不殺を貫けてきたという訳では無いのです」
「むしろ、業前が足らずに結果として不殺となってしまった事も多いのです、恥ずかしながら」
モノカさんの複雑な表情は、恥じらい、かな。
今この場に居るのは妙齢の女性ばかりである事を、思い起こさせる表情である。
いかん。 すぐにでも、カミスさんの側に退避せねば。
「先ほどのモノカの状態を、僕たちは『駄目駄目モード』と呼んでおります」
「感情が高まりすぎて、本人にも制御不能となった状態、ではないかと」
「できれば、優しく見守ってあげてほしいのです」
カミスさんがモノカさんを見つめる優しいまなざし。
実はモノカとの婚約は世を欺くための仮そめのものなんですと告白されたが、いかに俺が朴念仁であろうとも、あのまなざしの本意に気付けぬほどの愚か者では無い、はず。
「シナギさま、寝屋の用意が整っております」
メイドのフナエさんの案内で、二階の客室へ。
旅の間は得られなかったふかふか布団と安らげる寝所。
この先どうなるか、
まさに、旅の途中。