06『ぶなしめじ』
「皆さんの覚悟、理解出来ました」
「ただ、俺が行動を共にするに値するのか否かを、これから語る内容で判断してもらいたいのです」
そして、自己語り。
幼き頃からの修練三昧の生活でそれなりの武を身に付けたとは言え、未だ修行中の身である事。
例の悪漢たちとの闘いの結末こそが、不殺を貫くチームモノカとの共闘を妨げるものである事。
「いえ、私が見た限りでは、あの不埒者たちの末路こそがシナギさんの実力を証明するものでありましょう」
クリスさんの言葉に、俺の事情を嫌でも明かさずにはおられぬ。
「あの刀傷の件でしたら、俺の業前ではなく、全てがこの刀が成した結果かと」
テーブルに、刀を置いた。
妖刀『ぶなしめじ』
先祖代々受け継がれてきた宝刀、いや、来歴を鑑みるに、やはり妖刀と呼ぶべきであろう。
古より故郷の国を守護してきた古龍が、ある時突然乱心し国をも滅ぼす勢いで暴れ出した
我が祖先の武人がそれを打ち取った際に、首を切られた断末魔の古龍より掛けられた『首以外は切れぬ』呪い
「文字通り、首以外は切れぬのです」
「首以外の、どこを切ろうとしても打撲のみ」
「ただし、首がある者であれば、四足獣でも無機物のゴーレムでも、必ずやその首を一刀両断に」
一同、俺の言葉に、静まり返る。
やはり、共闘など叶わぬ事と、テーブル上の刀に手を伸ばす。
「素晴らしいです!」
?
モノカさんが、何故か、興奮しておられる。
「つまりは、峰打ちし放題の神アイテム!」
??
モノカさんの言葉の真意、今の俺ごときではすぐには飲み込めぬ。
「まさに不殺の真髄を体現しているのです!」
いや、打撲のみだからといって死なないとは限らないのですが……
『すみません、シナギさん』
『あの状態のモノカについては、後ほど説明しますので』
カミスさんからのひそひそ話し。
それでは、まあ、後ほど。
「俺の技量については……」
モノカさんが、にやりと微笑んだ。
『今の私の全力を超えることこそが明日の私の目指す道』
「私の友人の言葉です」
「今日のシナギさんが、己が力に不足を感じていればこそ、明日のシナギさんはより高い位置に居られる事でしょう」
「私たち全員が、未だ道の途中、なのです」
道の途中、か。
すとんと、気持ちが落ち着いた。
「これから宜しくお願いします」
深々と、頭を下げた。