04 覚悟
今、静かになった居間にいるのは七名。
この屋敷の主人、モノカさん。
モノカさんの婚約者、カミスさん。
前王ライクァの姪御にしてカミスさんの婚約者、クリスさん。
エルサニア城勤務のメイド、ササエさん。
エルサニアの巡回司法官、リシェルさん。
モノカさんの隣人にして友人、ミスキさん。
そして、俺。
「シナギさんに、まずはお聞きしたいことがあります」
「これから話す諸々の事情は、必ずや、知れば後戻りできなくなる厄介ごとの元となります」
「命に関わるほどの、です」
「もし、今まで通りの暮らしを続けたいのであれば、このまま二階の客室へとご案内させていただきますが……」
真っ直ぐに俺を見据えるモノカさんのまなざし。
自己紹介を受けてからずっと気に掛かっていたことに、今更ながら気付く。
チームモノカ!
我が故郷にまでその勇名が轟く特使勇者モノカ率いる最強冒険者パーティー。
見目麗しき武闘派乙女たちとは聞いていたが、まさかこれほどとは。
ずっと感じていた只者では無い感、ようやく、腑に落ちた。
「モノカさんたちの活躍は、遠く離れた我が故郷にまで鳴り響いておりました」
「不殺を貫く勇気も、です」
「俺はマクラさんの前で、あんな無様を晒してしまいました」
「武芸者として己が命を賭ける事を惜しんだりはしませんが、俺の力量ではモノカさんたちと肩を並べて進むに足らぬかと……」
目を伏せたモノカさん。
不意に、カミスさんが語り始めた。
「マクラちゃん、すっかりシナギさんに懐いていますよね」
「助けてくれたからとか、強くて頼り甲斐がありそうとか、それだけじゃないと思います」
「マクラちゃんは誰よりも優しい娘だから、シナギさんが本当に優しい人だって事がちゃんと分かっていて、それであんなに安心できているんだと思うんです」
「僕は腕っ節の方はからっきしなんで武術うんぬんはさっぱりなんですが、マクラちゃんの安心のためにも、シナギさんが一緒にいてくれると嬉しいです」
「あと、それともうひとつ」
「さっきからシナギさんが落ち着かない理由、僕にはとてもよく分かるんです」
「僕のためにも、ぜひここに居てほしいかな、なんて……」
なんとなく、カミスさんと心が通じ合った感が。
「承知しました」
「マクラさんのためにも、俺に出来る事でしたら、何なりと」
「カミスさんも、これからよろしくお願いします」
カミスさんとモノカさん、お互いを見つめ合って、にっこり。
俺の居心地のことも、少しは考えて欲しいです。