02 王都
エルサニア王都は、栄えた大都市。
最近まで戦争をしていた国の都とは思えぬほどに平穏で、行き交う人々は皆善人に見える。
この様子では用心棒の仕事など無いかも知れぬと、半ば諦め気分でギルドへと向かう。
案の定、武芸を活かせそうなのは商隊の護衛任務くらいで、他には低〜中ランク魔物の討伐依頼がちらほらあるのみ。
しばらく長旅は勘弁なので、まずは腰を据えて長逗留出来そうな宿を探そうと城下町をうろつく。
いくつかある宿のどれもしっくりこないせいで闇雲に歩き回るうちに、いつの間にやら人影の無い街外れ。
一旦戻って今日の宿だけでも確保をと踵を返そうとすると、微かに聞こえる悲鳴のような声。
急ぎ声の聞こえた方へと向かうと、今まさに幼い少女を連れ去ろうとする怪しい連中。
突然現れた俺を見て殺気をまとう臨戦態勢の覆面の男たち、いずれも手練れの振る舞いに手加減無用と腰の刀に手を掛ける。
辺りは静寂。
覆面三人ともに相当な使い手で、生かしたままの捕縛は無理だった。
震える少女から惨状が見えぬように遮りながら、話を聞く。
商店街にある知り合いの家からの帰り道に突然襲われた、とのこと。
とりあえず家まで送ろうと、立てなくなっていた少女をおぶって道案内のままに急ぐ。
街外れの少女の家に到着。
見た感じは普通の二階建て一軒家だが、なぜか妙な違和感がある。
玄関の呼び鈴を押すと、現れたメイドさんが少女をおぶったままの俺を急いで招き入れた。