01 シナギ
『リヴァイス 27 特使勇者たちの戦舞台』の続きで、
新登場キャラのお話しです。
お楽しみいただければ幸いです。
俺の名前はシナギ。
今は旅の武芸者、かな。
故郷は大陸の東の果て。
貧乏武家の不器用な三男坊は、幼い頃から武芸一筋だったせいか家と関わる生き方を見出すことも出来ず、成人してすぐに家を出た。
餞別に、曰く付きとはいえ家宝の宝刀を譲ってくれた親父殿に感謝。
荒事やら何やらで路銀を稼ぎながら、長らく戦争中というはるか西方の王国を目指す。
闘いが好きというわけではなく、常時戦争中なら俺みたいな不器用な人間にもそれなりに身の置き所があるだろうというその程度の理由。
しかし、長旅の末にようやくたどり着いたクルゼス王国に、俺の居場所は無かった。
戦争相手の隣国、エルサニア王国のトップが突然代わって和平が成立してしまったのだそうだ。
今のクルゼスの王都には最前線から戻ってきた連中が溢れかえっていて、俺が出来そうな荒事的な仕事に群がっている。
コネも無く、この辺りの情報にも疎い俺では、日々の職探しすら一苦労。
そもそも、この国はあまり居心地がよろしく無い。
厳格な身分制度、法律厳守のお堅い国民性。
ここには、しがない流れの武芸者である俺の居場所は無いようだ。
早々にクルゼスを出て、隣国のエルサニアに向かうこととする。
国境の街、ジオーネ。
戦争当事国の両国が、資材・人材を出し合って造られた、緩衝材的役割の街。
不可侵の取り決めに守られているというこの街、戦禍の跡など微塵もない綺麗な街並み。
今は、両国から派遣されて来た責任者の元での結構な賑わい。
昔から何度も衝突してきた両国、このジオーネは荒らすべからずという暗黙の取り決めが、いつの頃からか常態化していたとか。
出来レースとでもいうことかな。
この分では、今回の和平もいつまで保つことやら。
とりあえず宿を探して、なんとか潜り込めた安宿で噂話を聞き込む。
エルサニア王国
民に優しく無法に厳しい名君、ツァイシャ女王が統治
国は豊かで自由を重んじる国民性
荒くれ者でもないのなら、旅の冒険者にも寛容
どうやら、流れの武芸者である俺でも暮らしやすそうだ。
まずはエルサニアの王都にでも向かおう。
贅沢は言わないが、住み込みの用心棒的な勤め先でもあればありがたい。
もちろん、噂に名高いエルサニアの凄腕冒険者たちとの立ち会いが叶うのであれば、武芸者冥利に尽きる。
部屋は狭いが飯は美味い安宿にて、長旅の疲れを癒す。
エルサニア王都への旅は順調、ではなかった。
兵士崩れの野盗・強盗と頻繁に遭遇。
返り討ちにするのはたやすいが、途中の町のギルドでその旨を説明するのは一苦労。
目立たぬようにこの辺りでは一般的であろう冒険者服を身に纏ってはいるが、なにせ遠方からの流れ者、我ながら見るからに怪しい人相・佇まい。
さりとて真面目に討伐手続きをしなければ、やってることは辻斬りの類いと変わりないし、何より討伐報酬を貰えない。
という訳で結構な長旅となったが、なんとかエルサニア王都へ到着。