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第17話 家庭科部臨時顧問、不破衣寿々!!

 しまった。書き上げてから気が付いたけど、今回、なんの女装ネタも入ってない。

 さて、私は家庭科部に入部しているんだけど、今日はそこでとある事件がおきたのよ。それは……。


「ええと、家庭科部の皆さん。こんにちは。不破衣寿々(ふわ いすず)です。このたび産休を取った布目涼梨(ぬのめ すずり)先生に代わって家庭科部の臨時顧問になりました。とりあえずよろしくお願いします」


 その日、私が所属している家庭科部が部室として使っている家庭科室に来てみたら、なんと顧問の布目涼梨先生じゃなくて、不破先生が居たのよ。世界史担当で、なおかつ料理の腕前は見た目を気にしない男の料理レベル。その他の女子力も壊滅的と自称しているあの不破先生が家庭科部の臨時顧問だなんて!?


「不破先生。先生が家庭科部の臨時顧問になったちゅうのは分かりましたけど、今後の家庭科部に対する指導方針とかはどないなってるんや? うちとしては前部長としてそのへんのところをはっきりさせときたいんやけど」


 不破先生に質問しているのは、3年生で前部長の海野大愛(うみの だいあ)さんよ。皆からは『大愛先輩』と呼ばれているの。料理の腕はいまいちだけど、裁縫に関しては得意っていう先輩よ。ちなみにしゃべっているのは『えせ関西弁』で、本人は関西の出身でもなんでもないの。


 ま、大愛先輩がえせ関西弁をしゃべる理由はちゃんとあるらしいんだけど、まだ教えてもらってないのよね。いったいどんな理由なのかしら?


「はい、わたくしも先生にお聞きしたいです」


 この人は現部長の肥高安芸(ひだか あき)さん。2年生ね。特にこれといった得意分野は無いんだけど、裁縫や料理などは【そこそこできる超二流級の腕前】なの。普通よりは上手でクオリティはそこそこなんだけど、仕上げの早さは一流に引けを取らないわけ。手の込んだ一点ものを仕上げるのは苦手だけど、そこそこのクオリティの量産品を作るのに向いているのよ。


 そして発言はしていないけど、副部長の2年生、渋木吉美(しぶき よしみ)さんもふたりの発言に同意しているのか、うんうんとうなずいている。彼女は裁縫も料理もけっこう上手いのに、自信がなくて何かを自分で決めるのが苦手なの。なんというかな、ナンバー2のポジションまでしか務まらないというタイプかな。指示されたことはきちんとできるけど、自分がトップに立って他を指導するということは無理っていう感じ?


 そして私、服多好恵と、同じく1年生の浪江朝日(なみえ あさひ)ちゃん。総勢5名が今の家庭科部の部員のすべてよ。正直言って部活動として認められる最低人数は4人だから、もしも来年2年生が部活動から引退したら、最低でも新一年生を2名は勧誘しないといけないのよ。


 あ、そうそう朝日ちゃんなんだけど、1年2組で私とはクラスが違うの。1組と2組が合同で行う体育の時間も、私が男子の側で参加してるから、部活動以外ではあまり接点が無いかな。で、裁縫と料理の腕前なんだけど、忌憚(きたん)のない意見を言うなら壊滅的? まあ壊滅的な腕前だから家庭科部に入って上手になりたいってことなんだけどね。でも最近はちょっとはマシになってきてるらしいんだけど、どうなのかなぁ。


「正直に言います。私は世界史担当の教師です。世界史的に表現するなら、裁縫は貫頭衣(かんとうい)を作れるレベルですね。そして料理は人類が火を使いだした旧石器時代レベルよりはマシというレベルです。そんな私が家庭科部を指導なんてできるわけないでしょ」


(((((こいつ、開き直りやがったッ!)))))


 たぶん家庭科部の部員5人の気持ちはひとつになったと思う。ううん、絶対にそう。ひとつになったッ!!


「ああ、ええと、不破先生。貫頭衣に旧石器時代よりもマシな料理レベルって、さすがに盛っとるやろ? うちはだまされんで」


 まあ、そう思うわよね。大愛先輩は不破先生の言うことを全く信じていないみたい。


「わたくしもだまされませんよ。部活動の顧問になるのが嫌で嘘を言ってらっしゃるんですよね」


 安芸部長も不破先生のことを疑ってるわね。まあ私も不破先生が私の家に家庭訪問してきたときの言動を知っていなければそう思うかもだけど、先生の言ってることってどうも本当っぽいのよね。まあ多少は盛ってるかもだけど。


「家庭科部の顧問になるのが嫌なのは事実ですけど、盛ってなんかいません」


 妙な事に対して自信満々なのはどうかと思うの。


「じゃあ不破先生、そこまで嫌で家庭科の技術が無いって言うなら、顧問の話は断れば良かったんじゃないですか? ほら、布目先生の代わりに家庭科教師として来てくれた都築夢乃(つづき ゆめの)先生に顧問をやってもらったら」


 私がそう言うと、不破先生は反論したの。


「都築先生はもう60代も後半だし、定年後の再任で教師をやってる人だから部活の顧問をお願いするのは無理だったのよ。それに本堂校長先生から、『ああ、不破君、君は確か部活動の顧問になっていなかったね。実は君だけなんだよ。顧問になっていないのは。だから引き受けてくれるよね。家庭科部の顧問』なんて言われたんだもん。しょうがないでしょ」


 くちびるを(とが)らせてる不破先生。子供かッ!?


「ちゅうことは指導はできないというわけやな。不破先生、なんでここにおるん?」


 うわ、大愛先輩、き~~びし~~い。


「指導はできないわよ。当たり前じゃない。だからあなたたちが望むなら、私はいつでも顧問を降ろさせてもらうわよ」


「そうか。じゃ、そういうことで。うちは不破先生が顧問を降りても全然かまわんで」


「あらそう♪ うれしいわあ。顧問をやめてもいいのね」


「ちょっと待ってください。確かわたくしが記憶しているところによれば部活動の成立基準は、部員が最低4人いることと、もうひとつは顧問がいることだったと記憶していますが、そうですよね。不破先生」


 大愛先輩は指導に関して役立たずっぽい不破先生を顧問として迎えたくない。不破先生は面倒な顧問をやりたくない。というわけで不破先生が顧問を降りる流れになっていたのだけど、それを安芸部長が止めたのよ。いったいどうなるのかしら?


「ええそうよ。もしも私が顧問になることを止めたら、家庭科部は同好会に降格になるわね。でもそれがどうしたの? 活動自体は部活動でも同好会でも出来るんだから関係ないじゃない」


 不破先生としては家庭科部がどうなってもいいらしいのがヒシヒシと伝わってくるのはしょうがないとして、家庭科部が家庭科同好会になったら、ちょっとまずいんじゃないかしら? 私がそう思っていると、副部長の吉美さんが口を開いたの。


「あの、不破先生。それに大愛先輩に安芸部長。同好会になっちゃったらまずいですよ。確か同好会になっちゃったら部室として家庭科室のような特別教室を使えなくなるし、部費も出なくなるんじゃないですか? ええと、確かそうだったはずじゃ……」


 そういえば吉美副部長は、生徒会に対する部の提出書類を書いたり、部活動連絡会への出席をしているということだから、そのあたりのことは詳しいのかも。


「え、それは大変じゃないですか。家庭科室を使えなくなったら家庭科室の備品のミシンも使えなくなるし、調理用の包丁とかコンロも使えなくなってしまいますよ」


 私も家庭科部が同好会に格下げになった時のデメリットがすぐに分かってしまったわけ。それに部費かあ。まあ、いくらもらってるのか知らないけど、あったものがゼロになるのは痛いわよね。


「どうしよう好恵ちゃん。あたし料理や裁縫が上手になりたいから家庭科部に入っているのに……」


 ちょっと泣きそうになっているのは朝日ちゃんだ。


「大丈夫よ。朝日ちゃん。先輩たちが何とかしてくれるわよ。きっとね」


 すると少し考え込んでから、大愛先輩が口を開いたわ。さて、どうするのかしらね?


「安芸部長ちょっと聞きたいんやけど、うちが部長だった去年の部費は年間で3万円弱だったと記憶してるんやけど、今年はいくらなんや?」


「大愛先輩。今年は若干減らされて部費は2万5千円です。ちなみに去年の部費は正確には2万8千5百円です」


「そうか。ま、もともと部費は大したことは無いけど、ミシンが使えなくなるのは痛すぎるなぁ。演劇部の衣装を作ったり、文化祭で各クラスが使う衣装を作ったりする内職ができなくなるやないか。それから個人的な制服や私服の修繕や改造の仕事もできんようになる。そっちのほうが金銭的ダメージはでかいで」


「あの、ええと、ちなみに去年の家庭科部の内職による収入は年間で20万円を超えています」


 吉美副部長がそんなことを言ったんだけど、何? 年間で20万円以上の内職収入があったの? 家庭科部って! それは大変よね。


「先輩、家庭科部のその収入って、去年の場合は何に使ったんですか?」


 私は疑問に思ったことを素直に聞いてみたのよ。


「だいたい家庭科部で作ってる料理の材料費で消えるで。好恵ちゃんも朝日ちゃんも、料理やお菓子を作る材料費がどこから出とるか、疑問に思わんかったんか?」


「私は、部費から出てるものだとばかり思ってました」


「あ、あたしもです」


 私も朝日ちゃんも、全く不思議に思わず、てっきり部費から出てるもんだと思ってたけど、そういわれてみれば、確かに材料を学校近くのスーパーで買うときに、良いものばかり、つまりは高いものばかり買うなあと、思っていたのよね。うーん、もう少し考えてみるべきだったかしら。


「ち、しょうがない。不破先生。指導してくれとは何も言わないんで、家庭科部の顧問を引き受けたってください。お願いします」


 そう言うと、大愛先輩は不破先生に対して頭を下げたのよ。


「わたくしからもお願いします。家庭科部の顧問になってください」


「自分からもお願いします。顧問になってください」


 大愛先輩に続いて、安芸部長も吉美副部長も、不破先生に頭を下げたわけよ。だったら私たちも。


「不破先生。お願いします。家庭科部の顧問になってください」


「あたしからも、お願いします。不破先生」


 といういわけで、私と朝日ちゃんも頭を下げたんだけど……。


「で、私が家庭科部の顧問を引き受けるメリットは何かしら? 本来ならしなくていい顧問の仕事に時間を取られて、残業しなくちゃいけなくなる私はどうなるの? まともな手当ても残業代も出ないのよ。何かメリットでもないと、顧問なんかやりたくないわ」


 あーあ、最初に大愛先輩が『指導できないなら、顧問としてここにいる必要なし』なんていうことを言っちゃったから、不破先生も意地になってるのかしら。女同士の関係って、こういう点がドロドロしているのよねえ。ああ、いやだいやだ。でも、メリットさえあればいいのかしら?


「あの、調理の勉強ということで作った料理を不破先生にも提供するという条件ならどうですか? ね、先輩たちもそれぐらいなら良いですよね」


 私は、そんな意見を言ってみたんだけど、どうかなあ?


「あら、悪いわあ。そんなにも良いものを提供してくれなくても、私は昨日の残り物で作ったお弁当で良いのよ。そうねえ。みんなが交代でお昼のお弁当を作ってくれるなら顧問を引き受けてもいいわよ」


 う、意外というか当然というか、不破先生、喰いついてきた。


「え、毎日ですか?」


 言い出しっぺの私が、不破先生との交渉係になったみたいで、先輩たちも朝日ちゃんも私を見ているばかり。うう、重圧が……。


「当然でしょ。それぐらいしてもらわないと勤労意欲が出てこないわね」


 ふふん顔の不破先生。ううう、不破先生ってこんな性格だったのね。


「ほんとうに昨日の夕食の残り物で作ったお弁当レベルでいいんですね?」


 材料費のこともあるので、そこはきちんと確認させてもらう。さて、返事はいかに?


「ええ良いわよ。好恵ちゃんの料理の腕前なら、それでも十分に美味しそうだしね」


「わかりました。今でも自分の分に参彦お兄ちゃんの分も作ってますから、もうひとつ追加するくらいなら何とでもなります。先輩たちもその条件でいいですか?」


「ああ、好恵ちゃん。基本的にはその条件でいいんやけど、うちは裁縫は得意やねんけど、料理は苦手でなあ。交代で作るっていうところがどうもなあ……」


 大愛先輩が困った顔をする。あらあらまあまあどうしましょ?


「好恵ちゃん、あたしも料理が全然できないからお弁当を作るなんてできないよぉ」


 これは朝日ちゃん。確かに朝日ちゃんの料理の腕は壊滅的だったのが多少上達した程度。交代でも1週間に1回はお弁当を作ることになるから、……無理ね。朝日ちゃんが壊れちゃうかも。


「あの、自分もちょっと自信が無いんだけど。ていうかお弁当って何を作っていいのか分からない」


 うーん、そうかあ。吉美副部長は、なんでも全部指示してあげないと何もできないタイプだった。指示する人がその場にいれば、料理も裁縫もけっこう上手くできるのに、自分では何も決められないから、ひとりだけでお弁当を作るだなんて無理だったわけね。


 となると頼りになるのは安芸部長くらいかな? と、思ったら……。


「わたくし、お昼ごはんはパン派なんです。お昼のお弁当もサンドイッチとかロールパンサンドになってしまうんですけど、不破先生はそれでもよかったですか?」


 あれ? なんだか雲行きが怪しくなってきたのかも。


「うーん、私はどっちかと言うとパンよりもご飯派だから、できたらお昼のお弁当にパンは避けたいな。じゃ、消去法で私のお昼のお弁当担当は好恵ちゃんということでよろしく♪」


 にっこり満面の笑顔という強力な圧力ッ! しょうがない。ここは私ひとりでがんばりますか。


「わかりました。それじゃあ不破先生、どんなお弁当を作ってもちゃんと食べてくださいね。残しちゃダメですよ」


「いいわよ好恵ちゃん。私、特に好き嫌い無いし、何でも食べられるから大丈夫よ」


「その言葉、二言は無いですね」


「ないわよ」


 即答する不破先生。


 ふふ、愛妻弁当風だとか、キャラ弁だとか、食べるときに恥ずかしくなっちゃうようなお弁当でも作っちゃおうかしら?

 ここまで読んで頂き、ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。


 なるべく女装ネタを入れたいけど、物語の流れ次第ですので、どうなりますことやら。

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