第10話 好恵ちゃん親衛隊
女の子の友達4人に引き続いて、男の子の友達候補4人を出しています。半ば無理やり出してますから、ちょっと削ったり書き足したりしていたので、執筆するのに時間もかかって苦労しました。
自然な感じで読める内容になっていたならいいんですけど。
「おおー、やっぱり好恵ちゃんって中身は女の子でもガワは男の子なんだな。うっすらついている皮下脂肪の下の筋肉がやべえ」
そう言っているのは空木美鳥ちゃん。彼女は今、私の体を触りまくっていたりする。
なんでこうなっているのかと言うと、各授業で指名されまくった私が疲れた顔をしていたので、美鳥ちゃんが『じゃあアタシが肩をもんでやるよ』と言って、今の状況になっているわけ。
「筋肉、筋肉って言って触らないで。もう、肩をもんでくれるっていう話じゃなかったの?」
「いや、でもよぉ、見た目は細っこくて華奢に見えるけど、筋肉の付き方はしっかり男の子だから、触るのがちょっと楽しいんだよ。アタシ、男の筋肉が大好きだから」
「だったら普通の男の子の体を触ればいいじゃない。どうして私を触るのよ」
「いや、だって、アタシが普通の男の子の体を触ったら痴女じゃん。その点で言うと、好恵ちゃん相手ならなんとなく許されるというかなんというか」
言い訳にならない言い訳をすると、美鳥ちゃんの手は、既に私の肩から離れて腕へと移り、今は腕の筋肉をムニムニと触っていたりするのよ。これって私相手でも痴女ってことになるんじゃないの?
「そういえばふくらはぎも表面の脂肪の下にはしっかりと筋肉が付いていて、見ただけじゃ分からないけど、触ってみると女の子の足って感じじゃないものね。まあ男の子の足にしてはすね毛もなくてすべすべしてるけど」
「こら、愛花ちゃん、いつの間に私の足を撫でてるのッ!?」
今度は野山愛花ちゃんがいつの間にか私のふくらはぎを撫でていた。
「もしかして私よりもしっかりとムダ毛処理してるかも……」
「まあ、女装する時にムダ毛処理するのは基本ですから。だからもう撫でないのッ!」
と、愛花ちゃんをたしなめていたら、あれ、今度は家鳴風音ちゃんがほっぺたを触ってきてるんですけどッ!?
「ふむ、髭の剃り跡すらないね。ほっぺたもすべすべしてるし。もしかして好恵ちゃん、髭はまだ生えていないんだ」
「だからみんな触らないでよぉ。もう、私はもともと体毛が薄いんです。髭も一週間に一度くらい剃るか剃らないかで十分なんです」
「え、髭、生えてるんだ。こんなにもすべすべしてるのに?」
風音ちゃんが『うそでしょ?』と、つぶやいている。
「ちゃんと髭は生えてくるわよ。ええと、数本くらいは……」
「ボクは思うんだけどね、好恵ちゃん。それって髭が生えてるとは言わないんじゃないかな」
ううう、そうか。数本じゃまだ髭が生えてるとは言わないのか。私の体も最近は少し男の子っぽくなったのかなと思っていたのに。
「しかし残念だ。せっかくアタシ好みの筋肉してるのに、体毛が薄いだなんて。ん、もしかしてこっちも生えてないのか?」
そう言うと腕や肩の筋肉を触っていた美鳥ちゃんが、おもむろに私のブラウスの第一ボタンを勝手に開けると、その手をスッと差し込んできた。
「いや、ちょ、何してるの、美鳥ちゃんッ!」
「ほほう、ブラのカップの中は詰め物か。乳首は小さいけど、男にしては大きめなのかな? そして胸毛は……。ぜんぜん生えてないな。ていうかすべすべしすぎだろ。もしかしてうぶ毛すら生えてないんじゃないか? すげえ、男でこんなにすべすべした肌ってあり得るんだ」
「美鳥ちゃん、好恵ちゃんの足もすね毛どころかうぶ毛も生えてないわよ」
それはまあちゃんとムダ毛処理してるから、て、違う。
「優月ちゃん、助けて」
私は、おさわり隊に参加していない夜山優月ちゃんに助けを求めたんだけど……。
「ん、もう少しそのままの態勢を維持していて。今、スケッチしてるから」
なぜか優月ちゃんはスケッチブックを出して、私が愛花ちゃんや美鳥ちゃん、風音ちゃんに触られまくっているのをスケッチしていた。こ、この、おたく娘が~~ッ!! 二次元だけじゃなくて三次元百合まで行けるのか。あれ、正確には百合じゃない。よね?
まあ、そんなことはどうでも良くて、この場から逃げられる手段はもうアレしかない。
「ちょ、まって。トイレ、トイレに行きたくなったから」
私は脱出呪文を唱えたわけ。すると緑ちゃんは名残惜しそうに私の胸板を最後にひと撫ですると、ようやく私を撫でるのをやめてくれた。
「ま、トイレならしゃあねえなあ」
「うん、ボクもかわいい子がおもらしするところなんか見たくないし。……いや、ちょっとは見たいかも」
さすが女の子が好きな風音ちゃん。変態にブレがないですね。でもそうか。風音ちゃんにとっては私はやっぱり女の子枠なのね。
「トイレに行くんだったら、好恵ちゃん親衛隊を呼ばなくっちゃね」
愛花ちゃんのその言葉を受けて、すぐに美鳥ちゃんが反応したわけ。
「ねえ、好恵ちゃんがトイレに行きたいんだってーーっ!! 好恵ちゃん親衛隊集合っ!!」
美鳥ちゃんの声を受けて、教室内の各所から、4名の男子が素早くやって来て、名乗りを上げたのよッ!!
「好恵ちゃん親衛隊隊長、天光明生」
「好恵ちゃん親衛隊副隊長、姿見鏡平」
「好恵ちゃん親衛隊参謀、岩縄結止」
「好恵ちゃん親衛隊平隊員、湧谷拓水」
次々と名乗りつつ私の前に現れる男子生徒たち。
「「「「4人そろってただいま参上ッ!」」」」
そして4人でなんだか妙なポーズをつけている。きっと彼らの頭の中では、背後に爆発が起きているんじゃないかな。ま、馬鹿よね。
……おさがりの服を着たくなくて女装し始めて8年目の私ほど馬鹿じゃないかもだけど(泣)。
さて、ここで『好恵ちゃん親衛隊』という言葉が出てきたので、ちょっと説明しましょう。
実は既に入学して数日が経っていますが、私は自己紹介の際に宣言した通り、トイレは男子トイレを使用しています。いくら完璧な女装をしているとは言っても肉体的には男性ですし、もちろん戸籍的にも男性ですから、そんな私が女子トイレに入ったら犯罪になっちゃいます。
しかし理屈では私が男子トイレに入るのは正しくても、その他の男子たちにしてみたらそうじゃなかったみたいです。
『好恵ちゃんが男子トイレに入ってくると、まるで本物の女の子が入ってきたみたいで、緊張しておしっこが止まってしまう』とか、『緊張して尿意は有るのにおしっこが出ない』という声が多かったのですよ。
なんというか男子って繊細なのね。そういえば私は女装を始めた小学3年生の頃からトイレでは個室を使っていたわけで、緊張とは無縁でおしっこをしていたからね。
それから、『好恵ちゃんがいきなり男子トイレに入ってきたら、びっくりして尿意自体が消えてしまった』という苦情もあったりするので、何とかしなくてはと思ったわけ。
かといって職員トイレを使うようにするのは遠くまで行かないといけないので面倒くさいし、どうしたものかと悩んでいた時に助け船を出してくれたのが、4人の男子クラスメイトで構成された『好恵ちゃん親衛隊』というわけ。
彼らは私がトイレに入るという時には、まず先ぶれとして男子トイレに行って、『もうすぐここに好恵ちゃんが入ってくるぞ』って知らせてくれるわけ。これで男子トイレに入っている男子生徒たちもびっくりしないで、余裕をもっておしっこができるという理屈なのよ。
理解していただけたかしら? 本当に馬鹿みたいな話だけどね。
「すみません、いつもいつもトイレの度にお世話になって」
「いえ、好恵ちゃんの為なら何でも無いですよ」
返事をしたのは親衛隊隊長の天光明生くんだ。自分から『好恵ちゃん親衛隊』と名のって、メンバーも集めたという変た……、いえ、私のことを思って非常に良くしてくれる男の子です。
「それではトイレに行ってきます」
と、愛花ちゃんたちに一言断ってから、私は親衛隊を名乗る男子4人を引き連れてトイレにむかったわけなんだけど、それを見送る愛花ちゃん、美鳥ちゃん、風音ちゃん、観月ちゃんの女子4人は、ちょっと笑っていたのよね。
まあ、女装男子1名と、通常の男子4名との連れションって、真面目に考えたらおかしいよね?
「ところで皆さん、今さらですけど、どうして私のトイレにこうも付き合ってくださるのかしら?」
黙って歩くのもなんだから、トイレへ行くまでの間、ちょっと聞いてみた。
「俺の場合、普通に女の子が好きなんですけど、恥ずかしくて声をかけられないから、まずは男なのに女の子にしか見えない好恵さんとお近づきになって、女の子に対する恥ずかしさを克服しようかなって思ったんです。ごめんなさい。こんな打算的な気持ちで」
まず答えたのは『好恵ちゃん親衛隊』隊長の天光明生くん。ほ、ほう。私のことを恋愛的に好きというわけじゃないのね。まあ後々めんどうなことになりそうにないから、私的にはありがたいかな。私は男の子と付き合うつもりはないからね。
「僕は、アニメとか好きで声優を目指しているんですけど、男が声優になるのは女性よりも難しいんですよ。普通、男は男の声しか出せないけど、女は女の声も少年の声も、人によっては大人の男の声も出せますからね。でも好恵さんは男なのに完璧な女の声も出せるから、そのやり方をじっくりと教えてほしいんですよ。マスターすれば声優になるのに有利かなって思って」
そして『好恵ちゃん親衛隊』副隊長の姿見鏡平くん。なるほどこいつはアニメファンで、声優志望で、女の声の出し方を教えて欲しいと。ふむ、なかなか面白い動機だね。
「ふーん、ほかのふたりは?」
「オレの場合、今、好恵さんの友達をしている女の子の空木美鳥ちゃんと仲良くなりたいんですよ。ああいう江戸っ子のようなちゃきちゃきした娘がタイプなんです」
ほう、こいつは私をダシにして美鳥ちゃんと仲良くなりたいとな?
「それはそれは。でも美鳥ちゃんって筋肉フェチみたいだから、筋トレしないとね」
「はい、頑張ります」
むむむ、私に気が無いというのはありがたいはずなのに、何、この寂しいというかもやもやした気持ち。というわけで、『好恵ちゃん親衛隊』参謀を名乗る男の子、岩縄結止くんでした。
「ぼくは、好恵さんみたいな女装がしてみたいですから、好恵さんと仲良くしたいです」
最後は『好恵ちゃん親衛隊』平隊員の湧谷拓水くん、顔を真っ赤にしているんですけど。
「え、もしかして女の子になりたいってこと?」
「いえ、女の子になりたいんじゃなくて……、きれいでかわいい服が着たいんです。昔からそう思ってたんですけど、勇気が出せなくて誰にも言えず、あきらめていたんです。でも、好恵さんのことを見ていたら、ぼくも勇気を出そうかなって思えたから」
文字にするとわからないかもだけど、それこそ小さな声を絞り出すような感じで答える拓水くん。
「うーん、その理由は予想していなかったけど、まあ、そういうことならアドバイスくらいならしてあげられなくもないかな」
「本当ですか。ありがとうございます」
拓水くん。ものすごくうれしそうだけど、彼って女の子になりたいわけじゃないって言っていたから、いわゆる女装愛好家ってやつなのかな?
しかし『好恵ちゃん親衛隊』を名乗っている割に、4人中誰一人として、私のことが好きだとか、ファンになっただとか、そういう気持ちの人がひとりもいないってどういうこと? 見た目だけならこんなにも美少女なのにね。
そんな話をしているうちにトイレに着いたわけ。すると隊長の天光明生くんと、副隊長の姿見鏡平くんが男子トイレの中に入って行ったの。
そして中からは、『今から女子の制服を着ている心は女子、体は男子の服多好恵さんがトイレに入ってくるぞ』、『ほらほら、出してる途中のやつはすぐにしまえよ』なんて言ってる声が聞こえたりするんだけど、中にいた男子たち、大丈夫かな。
おしっこを途中で止めたりしたら、どこか病気にならないのかしら。
「さ、好恵さん。どうやら中の準備もできたようなのでトイレにお入りください」
と、促すのは参謀の岩縄結止くん。どこか紳士を演じるオレかっこいいって思ってそう。
「じゃ、一緒に行きましょう」
私の手を取り、一緒にトイレに入って行くのは、平隊員で女装したいと言っていた湧谷拓水くん。確かに女装したいと言うだけあって、よく見ると女顔っぽいかもしれない。うーん、女装させ甲斐があるかも。
女装歴8年目の私の腕がうずうずしちゃう。
そしてトイレの中に入ると、そこは紛れもなく男子トイレでした。ずらりと並んだ小便器。これこそ男子トイレの象徴。自己主張よね。
実は私、ご存じの通り、肉体的には男子だから立小便できる機能は備えているんだけど、心理的要因から立小便ができなくなっちゃったのよ。
小学3年生から女装し始めて、それ以降ずっと個室のトイレを使っていたんだけど、ふと、トイレに誰もいないときに立小便をしてみたことがあるのよ。こう、スカートをまくってパンツを下ろしてね。
するとね、ものすごく不安になったのよ。なんていうのかな。無防備。そう急に自分が無防備になった気がしてね。
だってそうじゃない? 男子トイレでのおしっこって、壁が自分を囲んでいない広い場所で、いわゆるアレを出してするわけでしょ。で、おしっこをしている間は、その場から離れられないし、後ろから何かされたとしても防御も反撃もできないでしょ。
そう考えたら急に何かに襲われそうな気分になって、立っておしっこすることが出来なくなっちゃったの。
だから私が男子トイレに入ってくると緊張しておしっこが出なくなるっていう男子たちの主張も分かりすぎるくらい分かっちゃったのよ。
もしも私が女装をやめて男の子の恰好に戻ったとしても、引き続き個室でおしっこをするんじゃないかなって思えるのよ。長年女装してトイレで個室しか使っていなかった弊害かもしれないわよね。
「じゃあ、私は個室に入るから」
そう言って私は女装したいっていう湧谷拓水くんの手を放すと、宣言通り個室に入って行ったのでした。そしてドアをバタンと閉めたところで、本日は終わり。
……え、私がおしっこするシーンはどうしたって?
やだもう、女装した男の娘だからといって、男の放尿シーンを詳しく知りたい人がいるわけないでしょ。じゃ、そういうことで。
女の子たちは、【花鳥風月】から漢字を一文字ずつもらって命名しました。そして男の子たちは、【明鏡止水】から漢字を一文字ずつもらって命名しています。あとは部活動のメンバーの名前を決めればだいたい登場人物の設定はおしまいです。
それにしても男子トイレで立っておしっこをするときの無防備感って、感じている人、いますか?
それではここまで読んで頂きありがとうございました。感想、評価、誤字脱字のご指摘、ありがたいです。今後ともよろしくお願いいたします。




