●●料理専門店
ツッコミ「どうもー」
ボケ「僕ね、ある食材専門の料理屋さんをやろうと思ってるんですよ。これはタピオカ並に絶対若者にウケる!っていう確信もあります」
ツッコミ「へえ、何何? 教えてよ」
ボケ「セミ料理専門店です」
ツッコミ「いや厳しくないか!?」
ボケ「いーや、絶対若者を中心に大ヒットするね」
ツッコミ「お前は若者を何だと思ってるだよ! 絶対人集まらないよ!」
ボケ「そうかなあ。じゃあシミュレーションしたいからから、君はお客さんとして来てくれない?」
ツッコミ「ま、まあ」
ボケ「いらっしゃいませ。どうぞどうぞ狭いところですけど」
ツッコミ「あ、結構ニッチな所でやってるんですね」
ボケ「はい。見ての通りアパートの一室を借りてやってるんです」
ツッコミ「アパートで料理屋さんやってるの!?」
ボケ「お客さんがふらっと入りやすいようにしてるんですよ」
ツッコミ「いや普通の人はふらっとアパートの一室に入ろうと思わないよ! 入ったとしてもセミが主菜だったら絶対に出てくよ」
ボケ「そうですかね」
ツッコミ「にしても本当に狭いですね。部屋の間取りはどうなってるんですか?」
ボケ「六畳ワンルームです」
ツッコミ「せま……あれ、ワンルームだとキッチンついてなくない!?」
ボケ「ありますよ。ベランダに」
ツッコミ「ベランダで料理してんの!? 絶対隣の部屋に油散ったりするでしょ!」
ボケ「そうなんですよ。セミが隣の部屋に飛んで行って大変なんですよ」
ツッコミ「飛ぶんだ!」
ボケ「たまに近くのスーパーまで飛んだりしてね」
ツッコミ「明らかに爆発してる勢いだな!」
ボケ「落ちたのが他所様の庭で勝手に生えてきちゃったりしてね」
ツッコミ「それ本当にセミなの!? そんなんで本当にやっていけるんですか?」
ボケ「ええ。こう見えて全国展開してるんですよ」
ツッコミ「全国!? セミで!?」
ボケ「全国に10万店舗あります」
ツッコミ「多っ! 多分日本全体でセミ食べる人口より多いよ!」
ボケ「このアパートにももう一店鋪入ってるんですよ」
ツッコミ「何がしたいんだよ!?」
ボケ「まあまあ、そろそろ上がってくださいよ。狭いんで足下に気をつけて下さいね」
ツッコミ「はあ……」(部屋に入る)
ボケ「そちらのゲーミングチェアに腰掛けてください」
ツッコミ「これ絶対あなたの私物でしょ。あ、お水下さい」
ボケ「はい、こちら[ゲーミングお冷や]になります」
ツッコミ「ゲーミングお冷? 何それ?」
ボケ「めっちゃ光ります」
ツッコミ「いらねえ! 確実にやばい物質の入ってるじゃねえか」
ボケ「でも飲んだ水が自分の体のどのあたりを通過しているのかが確認できて面白いですよ」
ツッコミ「飯食ってる時にそんな解剖学的な楽しみ方したくないわ!」
ボケ「ではこちらがメニュー表になります。注文が決まったら大きな声で呼んでください。セミだけにね」
ツッコミ「……(少し眺めた後)あ、すみませーん」
ボケ「はーい。ご注文が決まりましたら、そちらの食券機で食券買ってくださいねー」
ツッコミ「はーい、ってじゃあ何で呼ばせたんだよ!」
ボケ「活気が出るかなって」
ツッコミ「客を協力させんな! いや、決まったんじゃなくて質問なんですけど」
ボケ「何でしょう」
ツッコミ「このセミ丼って何ですか?」
ボケ「牛丼みたいな物ですね。牛肉の代わりにセミを乗せて、お米の代わりにセミを使っています」
ツッコミ「セミしか入ってねえじゃねえか! それただの山盛りのセミだよ!」
ボケ「素材の味を楽しんで欲しくて」
ツッコミ「素材しか入ってないよ! あと、あんまりセミの味は楽しみたくないよ!」
ボケ「じゃあこっちのセミラーメンなんていかがでしょう」
ツッコミ「セミラーメン!?」
ボケ「はい。麺の代わりにセミ、スープの代わりにセミが入っています」
ツッコミ「セミ丼と全く同一人物じゃねえか!」
ボケ「今なら時々アサリに入ってる小さなカニがトッピングに付いてきます」
ツッコミ「いらないよ! それアサリ食べてて一番嫌な気持ちになるやつだよ! 他にまともなトッピングとか無いんですか?」
ボケ「セミとか」
ツッコミ「何だその血で血を洗うセミは! もう良いです。僕帰ります」
ボケ「あ、待って下さい。あなた見どころありますね。うちでアルバイトして行きませんか?」
ツッコミ「やらないよ!」
ボケ「うちは参勤交代で働きやすいですよ」
ツッコミ「三交代だろ! 何でバイトが二年に一回江戸に行くんだよ! ちょっと待って。これ絶対に売れないわ」
ボケ「そうですか。じゃあセミの抜け殻専門料理店にします」
ツッコミ「いやもっと無理だろ、もういいよ」