7話 トラウマ
驚いた。地図の東の方では森に近づく程田舎になっていったのだがこの西端である筈のダールではとても栄えていて活気に満ち溢れている。
『そうねぇー東の方がどうだがわからないけどやっぱり魔獣が出ないからじゃないかしらー』
俺らは町に入り、まず宿屋を探していた。その際に町の屋台が並ぶ所があったので昼飯を買いながら町のことを聞いていた。
『珍しいですね。で、魔獣がいないのと栄えてるのには何の関係が?』
『昔はね〜この国は多くの国に囲まれてたらしくて防戦一方らしかったのよ。それで誰も入らない森を背にしたら何と勝ち続けちゃってそれで戦争が終わった今でも何か縁起のいい事があるんじゃないかって王様がこの付近に支援してくださっているのよ〜』
『へぇーそうなんですか。物知りですねお姉さん』
『いやーねぇー私はもうおばさんよ〜?。知ってるのも王様が教育の制度を作ってくれたおかげよー』
そう言いつつ彼女は器に山盛りの麺を乗っけてくれた。
こういう時におべっかを使えるといいよな、得できるし。
『じゃあ二つで150セシルスよ』
そう言って手を出してくる。ん?待てよ聞いたことない単位だな。あ!俺東の方の金しか持ってねぇどうしよう!
『あ、あの?お姉さん?それってどのぐらいなの?』
『ん?150ってりんご一個ぐらいよ。この味でこの値段はなかなかないわよー♪、ってアンタ計算できないわけじゃないわよね?』
『あ、いやいや。俺東から来たって言ったじゃん?あっちの方の金しかなくて…』
そういうとおばさんは神妙な顔持ちになり質問をしてきた。
『アンタ職業は?』
『え?いや旅しながら詩人をしてるけど…』
『し、詩人!?アンタ!それ先に言いなさいよ!』
え、え、俺なんかした!?
『ならタダよタダ。持ってきなさい』
そう言って器を渡してくる。訳が分からない。
『何がなんだがわからない顔ね。これも王様なんだけど、詩人とか芸術品を生み出す人材が大事らしくて旅の詩人にはこうしなさいって言われてるのよ』
『また王様か!』
『そうよ!ほらあとがつかえてるから早く退きなさい!あ、よかったら私の詩を作ってもいいのよ!親切にしてくれた美女ってね!』
そういうとガハハ!と笑い接客に戻って行ってしまった。どう見ても淑やかじゃないんだが…それでも優しい人だったのは確かだ。
にしても王様が旅人を助けてくれる…か。にわかに信じ難いがそんな国もあっていいのだろう。俺からしたらこの制度が悪用されないことを祈るだけなんだがな。
『さてと、バード。どこで飯食おう─って、いない!』
バードはすぐ後ろにいたはずだ、そしてその姿が見えない。
まさか、誘拐か!?
と思ったのも束の間バードはすぐ見つけられた。少し先の人混みを掻き分けバードは走っていたからだ。
『って!おいバード!どうしたんだ!待ってくれよ!』
急いでバードを追いかける。
──バード視点
とてもワクワクしていた。生まれた町から出て、初めての土地だから何があるのか楽しみで。
そして、思った通りこの街にある物は全部が目新しくて胸が高鳴った。
でも少しして落ち着き始めた頃、誰かに見られている事に気付いた。誰の視線かは分からないけど感じたことのある嫌な視線だ。
ふと気付く。あの頃村にいた時に感じていた視線だ。異端者を見る目。それに気付いた途端、胸の高鳴りは嫌な汗に変わって、世界は暗転した。話し声も全てが僕を悪く言っているのだと思い、恐怖に満たされた。
[忌子め。お前なんて生まれなければ良かったんだ。]
『ごめん…なさい』
逃げ出していた。視線から逃げようと、あんな思いはしたくない。
『お、おい。いきなり走り出してどうしたんだバード』
『ごめんなさい…バリードさん。ごめんなさい、ごめんなさい』
『…何があったんだ?』
バリードさんの優しい口調にいつのまにか溜め込んでいたことも出てきてしまった。感じた事が言葉になって溢れ出た。
『なぁバード。ちょっと屋台の時を思い出して欲しいんだが、俺とおばちゃんが話してたとこ』
バリードさんは唐突に屋台での事を聞いてきた。
『とても楽しそうに話してましたけど…急になんですか?』
『楽しそうにしてたよな。でも俺たちは名前も知らないんだ』
何が言いたいのだろう。
『つまりは一期一会ってやつなのかな。人は色んな人とであうからいちいちすれ違った奴や一度話した程度の相手には興味を持たないんだ。お前の村では良い意味でも悪い意味でもみんながお前を知っていて無視なんて出来なかったからああいった横暴があった。』
『これから俺らが行くのは俺らを知らない人達の所だ。みんな俺らを数いる旅人の一人としてでしか見ない。だからお前も知らない誰かに怯えるな。どんな奴であろうとその場でしか会わない奴らだからな』
『知らない人に怯えるな、ですか…なんかとてもバリードさんみたいですね!』
明るすぎる考えに思わず笑ってしまった。
『おい、それってどういう事だよ!』
そうかそういう考えもあるのか。怖さが薄れてきたかもしれない。
またこの人の言葉のお陰だ…母さんのときもバリードさんが背中を押してくれた。
"この人の言葉には何か勇気をくれる力があるのかもしれない"
『バリードさん!いきましょう!』
街は未だに活気に満ち溢れている。足がすくんでしまって動かないままでいるとバリードさんが背中をドンッと押した。
『うわっ!転ぶところじゃなかった
行こう!
瞬間吹き付けるように向かい風が来た。町の活気に溢れた熱い風に目を瞑ってしまったけれど、目を開けたらそこは知らない事で溢れた町なのだと気付いた。
投稿遅くて申し訳ありません。今リアルの方で立て込んでて…って言い訳は見苦しいですね。言い訳しません。
さてさて、村に着いた一向ですがここでバードにとある問題が生じた。それが所謂トラウマ、村でのことがフラッシュバックしたりする訳なんですけどここでバリードの言葉で人への怯えが無くなるって事を書きたかったんです。
大体バードは10〜12(もっと幼いかも)ぐらいなんですけども、やっぱり人生の大半を忌み嫌われていましたから人に懐っい描写はしたくないんですよね。どうにか割り切って頂きたい。
ここからですかな最初の町での日常?パートに入り詩にどんな意味があるのか触れたいなーとかありますのでまた時間がある時に投稿しますのでよろしくお願いします。