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Bard -世界に嫌われた詩人の物語 -  作者: レティ
一章 出会い別れ、そして別れる。
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6話 ひたすら学ぶ旅路。 第2連

 詩人は厳しい職業だ。常に聞き手が楽しめる新しい話を探さなければいけない。そのため詩人(おれたち)は旅に出て、そこで話のネタを見つける。しかし厄介なのが旅路だ。いつも危険を伴う。急に襲ってくる魔獣然り病気、飢えにも気をつけなければならない。


 そこでだ。俺はまず昼に基礎能力の体力や戦闘を想定した訓練をして、夜に(うた)などの座学をさせるようにした。

 バードは実に熱心だった。少々厳しくしすぎたと思ったのだが今のところ問題なく学んでいる。


『バリードさんこれは食べられるやつですよね』


バードが野草を持って聞いてくる。


『ああ、そうだ』


 あれは確か食料の現地調達の方法について教えた時だ。初めは何が食べられるのかわからないみたいで綺麗だからという理由で毒キノコを持ってきたことがあった。でも今では何が駄目なのかを学び同じ失敗はなくなった。

 そういえばもっと成長を感じる部分もあったな。それはバードが自ら動くようになった事だ。知識を活かしてどうすればいいか考えるようになったのだ。

 例えば今、バードが旅のルート取りをしてる事がそうだと言えよう。


『えっと、これは苔がついてるのがこっちで影はこの向きだから…この方向だな』


うんうん、教えた事を存分に発揮している。


まだ旅を初めて30日程だが覚えるのが早すぎるな…もしかして俺の弟子って天才かな!


…でも困ったな。さっきも言った通り、1人旅をするには戦う事ができないといけない。そしてだ、この森にはその相手である魔獣がいない。バードに実戦の経験を積ませてやれないのは大問題だ。どうしたらいいのだろう…


バードが足を止めた。


『バリードさん、何かいます』


『ん、ってあれは!』


俺らの少し先の木に何か禍々しい気配を感じる。森に入るまで常に感じてきた気配だ。


『魔獣じゃないか!』


 毛並みが荒いし、あの見た目猪か。自然に住んでいた動物が魔獣化してしまったのだろう。

 クックック、それにしてもなんて運がいいのだろうか。まさかあっちから来てくれるとは…!


『え!?バリードさんどうして喜んでいるんですか?』


バードは困惑している。


『バード、いきなりだが実践だ。戦い方はわかるな?』


『え、ええ!?いきなりすぎますよ!』


『大丈夫だ、何かあっても俺が対処するし、死なせない』


そう、あの猪はまだ小ぶりだ初めてでも十分戦える。そして俺はいつでも援護できる。


『覚えてるな?戦いながらの詠唱はし辛い。イメージが崩れるからな、あくまでナイフで勝て』


『うう…分かりましたよ!!』


バードは腰の短刀を手に取る。そして目の前の猪を見つめる。

その時だ、猪はバードに向かって全速で走り出した。バードは少し腰が引けているがしっかり構えてる。


『いいかバード!小さく速い相手には腰を落として目線を合わせろ!決して恐れるな。そしてあいつは猪!突き進んで来る。上手く射線上に木を持ってこい、木に怯んだ好きに心臓を刺せ!』


『はい!』


バードは俺の言う通りに腰を低くした。そしてもう少しでぶつかるといったところだろうか。器用に猪を避け木に当てる事ができた。


そして、


ザクッ!


バードはやってのけた。初めてだというのに魔獣を御してしまった。バードもなかなか緊張したようで倒した後へたり込んでしまった。

動けないバードに変わって解体は俺がして、夕飯も作ってやった。猪肉の煮込みと香草焼きだ。


『バードどうだ初めて狩った相手の味は』


そう聞くとバードは涙を流して初めてしまった。


『怖かったです…殺されるかもと思いました。でも後ろで見てくれたからなんとか倒す事ができました。そして…とても美味しいです』


久々に子供らしい笑顔を見せてくれたな。


『ああ、美味しいだろ。人はそうやって何かの命を奪って糧として成長するんだ。だからしっかりと食え、そしてもっと強くなれ』


 その日はいつもより早く寝た。そして寝床の中で思う。弟子の成長だ。少し前まで泣き虫だったあいつが…いやそれは今でもだが。それでもこの少しの間だけでも大分成長したのだ。身体的にも精神的にもほんとに偉いよ、アイツは。


 そう思ってたらいつの間にか俺も寝てしまっていた。


おはようございます!と元気に言ってくるバード。どうやら早起きして朝飯を作ってくれた様だ。


『ああ、おはよう。よく寝れたようだな』


朝飯を食う。


『そうだ、もしかしてバードもうそろそろかも知れないぞ』


俺はバードに言う。


『え?何がですか?』


『いや昨日ついに魔獣が出たろ?もしかしてこの森の終わりも近づいてるんじゃないかなと思ったんだ』


『そうなんですか!?それは楽しみです!』


『まあ確証はないんだがな。今日は早めに歩き始めようか』


 はい!とバードは返事をする。あ、そうかそういえばこの森から出たらバードは初めての森の外なのか…外に出たら色んな事を教えてやらないとな。

 

 少し希望が見えて嬉しい半分ちょっとした懸念もあった。それは『刻印』の事だ。これまでは2人旅で気にする事もなかったけど、他人と関わるとなればどうにかしなければならないだろう。


『バリードさん!あそこ少し先です!森が終わってますよ!』


歩き始めて数刻経ったぐらい俺たちは長い森の終わりを迎える。


『おお!久々の平野だ!』


 外を出ると雰囲気が変わった。森の陰鬱な感じも抜け、明るく暖かい感じへと変わった。久々の陽気に浮かれていたところ突然大声が響いた。


『おい!アンタら"不可侵の森"から出てきたな!一体何もんだ!』


根っこのない地面にばかり気を取られていたからかその先にあるものに気づいていなかった。俺らに声を掛けたのはその先にある町の門番らしき人物だった。


『俺たちはただの旅人です!少々道に迷いまして、気がついたらここに来ていたんです!』


 バードの首を縦に振って相槌をしていた。だが門番は納得いかないようで首を傾げている。あ、そうだ。


『私こんなものでして…』


俺は胸元にしまっていたカードを見せる。


これは証明書と呼ばれる物だ。自分の血を垂らす事で個人の情報を残せる。不思議な事に1人で複数枚作ることは出来ず、新しく作れば古い物は勝手に消える。そんな特性を持つ為、身分を証明する為に数多くの国が証明書を取り入れてる。


『む、証明書か…なるほど。旅人で間違い無さそうだな。でその子は?』


バードを見やる門番。


『ああ、コイツはバードです。道中でカードを落としまして』


そういえばバードは身分を証明するものはない事に気づく、後で作ってやるかー。


『そうか。それは不便だなこの町の酒場兼ギルドで発行もできるからな。あとで寄るといい』


門番は親切にも教えてくれた。そして門を通してくれるみたいだ。


『あ、待て!』


ん、まだ何かあるのか。


『ようこそ"西端の町ダール"へ!あなたにとって有意義な滞在にならん事を!』


『ああ、これはどうも丁寧に…ってええ!!』


『バリードさん、どうかしました?』


俺は急いで地図を開く。確かこの森に入ったのは東端で…そして今は西だって!?


どうやら俺達はいつの間にか世界を一周、回っていたそうだ。

っていうかこの世界って平面じゃないの?!筒状!?それとも球形?!


驚きから始まったダールの地の滞在。一体どんな事が俺たちを待っているのだろうか


テンポが遅いっすね。無理やりなとこもあると思いますが何分初心者なもので…温かい目で応援して頂けると嬉しいです!

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