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Bard -世界に嫌われた詩人の物語 -  作者: レティ
一章 出会い別れ、そして別れる。
5/59

5話 ひたすら学ぶ旅路。

『いやいや!そんなの食べれませんよー!』


森の奥深くにバードの叫び声が響く


『お前なんでもするって言ってたよなぁ、このぐらい出来ないとすぐ死んじゃうぜー』


俺は今.、見るからに規格外な幼虫を食わせようとしていた。


『いいか?これからは食べ物が尽きたときは旅先で調達しなくちゃいけないんだ。空腹で倒れそうなときお前の周りにはコイツしかいない!そんな時お前は見た目が気持ち悪いだけで食わないのか!』


我ながら凄い気迫だ。でも、こうでもしてバードに旅の辛さを教えなければ、俺がいなくなった時にコイツは1人で生きていけなくなる。

そう!これはバードの為!だから、仕方ない!ちょっと面白くなってきた。


『そのときはそのときですよ!わざわざ食べ物が余ってる状況で食べる必要あります!?』


負けじと少年も応戦している。


『バードよ…そのときってのはな、いきなり来るもんなんだよ…』


バードにある袋を見せる。至って変哲のない大きな穴があいてる袋だ。


『あ、え…う、うそ…ですよねバリードさん。だ、だってそれって食べ物が入ってた』


『あぁそうだ。確かにこの袋は昨日まで食べ物が入ってた。しかし、今朝確認したら代わりにコイツがいたんだ。』


手に持っているコイツをバードに見せる。バードは…どんな顔してんだ。怯えと怒りが合わさった顔だ。人間ってこんな顔できるんだな。


『もう頭にきました!』


『お、おう』


バードは俺の手の虫を奪いその勢いで噛み付いてしまった。

しかしなかなかの弾力だ。調理もしてないソイツを噛み切れずバードは停止してしまった。


『おーいバードくん?実はドッキリでね食料も無事で…。ッ!コイツ気絶してる?!』


この光景からは喜怒哀楽を感じた。虫は食われなかった事を喜び、歯をマッサージみたいなものとして楽しんでる。バードは食料のことで怒り、噛んでしまったという後悔を感じさせる。

芸術だ…俺はついその光景に手を合わせてしまってた。


──

気絶してだいぶ経った。バードは一向に目覚める気配がない。ところでコイツの寝言はなんなんだ。


『芋虫は嫌だ…芋虫は嫌だ…うわぁ!』


『おぉ、起きたか。ごめんなバード、食料も無事だから安心してくれずっと寝てたからな腹減ってるだろホレ。』


器に入ったスープをバードに渡す。


『あ、いえ僕も取り乱しすぎました。あ、このお肉美味しいですね。ってお肉ありましたっけ?』


『あぁあったよ。お前が気絶した後加工した』


『そうなんですね、、、ところでバリードさんアイツどこに捨てて来ました?拳ぐらいの虫です』


バードはまだ怯えているのだろう、まぁあのくらいの年頃なら怖がるよな。まぁ苦手は若いうちに直せって言うし、俺にしては気の利いた事を出来たんじゃないかな。


『いやぁさすがに加工前のものをいきなり食えは厳しいと思って調理したぜ。ほれお前が美味しいっていっt』


オロロロロロロ!!

と盛大に料理を吐くバード。あれバードさんや折角の料理吐いたらもったいないぞーなんて思ってると…


『あー!わかってましたよ!わかってました!どうせあなたのことだからそんな事をしてくるとは思ってたんです!第一なんでそんなに虫をすすめるんですか!仮にもそれで気絶したばっかりなんですよ!もうちょっと頃合いを見て…とか無かったんですか!?』


なかなか荒ぶってるな。


『そうは思ったよ。でもこれ作るなら肉必要だし、でも肉もないし魔獣もなぜか、いないんだ。仕方ないだろ』


そうだこの料理の決め手は肉だ。ガッツリと肉を食って疲れを癒やし明日の糧にする。古来より旅人はそうして旅をしてきたんだ。


『そんなことより冷めちまうぞ。早く食え知らなかったら食えてたんだ。味も悪かないだろう、ソイツは虫じゃないただの肉だと思って食え』


 バードは呆れた顔をした。そして嫌な顔はするものの少しずつ虫を食べていった。


 完食!なかなか美味しかった。料理の余韻に浸っている所にバードが質問をしてくる。


『バリードさん。さっき言っていた魔獣ってなんですか?』


『あれ教えて無かったけか。あぁ、ついでだこの際"魔素" "空素"についても教えとこうか。』


『まず魔獣の発生には二種の原因があるとされる。一つは家畜などの動物が体内の魔素の巡りが悪くなった時に魔素が蓄積され凶暴化すること。もう一つは生まれながらに魔獣、魔族の血を引いていることの二つだな。基本的には前者が多い。家畜の知能では上手く魔素を操れない場合があるから発生しやすいんだ』


おっといきなりすぎたか、まぁこのくらいは序の口だ。


『凶暴化するからな、まともに飼えないし殺せもしない。だから村の外に流し、その魔獣を増やしちまう。命の責任はとって欲しいな。まぁでもそのおかげで俺ら旅人が魔獣に遭遇する確率も上がっていつも新鮮な肉を食えるって事もあるからなんとも言えないな』


『な、なるほど。それで『まそ』『くうそ』ってのはなんなんですか?』


『まず魔素ってのはない生物の体に篭っている見えない力みたいなものだと思ってもらっていい。人はそれをイメージして形を与えるんだ。例えばだな…あ、お前を追っかけたときに使ったな。五感の強化と身体能力の上昇ができる。あ、あと村の結界もだったな基本的に人体に何かできるものだと思ってもらっていいぞ』


『人体に何かできる…制限は無いんですか?』


あ、今俺たち凄い師弟してるぞ。なんか感動する


『まぁ制限という制限は無いな〜一つ挙げるとすれば想像する力かな。例えば俺が視力を上げる技を使ったとするだろ?それを真似てバードがやっても考えてることが違えば効果も変わってくる。俺は見えないものが見える視力だとして、バードが単純に視力を上げるものだとすれば意味が変わるだろ?同じ詠唱をしても効果は1人1人で変わってくる』


『へぇ、奥深いんですね〜それでくうそってなんですか!?』

バードは興味を持ったようで真剣に聞いてくれている。


『空素はだな。生物以外のあらゆる物にあるんだ。木や岩とかの自然の物だって、なんなら空中に漂っていたりする。これで物を変形させたり、空中に火柱を立てたりできるぞ。でも自分の体の一部とかじゃ無いからな操るのはかなり難しい。これもイメージが大事だな』

バードは上手く理解できないようで首を傾げていた。


『まぁ聞くより見る方がわかりやすいだろ。実演してやる。じゃあ空間の空素を変化させてこの場にない水にしよう』


俺は楽器を取る。


『あの、バリードさんそれは…』


『あぁ、これは俺の詠唱手段だ。昔から物語とかを読むのが好きでこうやってやりたい事に沿った物語を歌うのが1番想像しやすいんだ。バードもやるとするなら自分が想像しやすい手段でやればいい』


楽器を弾く。今回は…水の女神の話がいいかな。


"聖女と謳われしかの者は渇いた世界を水で満たし人々に幸福を授けた"


この(うた)を詠うと俺の目の前の空中に光が集まった。光が眩しさを失い消えると、そこには濁りのない水の球が出来ていた。


『どうだ?バード』


隣で口を開けたまま動かないバードに声をかける。


『凄く綺麗でした…これが(うた)の力なんですね…』


バードは少ししてから言った。


『あぁそうだ。(うた)によっては戦闘にも使えるぞ』


そういうとバードは少し考え込んだ。


『バリードさん。やはり1人旅だとある程度戦えた方がいいんですか?』


予想外の質問だった。まさかもう1人立ちしたいとでも言うのだろうか。


『あ、今すぐ1人になりたい訳ではありません。でもいずれバリードさんから離れなければいけない時があると思うんです。できればその時の為に勉強したいなって思ったんです』


バード…俺を気遣ってか。いい子だ。


『あとは…ですね。さっきの(うた)が綺麗で僕も使ってみたいと思ったんです!』


素直に嬉しい。どんな理由であれ俺の詩から興味を持って貰えたのだ。


『この技術は使いようによっては危険な面もある。それでも学びたいか?』


バードに覚悟を問う。それは俺が何故(うた)を学んだのにかも関わるのだ。俺の技術を学ぶならそれを受け継ぐ可能性もあるから生半可な気持ちでは困る。


『学びたいです!僕はバリードさんみたくなりたいんです!』


バードの目には一切曇りはなかった。


『わかった。お前に俺の技術を教えよう。明日から教えてやるから今日はもう休め』


気がつけばもういい時間だ。俺らはスープの鍋の片付けをして寝る準備に入る。バードは興奮からかいつもより寝るのが遅かった気がしたが少ししたら寝息を立てて寝てしまった。


にしても俺みたいになりたいか…真っ向から言われると気恥ずかしいな。俺のしてきたことは無駄ではなかった、今1人の少年の人生を変えようとしている。 


『師匠、俺ちゃんと教えられるかな…』


人に教えるのは人生初の経験でどうやら俺も緊張してしまっているらしい。早く寝よう…


俺はそっと瞼を閉じた。



ちょっと長かったですね。今回は芋虫とかのところでコメディ的な面白さを入れてみたのですがいかがだったでしょう。あんまし面白くなかったら減らしていきますので感想お待ちしております。


あ、あと投稿ペースとかなんですが基本的に無理のないようにしていこうと思ってます。

例えば平日1話、土日1話みたいな、、、

今後ともよろしくお願いします。

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