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Bard -世界に嫌われた詩人の物語 -  作者: レティ
一章 出会い別れ、そして別れる。
3/59

3話 母の思い。そして決意

賭けだった。もしかしたら空素なんて関係なく、人智を超えたものだったのかもしれない。だが実際にやってみてよかった。


 俺らは突然出てきた村に驚きつつも次の行動を取る。


『行こうバード。お母さんのもとに』


バードはコクリと頷き走り出した。


 空は先程より暗さが増してきたが未だに赤い、夜にはまだ半刻ほどあるだろう、間に合ったはずだ。


俺は、バードに続いて村へ入った。


入ってすぐ気づく。


…ここってかなり裕福なとこだったんだな。

すれ違う人の服装はかなり綺麗で整っており、痩せ細った人はいない。ただ、話を聞くかぎりここは閉鎖的な村なのだろう。見られる人全てに驚かれる。


ある家の前でバードは止まる。


『ここか?』


そう聞くとバードは頷き、ドアを開けて入っていく。


『母さん!』


駆け寄る先にはかなり痩せ細った女性がいた。彼女はバードを見ると目に涙を蓄えて、彼を抱きしめた。


『よかった…バード帰って来れて…村の外に出たと聞いてもう戻って来れないと思ったのよ!?』


 叱るが心から怒っているようには思えない。無事を安堵しているように見える。


『ごめんなさい、お母さん…でもこれお母さんの病気が心配でつい…』


『…良いのよバード無事に帰ってくれただけで満足よ…』


部屋は暖かい雰囲気で満たされる。そして母親は俺の方を見た。


『あなたは…何者ですか?』


『母さん!この人は、ムゴゴ──』


彼女はバードの口を押さえ、細い腕で隠す様に抱いた。


『俺はバリードって言います。俺は、この村の者じゃないですし、詳しい事情は分かりません。少なくとも、暗がりに子供を追い出す様な輩じゃありません。』


母親は見つめてくる、強い瞳だ。死にかけの風体なのに、ここまで子を想えるのか。


『それより、母さん、この花!薬になるんでしょ!バリードさんが譲ってくれたんだ!』


バードは花を母親に見せる。


『ど、どうして…』


訝しげな表情をする母親。


『どうして、今知ったばかりの親子なんかを助けてくださるのですか…』


『ただ、そうしたかっただけです。彼が、バードが自分と重なって助けてあげたくなった。それだけですよ。』


笑顔でそう言う。

すると、母親は泣き出してしまった。


え、いや今回は綺麗な顔で100点満点の笑顔で言えたはずだぞ…?そう困惑していると母親は話し出した。


『あ、そのすいません…その今まで私たちに優しくしてくれた人はいませんでしたので…』


『忌子だからですか?』


そう言うと母親の嗚咽は止み、静かに頷いた。


『すいません、気を悪くさせてしまったなら謝ります。彼から聞いて気になったんです。』


『この子の刻印を見ても助けてくださったんですね』


母親は黙り数秒の思案の後、口を開ける。


『この村は100年ほど前から今のように裕福だったんです。でもそのせいで森の魔獣達や村の外の住人に襲われたりされ、その度に村が荒れる事が問題視されていました。ですがある旅人が持ってきたというお守りが村を守った事で問題も解決されるようになり、村もずっと美しさを保つようになり。村に平和が訪れるようになりました。ですがそれからです、あざをもった子供が産まれるようになったのは』


あざ…か。それに村の過去を知るにつれて少し感じていた違和感が確信につながっている気がする。


……もしかしてここって『あの村』か?何度も旅の途中で聞いた無限の財の見つからない村。

 そういえば新たな詩作るため歴史について調べる事があった。その資料にあった100年前の主な服装と村の人々服は似たような感じがした。

 まぁまだ良い、まだ話の途中だ。


『あざは少しずつ鮮明になり今では刻印のような形となっています。バードの前の前の子からある事が起きるようになりました。来れるはずのない魔獣が入ってくるようになりました。しかしその子が亡くなるとピタリとなくなり、バードの前の子で判明したんです。刻印が魔獣を、禍を呼ぶものだと。その時から村はおかしくなり生まれてくる子から疑い、刻印を排除しようとしたんです。村の平和のために』


 聞いていて呆れてしまった。そもそも村に魔獣が入るのは普通だしあまつさえその原因を子供にしたのだ。仮にここが誰もが羨む村だとしても住んでいるのは普通の人間より醜い生き物だ。


 永年の繁栄を手にしても生きるは人間。羨望があっても所詮人間、夢物語でしかなかった。


『そうなんですか…無理させて話させてしまい申し訳ありません』


 もっと早い段階で気づくべきだったこの村の人間の醜さに。村の人間が言ったであろう猶予の2日。それは嘘だったのだ。現に話す母親の目を見れば分かる。何度も見た死ぬ間際の目…


『安心してください。どんな理由でも私は刻印で人を見ません』


そう言うと母親の顔は少し緩んだ気がした。

目配せをして家を出る。この後に部外者は必要ない。


『さて…』


家から出て正面に松明を持ち集まっている人間に向き直る。


『どんな理由であれその仕打ちは許せないな。それに今だけはそっとしておいてやってくれ、別れは大事なんだ』


今にも家に火を投げ入れそうな雰囲気だ。


『お前か忌子をまた入れたのは、余計な事をしよって』


見るからに悪人ズラの老人が話かけてきた。


『我々は平和を望んでいるんだ。ただ一人の命と村の全ての者の命天秤には掛けられぬ』


そーだそーだとヤジが飛ぶ。これだから…


『例え、神が此処を通らせてと土下座しても、ここは通さねぇぞ』


俺は人混みに向かい構えを取る。


──家の中


『バリードさんどうしたんだろう。外騒がしいね』


少年は母との会話を続けるため他愛のない話をしている。


『ねぇ、バード、お願いがあるの』


『水を汲んで来る?』


『…貴方はこれから色んな経験を積んで、そしてその度に刻印のことで差別を受けたりするかもしれない。それで傷つき生きているのが辛くなるかもしれない。でも生きて。貴方は貴方の人生を歩んで良いのよ、私達が叶えられなかった、他人に指図されない自由を手に入れて』


『そんな…どうして?別れみたいな事を──』


 ついにバードは気づいた。母親がそろそろな限界な事に。

 これが母の最後の話…そう思うと涙が出てきた。返事をしたいけど声が出ない。そのかわり涙を溜めた目でしっかりと母を見つめる。


『いい子ね…貴方は今まで生まれた事を後悔したかもしれない。でも私はそうは思っていないわ。ただ1人私の下に生まれて来てくれた、大切な宝だもの…』


 伝えなきゃいけない、そう思った。声を出そうとすると涙で止められる…でも今じゃなきゃダメなんだ。言葉で最愛の母に。


『お、お母さん…僕は一度も後悔なんてしていないよ…確かに辛い事もあったけれど、お母さんが…大好きなお母さんが支えてくれたから…いつも楽しかった……ありがとう、ずっと愛してる』


『私もよバード…愛してる…』


母親はそう告げると息を止めた。もう、目覚ることはない。家は1人の少年の泣き声で満たされていた。


──扉の前


『お互いに伝えられたか…よかったなバード。』


 気絶している大勢の人の前にいる青年はそう呟き、そっと己の持っていた楽器を奏でる。村中には悲哀に満ちていてどこか心が満たされるような優しく音階が響き渡る。


これはただ一組の親子のために…

奏でていると何処からかは判らないが目があったような気がした。"息子を頼みます…"と聞こえた気がした。


『ええ、きっと彼を幸せにしてみせます』


暖かい風が流れる。夏の夜だった。








私は書き手としては未熟者です。何度も試行錯誤をして書いていますが、うまく伝えられない場合がほとんどです。今回はこれからの物語の基盤になる…予定の話です。バードは母のおもいにどう応えるのか…次回をお楽しみにしていて下さい!

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