エリの妄想
一時間目と二時間目の間の十分休憩の時間。
エリは携帯の画面を見て、笑みがこぼれていた。
雑賀から送られてきたメールを見ているのだ。
『エリちゃん大好き(はあと)おやすみなさい。』
もちろん、エリにはこれが冗談返しであることは分かっている。だが、このメールはどこか真実みがあるため、妄想を膨らましているのだった。
「エリ、何ニヤニヤしてるの?」
隣の席の女子から訊かれた。
「センパイからのメールを見て、興奮してるだけー」
エリは胸の鼓動を悟られないように、そっけなく言ってみた。
「えっ、彼氏?」
「そんなんじゃないよ」といいつつも、エリはまんざらではない顔をしている。
エリはふと、雑賀が自分の彼氏だったらと妄想してみた。
雑賀が彼氏だったら。エリがまず初めにしたいことは、あの柔らかそうな髪をくしゃくしゃにしてみることだった。
もしかすると、今でもさせてくれるかもしれないが、たとえ許可が下りても、やや抵抗がある。やるならやはり、堂々とやりたいのだ。次にやりたいことは、というよりやってもらいたいことになるが、エリは雑賀に頭を撫でてもらいたい。あの大きな手で撫でられると、さぞ気持ちが良いだろうとエリは妄想するのだった。
「エリはその先輩のこと、好きなの?」
「んー、どうだろう」
わざと、ぼかしてみる。
「おーい。エリー」
教室の後方のドアから、速水がエリを呼んでいる。手には一枚のプリントが握られている。
「いまいくねー」
エリはいつもの笑顔で速水のほうへと駆けていった。
その様子を見て、先ほどの女子とその友人がひそひそと話すのだった。
「速水ってさ、絶対、エリのこと好きだよね」
「でも、エリは友達くらいにしか思ってないんじゃない?」
「いえてるー」




