神の子と生贄
神の子としてのラウルの生活は、とても子供にとっては耐えられないものだった。村人たちとの話は制限され、歩く範囲は自室のみ。話す相手は村長や数少ない魔法使い。ある日、ラウルは疑問を村長に言った。
「なぜ、僕はここにいるのですか。」
「ラウル様、あなた様はこの村の神の子です。」
「ではなぜ、この部屋の外からは出られないのですか。」
村長の顔が歪む。
「ラウル様、あなた様はこんなことを気にしてはいけません。」
その後、ラウルは村長の顔の恐ろしさで、疑問をぶつけようとすることはやめた。
「ラウル様、魔法の時間です。」
ラウルはため息をついた。なぜなら神の子と呼ばれているが、魔法の使い方がうまくできなかったできなかったである。
「まずは、火を出しましょう。火のイメージを持って…。ほら!」
村の魔法使いがラウルに魔法を教えようとしていが、本人はまったくできない。
「…水になってしまった。」
魔法使いは嫌そうな顔をしたかと思うと、笑顔で
「大丈夫ですよ。頑張りましょう。」
(嘘つきだ。)
ラウルは月日が経つにつれてそう思うようになった。
「んー…魔力はありますが、このままだと。」
神の子とは言ってもお飾りのレベル。そんな状況をみた村長はある決断を下すかどうか考えていた。
「生贄か。」
「ええ、雨ごいも、ましてや火を出すことも成功できていないですからね。それに、もう彼は10歳。我々はここまで待ちました。」
村長は頷いた。
「ラウル様、今日は儀式の日です。」
村長は重く言った。そんな状況でラウルは不思議そうな顔をした。
「今日は、何もない日ですが?」
「いえ、お伝えしなくてはならないことを忘れていました。あなた様を神の元に返します。」
「い、嫌だ。それだけは…。」
(うまくいかないからって僕のせいにするなんて。)
ラウルは涙を流した。
その夜、村長はラウルを崖に連れ出した。崖に向かう時に村人たちはこぞって罵っていた。
「神の子は無能だ。」
(なりたくて、なったわけじゃない。こんな世界、狂っている。)
村長に突き落とされたラウルの最後の気持ちは夜空よりも黒い憎しみだった。