ゲームとボウケン
見たことの無いそのベッドはとても硬く鉄板の上に転んでいるような寝心地は最悪だ。
俺は死んだはずじゃなかったのか?
――――あの瞬間、俺の目の前は真っ暗になり痛みは無く意識は飛んだ
はずだったのだが、何故か今は見たこともないベッドに転んでいる。
ゲームなら死にはペナルティが存在するのが普通。持ち物、ステータスに変化は無いか確認する。変化は無い・・・
いや・・・ あった
使ったはずの【魔法冷水】が持ち物に1つ存在していた。
これはペナルティーなのか?
なぜ、俺の持ち物に【魔法冷水】が存在するかはわからい。
初期ステータスといい【木の短剣】の効果といい、異世界は『そんな』事は日常茶飯事なのだろう。
考えていても無駄だ。
俺はベッドから起きあがり木で造られた階段を降りる。
階段をおりたそこはとても大きな広場みたいな物が設けられている。
そこに知らない人が、いや、人達が大勢いた。適当に見渡すだけでも500人は超えているだろう。
そんな中、俺が周囲を見渡していると一人の青年が話をかけてくる
「君は今動揺しているだろう。最初は『皆』そんな感じだよ」
身長は高めで何だかその辺にいそうな普通の青年だ。
「皆ってどういう事だよ。それにここはどこだ?」
青年は笑う
「ははっ!その反応も皆と一緒だよ」
俺は怒りを混ぜて2度目
「皆ってどういう事だよ」
と、聞く。
「ここにいる皆は、君と同じようにこの異世界に来た人達なのさ」
俺と同じように?
「君もココに来るとき真っ暗い空間で【機械じみた声】の説明を聞きながら『扉』を選んだろ?僕たちも選んでココに来たのさ。ここは【教会】と言われている所だ」
俺は更に質問する
「お前たちは何故ここに来たんだ?」
瞬間、青年から笑顔が消えたような気がした。
聞かない方がよかったのかもしれない。
が、青年は話しだす
「ここに来た皆の『理由』は一人一人ちがう。だから僕の判断だけでは一人一人の理由は言えない。だけど僕が来た理由なら話そう。僕は単純に現実世界に飽きたから。もっと楽しい体験がしたかったからだよ」
青年は再び笑顔に戻ると逆に俺に問いかけてくる。
「君はどうして来たんだい?君が来た『理由』を教えてくれないか?無理にとは言わない」
俺は隠すつもりはない
「お前と似たようなもんさ。あの世界に疲れ、楽しく無かったからだよ」
「僕と『理由』は一緒か。そういう人がいて嬉しいよ!!」
青年はそれを聞いたとたん大きな声で笑い始めた。
自分と同じ『理由』の人がいて嬉しかったのだろうか。
そんな嬉しそうに笑う彼の表情に嘘偽りはなく、心から笑っているような気がして、なんだか少し安心出来る。
「この世界のステータスのしくみを教えてくれないか?」
青年は話し出す
「ああいいよ!この世界でのステータスは大きく言うと3段階。まず0~2000の能力が初級モンスターレベル。2001~7000が中級モンスターレベル。7001~10000が上級モンスター、ボスモンスターレベルだ。魔力は魔法の威力。マジックポイントは魔法を使ったときに消費するポイントだ。こんな所だな。いいか?」
「ああ、わかった。ありがとう!そう言えば自己紹介がまだか。俺の名前は【西河 啓介】。お前の名前は?」
「僕の名前は【山北 壮介】何て呼んでくれてもいいよ!宜しく!啓介!」
壮介と名乗る青年はようこそと言わんばかりに手を前にさしだしてくる。悪い奴ではないようにみえる
俺はその手に対し
「宜しく!壮介」
と、手をさしだすことにする。
「これから俺はどうすればいい?」
青年は少し考え、周りを見渡す。
「色んな人と話してみるといい。いいやつばかりで楽しいと思うぞ!」
いいやつばかりか。
「わかった。話してみるよ」
俺は周囲の色んな人達と話してみることにする。
改めて周りを見渡すとどうやら女性も少なくはない。
そんな中一人、机の前でイスに座り寝ている女性がいる。
その姿はあまりみてていいものではない。口からはヨダレが垂れショートヘアの彼女はなんだか良い夢を見てるかのようにうす笑いを浮かべている。
だがそんなことは知った事ではない
俺は彼女に近づき声をかけようとした瞬間
「美味しいー!!飯っ!飯っ!ハァ...ハァ...」
と、何だか息が少し荒くなりながらも体を起こす。あまりにも急すぎて俺は思わず声をあげてしまう。
彼女はこちらに顔を向け話しかけてくる。
「そこの君!さっきまでここにあった大きな肉はどこだ?!まさか...お前が.....食べたのか...?」
肉?
何を言っている?
夢でもみてたのか?
「肉?そんなものもともと無かったさ。君の夢か何かじゃないのか?」
夢。その言葉を聞き彼女は納得したようだ。
「夢か。さっきは疑って悪かったな!私の名前は【木戸 夕夏】ってんだ!宜しくな!」
【木戸 夕夏】と名乗る彼女は笑顔で元気な自己紹介を俺に披露した。痩せ型とまでは言わない細身で身長は145といった所だろうか。髪の毛は所々跳ねていて綺麗な海のように透き通っているかのように青色だ。
「俺は【西河 啓介】だ。こちらこそ宜しく」
俺の中で彼女の第一印象はヨダレを垂らしていて急に肉とかいいだしてきたり良いものでは無かった。だが彼女を正面から見て、その元気そうな自己紹介を受け、俺の彼女に対する印象は良くなっいた。元気な奴は好きだ。
「私も最近ここに来たばかりで知り合いがいなかったんだよ!決めた!西河!私と西河でパーティを組まないか?」
あまりにもとうとつすぎたその言葉を理解するまでには少し時間がかかった。俺は聞く。
「なぜ俺なんだ?俺も来たばかりの初心者。俺にはこの世界に対する知識もなにもなければ何かずば抜けているわけでもない。なぜなんだ?」
彼女は少し黙りこみ考えるている。
「お前といたら楽しそうだから?なんとなくそんな感じがしたから。じゃ駄目か?」
俺は笑う。【木戸 夕夏】。面白い奴だ。
こういう奴は嫌いじゃない。
「わかったよ。お互い初心者どうしパーティ組んで協力していこう」
彼女はなんだかウィンドウを操作している。
操作し終わるとこちらに顔を向けてくる。
俺の目の前には
『【木戸 夕夏】からパーティへの招待が届きました。パーティを組みますか? [yes] [no]』
と、書かれたメッセージが届く。
俺は[yes]をタッチする
『【木戸 夕夏】とパーティになりました。現在2人』
と、新しくメッセージが届いた。
「これから仲間として宜しくな。夕夏」
「あぁ!こちらこそ宜しくな!西河!」
【パーティ】になったのはこの世界にきて初めてだ。初めてだからだろうか。【パーティ】についての説明メッセージが届く。そこに記されていたことは
・パーティを組んだ仲間のステータスは自由に知ることが出来る
・パーティを組んだ仲間にむかってアイテムを使う事が出来る
・モンスターがドロップしたアイテムはパーティ内の仲間全員に渡される
・モンスターを倒し得た経験値は仲間全員均等に分配される
・仲間が2人以上死んだ場合、仲間全員も死(パーティ上限5人)
・死んだ場合意識は無くなり、教会に復活する
と、重要な所を抜き出すとこんな事が書かれている。
ウィンドを確認すると新しく パーティ と言うコマンドが追加されていることに気付く。
そこをみると夕夏のステータスが表記されている。
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【木戸 夕夏】
レベル:6
体力:10000
攻撃力:0
防御力:0
回避性能:0
魔力:5000
マジックポイント:50
魔法:【神ノ怒号】
スキル:【神ノ祝福】
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となっている。
「夕夏のステータスもバグってんな」
これを聞き夕夏は笑いながら言う
「やっぱりおかしいよな!」
おかしいことが、わかっているならいい。
俺よりはまともなステータスにみえる。
夕夏はどんな魔法かは知らないが【神ノ怒号】と言う魔法が使え、さらに魔力はレベル6にしてもう5000。魔力があるぶん攻撃力は必要ない。体力も多いしマジックポイントも50ある。
闘うには十分な能力が揃ってる。欠点は回避性能0にある。
さらにスキルをタッチするとスキルの説明が目の前に表示される
【神ノ祝福】
・1回魔法を使う度にマジックポイント全回復
こんなスキルがあっていいのだろうか。
「最強かよ........」
そんな独り言をこぼしていると夕夏が声をかけてくる。
「1回二人になったことだし、外にでてモンスターと闘ってみようぜ!」
そうか、二人になったことによって倒しやすくなったはず。
「そうだな!二人で闘いにでてみるか!」
「おう!じゃあこんな所にいてもなんだ。早くいこうぜ!」
その声につれられ俺達二人は外にでる。